topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『パートナーズ』
  作品紹介
新作映画
★パートナーズ

(c)劇団東俳つくしんぼくらぶ/劇団東俳
『パートナーズ』
〜犬と人、人と人、のつながりと信頼の中で〜

(2010年 日本 1時間59分)
監督:下村優
出演者:浅利陽介、大塚ちひろ、村田雄浩、川上麻衣子、
      近藤里沙

11/6(土)〜シネ・リーブル梅田、MOVIX堺、MOVIX八尾、MOVIXココエあまがさき、MOVIX橿原ほか公開
公式サイト⇒ http://partners-movie.com/  
 19歳の剛は、同じ職場の先輩の死をきっかけに、将来に希望を持てないフリーター生活から抜け出そうと、盲導犬訓練士学校に入学する。無事、准訓練士となった剛が初めて担当したのは、生まれたばかりのチエ。パピーウォーカーと呼ばれる育ての親の家でチエは10か月を過ごした後、盲導犬となるための訓練を受けることになる。チエをめぐる人々の暖かい交流と、剛の成長を描く。
 チエが最初に盲導犬としてパートナーになったのは、事故で視力を失ったロックシンガーの真琴。いきなり失明して、自暴自棄になり、いらついていた真琴が、チエと少しずつ心を通わせ、信頼しあえる関係になっていく。再びピアノに向き合う情熱を取り戻せるようになるまでを、大塚ちひろが好演。一緒に生活訓練を始めた日、真琴がチエの名前を呼ぶと、チエが実は寄ってきていて足に当たる。真琴の表情がふっと解きほぐれることで、チエがそこにいることがわかる。繊細で傷つきやすい真琴の閉ざされた心が、チエのおかげで開かれていく様子がリアルに伝わる。
 犬は、話すことはできないが、吠えたり、みつめたり、しょげたり、人とコミュニケーションはできる。パピーウォーカーの家で、チエを一番可愛がった10歳の美羽や、剛、真琴らが、チエをとおして出会い、心を通わせていく。人と犬、人と人とのつながりをとおして、成長し、人生に向き合う自信をとりもどす。

  特に犬が好きでもなかった剛が、ひょんなことで選んだ仕事。不安や戸惑いを感じながらも、ベテラン職員を観察し、真似していくことで、技術を身につけ、チエの心をつかもうとする。訓練がうまくいかず、悩み、考える姿が、まっすぐで初々しく、剛役の浅利陽介が好演。最後には、自信をもって自分の仕事に向き合えるようになる。「ライト・ゴー」の声が明るく響く。
 若者がフリーターのまま安い時給で働かされ、不安定な境遇に置かれている現実や、捨て犬が多く、人間の身勝手さにより命を断たれる犬の多さ、盲人が一人で気軽に出かけることを阻む障害物や、思いやりのなさ、と、映画は、日本社会が抱える様々な問題をもクローズアップしていく。盛りだくさんのテーマを詰め込んだかにみえるが、根底となるテーマがしっかり伝わるので、気にならない。予定調和的にみえなくもない展開も、同様にひっかかることなく、観客を共感の輪に導いてくれる。
  観終わって、自分探しだけでなく、生きること自体も、人との暖かいつながりの中で、ゆっくりやっていけばいいと励まされたような気がした。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって