なんと静かで、見入ってしまいたくなるような映画なんだろう。『イエローキッド』
で鮮烈な長編映画デビューを果たした真利子哲也監督が、『EUREKA ユリイカ』の宮崎将や全力疾走アイドル、ももいろクローバーを配して、対比が浮かび上がる詩のような中編作品を作り上げた。
ある地方都市で実際に起こった強盗傷害事件の犯人が自殺で発見されるという出来事。三面記事として小さく扱われた事件の結末に惹きつけられた真利子監督が、事件後の犯人の足取りをシナハンで何度も確かめ、忘れ去られたような存在の静かな死をサイレント映画のように刻み込む。ゲーム屋にいったり、車にこもって瞑想したかと思えば、頭をぶつけて自責の念に駆られたり、ゴウゴウと響く田舎の国道を走る車の音や、夜中に打ち寄せる波の音だけが、犯人である青年の話相手だ。宮崎将演じる青年の存在そのものが、セリフがなくても彼の気持ちに寄り添いたくなる静かな魅力を放つ。
彼が人生の最期を過ごした海辺の夜、そして夜が明ければ眩い太陽と共にはじけんばかりのパワーとカラフルな衣装に身を包んだももいろクローバーが同じ海岸でプロモーションビデオ撮影をしている。一点の曇りもなく、仕事に全力投球の人気アイドルグループの登場にむしろ違和感を覚えるぐらいだ。だが、いきなり3D映画に転換したようなライブ感ある彼女たちの姿こそ、日頃誰もが目にしている、“注目された世界”に他ならない。
タイトルの『NINIFUNI』は、二つであって二つではないものをさす仏教用語、而二不二からきているのだとか。一見全く関係のない者同士が交差することで世界の表と裏、人生の光と影を浮かび上がらせた、シンプルながら印象深い中編作品。『イエローキッド』とはまた違った真利子監督作品の魅力を見いだすことだろう。