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プレイ−獲物−

(C)2011 / BRIO FILMS - STUDIOCANAL - TF1 FILMS PRODUCTIONS - Tous Droits Reserves
『プレイ−獲物−』 (La proie)
〜一途な愛に貫かれたアクション・サスペンス〜

(2010年 フランス 1時間44分)
監督・脚本:エリック・ヴァレット
出演:アルベール・デュポンテル,アリス・タグリオーニ,
    ステファン・デバク,ナターシャ・レニエ,セルジ・ロペス

2012年6月30日(土)〜ヒューマントラストシネマ(渋谷・有楽町)、テアトル梅田、7月7日(土)〜シネ・リーブル神戸 にて公開
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/prey/

 最初に男女の愛の交歓がズームで濃密に描かれる。すぐに男は受刑中で妻との束の間の面会シーンだったことが分かる。次の面会では妻が言語障害のある5歳の娘アメリを連れて来る。父親の惨めな姿を見せたくないと言いながらも,実はすごく喜んでいることが伝わってくる。なかなか情感のあるシーンだ。フランクは妻メリッサしか信頼できない寂しい男だった。ところが,人当たりの良い同房者モレルを信頼したことで歯車が狂い始める。
 フランクはあと8か月で出所できるのに脱走する。その理由が痛いほど伝わってくる。妻と娘が危険に曝されていることを知ったからだ。しかも追い打ちを掛けるように衝撃的な体験をさせられる。観客をフランクと一体化させる鮮やかな展開に引き込まれる。そして冷酷な連続殺人犯モレルの本性が徐々に明らかにされていく。彼は自分の罪をフランクになすり付ける巧緻さを併せ持っていた。執念でモレルを追うフランクが警察に追われる。
 フランクが娘を救出できるか。刑事クレールがいつ真相に気付くか。この2つを軸として緊迫した展開が続く。フランクの姿にモレルとクレールの描写が適宜挿入され,興趣が高められる。“獲物”に迫っていく三者三様の強靱なキャラクターにブレがないのは清々しい。生身の人間の持つ痛々しさを実感させる演出も冴えている。フランクの身体の傷は心の状態でもある。カメラは贅肉を落としたストイックな美しさをスクリーンに映し出す。
 パリでの逃走劇はフランクの一念が溢れていて迫真的だ。山間部での追跡劇は2台の車が俯瞰で映され,人里離れた場所での1対1の対決を暗示する。その先に待っているのは胸にズシンと響く展開で,声も出ない。しかも,伏線を張り巡らせた脚本は,全てが決着した3か月後に素敵なエピローグを用意していた。Noko(ノーコ)による「Prison Sonata」,「Main Theme」等の音楽も彩りを豊かにしてくれる。深い味わいのある超一級サスペンスだ。

(河田 充規) ページトップへ

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