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★RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ

(C) 2011「RAILWAYS2」製作委員会
『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』
〜黙々と働く友和、予期せぬ“最後”に…〜

(2011年 日本 2時間03分)
監督:蔵方政俊
出演:三浦友和、余貴美子、小池栄子、中尾明慶、吉行和子、塚本高史、岩松了、徳井優、中川家礼二、米倉斉加年


2011年11月19日(土)〜富山にて先行公開、
12月3日(土)〜全国ロードショー
公式サイト⇒  http://www.railways2.jp/
 「RAILWAYS」は前作の島根県の一畑電車から、富山地方鉄道に線路を替えて第2弾。49歳で鉄道員になる夢をかなえた前作の中井貴一から、今作は三浦友和が42年勤めあげ、定年退職を迎える男をしみじみと味わく演じた家族の物語。ピエトロ・ジェルミの「鉄道員」といい(高倉)健さんの「鉄道員(ぽっぽや)」といい、オヤジと鉄道員はよく似合う。 黙々と電車を運転する友和の姿は、激動の戦後を黙々と働いてきた多くの定年世代の共感を呼びそうだ。映画は若者のものではあるが、定年世代向けの映画があってもいい。長寿時代、定年も延びつつあるが、干支ひと周りは丁度いい人生の分岐点だろう。
 入社して42年、35年間無事故無違反の模範運転手・滝島徹(三浦)は退職を1か月後に控えて、妻佐和子(余喜美子)から「看護師復帰宣言」を聞いて驚く。いつものように口論になり、佐和子は家を飛び出す。今度ばかりは妻も本気で、それには“ある理由”があった。

 娘(小池栄子)に孫が誕生間近、晴れて定年を迎える直前にとんだ波乱。妻は元の看護師ではなく、ホスピスのための看護師という大変な職業で、子供が生まれてから夫と子供一筋に生きてきた妻が「最後は自分のやりたいことを」と選んだ道だった…。

 まじめ一筋、物静かな友和の表情がいい。山口百恵さんのデビュー作「伊豆の踊子」(74年)で相手役に抜擢されて以来、百恵さん最後の「古都」(80年)まで“百友コンビ”は当時、東宝のドル箱になり一時代を築いた。2人は80年にゴールインし、百恵さんは引退。この世界では珍しい映画のようなハッピーエンド。団塊世代の伝説になった。
 友和は当時から“百恵ちゃんの旦那さん”として、映画も人生もずっと脇にいたような印象が強いが、実力ある役者として欠かせぬ存在だった。「ALLWAYS 三丁目の夕日」(05年)の戦争で家族を失った医者をはじめ、脇でもキラリと光る俳優として存在感抜群。昨年は「沈まぬ太陽」で渡辺謙と敵対する幹部社員、北野武監督「アウトレイジ」ではやくざに挑戦して貫禄も見せた。今年は話題作「マイ・バック・ページ」の新聞社編集局長役で青くさい新米記者・妻夫木聡を「学生新聞作ってんじゃねえぞ」と一喝するなど、少ない出番ながらいつも強烈な印象を残した。
 今年、石田ゆり子と夫婦役を演じた「死にゆく妻との旅路」では主演も張っているが、「RAILWAYS」は映画の役柄同様、節目を迎えた男の自信と疲れをにじませる円熟の演技だった。定年1か月前というのに新入りの研修を頼まれ「お前はこの仕事に向いてない」とズバリ言ってのけたり、ひとつひとつ模範運転手として手本になる姿を見せる彼は、俳優としての生きざまを後輩たちに見せているような気がした。会社から依頼された定年延長も断って、妻と海外旅行へでも、という思惑が消え「これからの人生も長い」と感じさせる、まさに節目の時。
 佐和子が病院に頼み込んで家に連れ帰った末期がん患者(吉行和子)が、友和乗務の電車に乗り、落雷で立ち往生。そこへ佐和子が駆け付けて、現場で再会し互いの仕事ぶりを目のあたりにするシーンは、劇的な演出でもないのにホロリとさせる。これこそ大人の映画の味わいだろう。
 妻は「看護師宣言」した時、指輪と離婚届けを置いて出ていき、友和も躊躇した挙げ句、さあどうするか。そして、迎えた“最後の日”……。妻の家出以外に大した波乱やドラマはない。なのに42年間地道に働いてきた男の終わりには劇的フィナーレがあり、みんながそれを祝福する姿はしみじみと美しい。それだけでも十分だが、RAILWAYS2は意外なエンディングを用意して、地道に働いてきた男を心底祝福するのである。
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(C) 2011「RAILWAYS2」製作委員会
   
             
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