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★乱暴と待機

(C)2010「乱暴と待機」製作委員会
『乱暴と待機』
〜4人の男女が織り成す究極の不条理コメディ〜

(2010年 日本 1時間37分/PG-12)
原作 本谷有希子
監督・脚本・編集 冨永昌敬
出演 浅野忠信 美波 小池栄子 山田孝之 

2010年10月9日〜テアトル新宿ほか全国にて公開
10月9日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸
10月16日(土)〜京都シネマ
12月18日(土)〜高槻ロコ9シネマ

公式サイト⇒ http://ranbou-movie.com/
 「乱暴と待機」は危ない中毒性をもった世界だ。理解も共感もできないのに、一度はまると抜けだせなくなる。臭いものにした蓋を、次々とひっぺ剥がしていくような大胆不敵さで、人間のみっともない部分を余すことなくさらけだした傑作だ。原作は2005年に上演された本谷有希子の同名戯曲。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でもブラックユーモアの効いた愛憎劇を描き出した本谷だが、今回も復讐とトラウマをキーワードに不条理で歪んだ愛の形を見せてくれる。監督は『パンドラの匣』の冨永昌敬。
 主人公は木造の平屋で暮らす英則(浅野忠信)と奈々瀬(美波)。世間的に兄妹を装っている2人だが、本当は英則がいつか実行する“究極の復讐”のために奈々瀬を軟禁しているのだった。人に嫌われないよう極度に気を使う奈々瀬は、“おにいちゃん”の要望を素直に受け入れている。そんなある日、奈々瀬の同級生だったあずさ(小池栄子)と夫の番上(山田孝之)が近所に引っ越してきたことから、英則と奈々瀬の形式的な日常が脱線し始める。
 マラソンに行くと言っては毎夜、屋根裏から奈々瀬をのぞく英則。人に嫌われることを極端に恐れるめんどくさい女・奈々瀬。そんな奈々瀬から受けた仕打ちを今でも根に持つ妊婦のあずさ。臨月の妻の稼ぎを当てに暮らし、あろうことか奈々瀬に迫るダメ男・番上…。社会のはみだし者と言える4人の人間関係がこじれるにつれ、それぞれがもつ膿が露呈されていくのだが、この過程が最高にシュールで笑える!口調も存在も変人になりきった浅野忠信の怪演も見逃せないが、本作の立役者は何といっても小池栄子だ。自由奔放にボケっぱなす他3人に対し、終始キレ気味で“ツッコミ”まくる彼女がいなければ、この不可思議な物語はとっくに空中分解していただろう。
 人間の怠惰で淫靡な部分ばかりを包み隠さず描いているのにも関わらず、最終的にスッキリとした気持ちで映画館をあとにできるのは、あずさの図太くも真っ直ぐな生き様が随所に垣間見えたからかもしれない。ひどい仕打ちを受けても不幸にならない強い女が小池栄子は本当によく似合う。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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