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★ シネマ落語『落語研究会 昭和の名人 参
シネマ落語 『落語研究会 昭和の名人 参』

(2011年 日本 2時間14分)
 出演:桂吉朝、三遊亭圓楽、古今亭志ん朝、金原亭馬生

2011年11月26日(土)〜東劇、なんばパークスシネマ先行上映
2012年11月21日(土)〜全国公開

公式サイト⇒ http://cinemarakugo.blogspot.com/

 松竹が好評「シネマ歌舞伎」に続き「スクリーンで観る高座 シネマ落語」を公開する。江戸・東京落語の競演と研鑽を目的として行われている「落語研究会」(現TBS主催)の映像資料の中から名人たちの名演を編集したもので、東京では昨年から銀座・東劇などで公開され、大成功したことから、第3作「参」が11月26日から初めて大阪(なんばパークス)でも公開される。歌舞伎や演劇以上に「落語は映画の源流」であることを思わせる“至芸”ぞろいだ。 「参」の演目は上方から参加した桂吉朝「不動坊」、五代目三遊亭圓楽「助六伝」、三代目古今亭志ん朝「三方一両損」、十代目金原亭馬生「鰍沢(かじかさわ)」。同研究会の看板である“豪華競演”を堪能出来る。

写真:横井洋

 上方から参加した吉朝は2005年、50歳の若さで亡くなり、先ごろ七回忌が行われたばかり。今月25日に大阪・国立文楽劇場で「七回忌追善落語会」が行われるが、在りし日の名演を目の当たりに出来る絶好の機会になる。

 先ごろ、所属していた米朝事務所が追善興行の案内会を開き、弟子の吉弥が人となりや思い出を語った。「学生時代に師匠の落語聞いて、なんて落語が好きな人なんだろう、と思った。他の人とはけた違い。米朝師匠に心酔していた。落語してない時は普通のおっさんなんですが、情に厚く、ずぼらできちょうめん。猫好きで20匹もいた。野球でいうとダルビッシュ」と“別格”を強調した。

 吉朝はそのまま落語映画のネタになる“おもろい落語家”だった。マキノ雅彦監督「寝ずの番」(05年)では吉朝が脚本協力、吉弥が落語指導を務めた。「(原作の)中島らもさんに吉朝が話をしたのが本になって、津川(マキノ監督)さんが映画にする時に、最初は鶴瓶さんとこに行ったけど、それなら吉朝さんがええ、ということで脚本の段階から相談に乗っていた。クランクイン前に病気になり、撮影現場には私が代わりに行って、笹野(高史)さんや長門(裕之)さんに落語指導した」。

 「不動坊」はもともと上方古典落語の演目。米朝師匠の十八番としても知られる。講釈師不動坊が急死し、葬式代35円を立て替えたら未亡人お滝を後添いに、という話を引き受けた真面目な働き者・利吉が大喜びしてはしゃぐ様子が絶妙の語りで聞ける。

 「今夜は花婿だから」と言われ、銭湯の湯船で今夜のことを思ってあれこれ想像する“独り言”芝居はまさしく絶品。後半は銭湯で悪口を言われたやもめ3人組のいたずらによる幽霊騒動とヤマ場満載。吉朝の芸風、人となりが聞き取れる。吉弥は“人気の秘密”として「落語フリークの心に触れる。落語の世界観にひたれること」と話した。

※桂吉朝「七回忌追善興行落語会◆大阪公演 11月25日午後6時半・国立文楽劇場
桂あさ吉、桂吉弥ほか。上映「質屋蔵」(吉朝)
◆東京公演 12月17日午後6時半・国立演芸場
桂あさ吉、桂吉弥ほか。上映「猫の忠信」(吉朝)
※いずれも全席指定3800円

写真:横井洋

◆「落語研究会」その他の演目
○三代目三遊亭圓楽『助六伝』
花川戸助六は歌舞伎では「江戸紫の鉢巻に髪は生締め〜安房上総が浮絵のように見える」と謳われた江戸の侠客だが、寺の資料から誕生秘話をまとめた圓楽自作自演の“実録・助六伝”。

 現代的な語り口ながら、知られざる遊女の悲恋が人情味たっぷりに語られる。あと三月(みつき)で年季奉公が明ける遊女小糸には花川戸の下駄問屋の助七という「二世とかわしたいい人」がいた。そんな小糸に“馬道の親分”まむしの意吉が惚れ込み、賭場に出入りする助七を捕まえて牢屋へ。助七がいたぶられて獄死すると、小糸は母親のもとで嫁のように健気に働き、母親亡き後、意吉の誘いにも「百か日までは」と断り、約束の期限に助七と母親の墓前でカミソリで自害する、という江戸時代の純愛物語。

 この話が瓦版で報じられると「“かくも実のある花魁(おいらん)”がいるのか」と江戸中の大評判になったという。花川戸の助六は絢爛豪華な舞台で知られるが、その裏側に悲惨な物語があったわけだ。圓楽師匠は通称「助六寺」(不退寺易行院)の出で実家の過去帳から調べあげ、人情話に仕立てた。古典落語の奥深さを垣間見ることが出来る。
○五代目古今亭志ん朝『三方一両損』
これが本物の江戸っ子、と堪能出来るのが「三方一両損」。古くから紛争調停の妙案として知られる大岡政談から、二人の江戸っ子のにぎやかで威勢のいい大ゲンカを志ん朝一流の気風のいい江戸前口調でまくし立てる、まさしく名演。

(写真:横井洋)

写真:横井洋
○十代目金原亭馬生『鰍沢』
冬の夜噺。雪深い山里で道に迷った旅人・新助が、かつて女郎だった女に助けられるが、女に命を狙われた(代わりに毒を飲んだのは亭主)と知って命からがら逃げ出す。怪談めいているが淡々とした口調に引き込まれる。特に終盤、逃げ出した新助が鉄砲を持った追っ手を気にしながら、川でいかだに乗ろうと苦闘するくだりは、手に汗握るサスペンス。巧みな情景描写の語りが、そのまま映画の原点なのだと再認識出来る。

【噺家プロフィール】
桂(かつら) 吉(きっ)朝(ちょう)(1954年11月18日 − 2005年11月8日)
三代目桂米朝門下で師の芸風をよく継承し、独自の現代センスあふれるスマートな味付けも加わり
東西の垣根無く全国にファンが多かった。演劇活躍や、落語と狂言をミックスした「落言」、文楽と落語の会を行うなど、活動の幅も広かった。華麗でおしゃれで面白い魅惑の話芸で、師米朝の後継者として期待されたが、50歳というあまりにも早すぎる夭逝だった。出囃子は『外記(げき)猿(ざる)』

五代目 三遊亭(さんゆうてい) 圓(えん)楽(らく)(1933年1月3日 − 2009年10月29日)
六代目三遊亭圓生の一番弟子だったが、師の没後は一派の頭領としてメディア全般で大活躍した。
談志志ん朝、柳(りゅう)朝(ちょう)と共に四天王と呼ばれ、津々浦々の落語会では、現代的語り口に徹した古典落語を演じ、全国にしられた落語の顔となった。感情いっぱいの人情噺では観客を圧倒し、その語り口では爆笑を呼んだ。出囃子は『元禄(げんろく)花見(はなみ)踊(おどり)』

三代目 古今亭(ここんてい) 志(し)ん(ん)朝(ちょう)(1938年3月10日−2001年10月1日)
父は昭和落語界の重鎮五代目古今亭(ここんてい)。兄は十代目金原亭馬生。父志ん生とは全く違う正統的な江戸前落語を得意とした。上品できれいな江戸弁と、小気味良いテンポで噺を運ぶイキの良さ、じっくりと聴かせて涙を誘う人情の描写は、江戸時代と現代との空気を重ね合わせる事ができ、完全無欠を思わせる不世出の落語家である。出囃子は『老松(おいまつ)』。

十代目 金原亭(きんげんてい) 馬生(ばしょう)(1928年1月5日−1982年9月13日)
父・志ん生の淡々としたしゃべりを受け継ぎ、流暢で柔軟で整った形、そして自然に話す語り口は芳醇な美酒のようにまろやかな芸風であった。洗練された江戸の粋を体現する高座は、落語通をもうならせた。200以上といわれる豊富なネタを自由自在に演じたことも魅力であった。54歳の若さで夭逝されたことが惜しまれた。出囃子は『鞍馬(くらま)』。

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