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★オボエテイル

(C)2005 ベルウッド
『オボエテイル』
〜現代Jホラーの原点といえる3話オムニバス〜

(2005年製作・2010年再製作 日本 2時間5分)
監督:芳田秀明、明石知幸、久保朝洋
出演:村上淳、麻生祐未、吉田日出子、中村美鈴、葛山信吾、香川照之、光石研、渡辺真起子、柄本時生

2010年1月8日(土)〜東京・新宿K’s cinema、横浜ニューテアトルにて全国順次ロードショー
関西では、1/8(土)〜11(火)神戸映画資料館にて公開
神戸映画資料館サイト⇒ http://www.kobe-eiga.net/program/2011/01/post_72.php
(C)2005 ベルウッド
 日本のホラー・ミステリー小説の世界を、エポック・メイキングに変えた小説とは、鈴木光司の「リング」(1991年出版)であった。映画化されているので、みなさん方がよーく知っておられるはずのあの「リング」だ。
 そんな「リング」より以前に上梓された作品が、「記憶」シリーズとも言うべき、高橋克彦の短編シリーズだ。彼は江戸川乱歩賞受賞でデビューした「写楽殺人事件」など、歴史ものでも本格ミステリーをメインにしていた。だが、直木賞を受賞した本シリーズで、ホラーにも幅を広げたわけだ。記憶シリーズから本編では3作をピックアップし、3話オムニバスとなった。
 第1話「遠い記憶」は、「リング」でも使われたビデオというポイントを、効果的に使っている。夕景のセピア・シーンも入ったザラついたビデオ撮影部が、怪しさを徐々に増していく。村上淳演じる主人公だが、幼少期を過ごした宮城県・盛岡での記憶が全く欠落していた。しかし、テレビの仕事で盛岡を訪れ、謎の女・麻生祐未扮する女と出会う。少年時代の記憶が蘇り、2人の記憶が一枚重ねになった時、恐るべき真実が顔をのぞかせる。来年に映画化される東野圭吾のミステリー小説「白夜光」にも、ビミョーに影響を与えたと思われるシーンが現出するのだ。
 第2話は「前世の記憶」。タイトル通り、前世の記憶というか、1世代前の前世を描くスタイルだ。妊娠してるヒロイン役・中村美鈴が、記憶障害の治療の末に思い出した過去とは、彼女の全く知らない少年のものだった。ミソとなる事件は強盗殺人事件だが、記憶のキーとして、東京オリンピックが開かれた1964年をポイントにしている点が、昭和映画のノリを出していて面白い。『オーメン』(1976年製作)や『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)などを思い出させる、展開と結末が強烈だ。
  ラストの第3話「赫い記憶」は、テレビの「龍馬伝」で人気を得た香川照之主演。「龍馬伝」ほどエキセントリックな演技ではないが、その反対バージョンとも言える、落ち着いた演技で魅了する。でも、ストーリーの流れ的には、落ち着いてはいられない展開が待っている。「記憶に時効はない」などと香川が言う通り、過去のひと夏のあやまちを描いたものだが、ファンタジックなラスト・シーンでは、ホッとさせてくれる。
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