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★大鹿村騒動記

(C) 2011「大鹿村騒動記」製作委員会
『大鹿村騒動記』
〜仇も恨も…村歌舞伎三百年の人間喜劇〜

(2011年 日本 1時間33分)
監督:阪本順治
出演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、冨浦智嗣、瑛太、石橋蓮司、小倉一郎、でんでん、加藤虎ノ介、小野武彦、三國連太郎

2011年7月16日(土)〜全国ロードショー
公式サイト⇒  http://www.ohshika-movie.com

 「座頭市」「行きずりの街」とちと不発気味だった阪本順治監督が“解脱の境地”に達した人間喜劇。試写前にキャンペーンで来ていた監督に「これは原田芳雄(主演)効果?」と聞くと「初めて主演として組んで見えたものがある」と。原田ら村歌舞伎に懸命の村民たちのすっとぼけて面白いこと。けらけら、くすくす笑い転げた。松竹大船調とは違う、少々生臭く、人間の本性を曝け出す阪本流人間喜劇だ。
 長野県下伊那郡、大鹿村には三百年以上も続く村歌舞伎の伝統が残る。鹿料理店「ディアイーター」店主善(原田)はその花形役者。歌舞伎の準備中、18年前、幼なじみの治(岸部一徳)と駈け落ちし、行方をくらました妻・貴子(大楠道代)が突然2人で戻って来たから大変。治の話では「貴子は前頭葉の障害」で記憶がはっきりせず、治を「善さん」と呼ぶ。思い余って「返しに来た」という。とんでもない話だが、田舎の村ゆえか、歌舞伎準備のせいか、それとも善さん(原田)のキャラか、なんとなく村と善さんの料理店に入り込んでしまう。とっとと帰ろうとする治と善さんは取っ組み合いも演じるが「歌舞伎を見ていけ」と言って家に泊める。
 なんとおおらかな暮らしであることか。三百年も村歌舞伎の伝統を守ってきた“村落共同体”には、様々な人間の不始末を飲み込み、浄化する力があるのかも知れない。治の父は「昨年五十回忌」で、帰って来なかったことを責められたりもする。
物の名前も分からない貴子だが、村歌舞伎の十八番のセリフだけはすらすら言えたことから「記憶が戻るかも」と思い切って主役=善さん(平景清役)の相手役に大抜擢してみたら…。


 この3人に村のバス運転手(佐藤浩市)と、東京に出ていった恋人を待ち続ける村の女事務員(松たか子)、「ディアイーター」に住み込む役者志望・雷音(実は男)と裏方(瑛太)の“恋模様”も織り混ぜて、おかしなおかしな人間関係が描かれる。村ではリニア新幹線の誘致が大問題になっているが、善さんたちはそんな先のことには「みんな死んでるよ」ととりあわず、歌舞伎のけいこ優先、難問が勃発しても、すべて歌舞伎上演がいつの間にか解決してしまうのが村存続の秘訣。実際、貴子は芝居が始まる前に記憶を取り戻し、善さんに「許してくれなくてもいいのよ」とポツリともらす。それを聞いた善さんの表情が絶品。阪本監督によると「偶然あった」そうだが、村歌舞伎の「仇も恨も是まで是まで」というセリフが、3人の今の心情をあまりにも見事に言い表わしているのが何とも言えずおかしい。
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