topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
新作映画
★Peace

(C)2010 Laboratory X, Inc.
『Peace』
〜人も猫も、支え合って生きている〜

(2010年 日本 1時間15分)
監督:想田和弘
出演:柏木寿夫、橋本至郎他

2011年7月16日〜シアター・イメージフォーラム、
7月30日〜第七藝術劇場、今夏〜神戸アートビレッジセンター、京都シネマ他順次ロードショー
・作品紹介⇒こちら 
・公式サイト⇒
  http://peace-movie.com/
※2010年東京フィルメックス観客賞受賞
※2011年香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞
 Peace(平和)という、あまりにも大きなテーマを掲げたドキュメンタリーで、何が映し出されるのか興味津々だった。そんな作品の冒頭に、家の近くにもいそうな野良猫たちの愛くるしい表情と餌を虎視眈眈と狙う泥棒猫が登場。『Peace』が見つめる世界は、そんな身近などこにでもある場所の様々な表情なのだろうか。

  ドキュメンタリー映画作家として『選挙』、『精神』とタブーの世界に鋭く切り込む作品を発表してきた想田監督。「観察映画」と称するように、ナレーションもBGMもないスタイルは、本作でも健在だ。監督の奥さんの実家で義父、義母の生活や行動にキャメラを向けながら、家の庭で20年来居ついている野良猫たちのコミュニティーにも光を当てる。
 高齢者や障害者の送迎をボランティア同然で行っている義父の付き添い風景。高齢者や障害者にヘルパーを派遣するNPOを運営し、自らも訪問を行う義母からは国からの福祉予算削減で苦しい台所事情の中、誠意ある対応で独居高齢者を支えている。福祉サービスを提供する側とされる側のありのままの姿を映し出す中、福祉拡大を掲げた演説の声が空々しく響く。
 91歳で一人暮らしの橋本さんは在宅ホスピスサービスを受けている。ケアをしに行った義母に語ったのは戦争の思い出。召集令状一枚で戦地へ駆り出された男たちを当時は「男は一銭五厘だ。」と呼び、はがき一枚の価値しかなかったと語る。戦死することが栄誉と教育された当時、いかに多くの若い命が奪われ、帰還する人間が肩身の狭い思いをしたかと。末期の肺がんを患いながらも、最後まで愛するタバコ「Peace」を吸い続けた橋本さんが重ねてきた年月は、多大な犠牲を経た日本の平和への歴史なのか。

  野良猫コミュニティーでは、泥棒猫と呼ばれ陰で強奪した餌を食べていた新入り猫が、最後には常連猫たちに認められ一緒に餌を食べていた。「木を見て森を見ず」ではなく、「木をじっくり見つめると、森が見えてくる」ような観察力は猫相手でも活かされている。人間や猫の生きざまから、観る者の感性で何通りもの「Peace」をすくい取れることだろう。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって