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ミッシングID
『ミッシングID』  (ABDUCTION)
〜俺は何者? 自己探求の果てしない闇〜

(2011年 アメリカ 1時間46分)
監督:ジョン・シングルトン
出演:テイラー・ロートナー、リリー・コリンズ、
    アルフレッド・モリナ、 ミカエル・ニクヴィスト、
    シガーニー・ウィーヴァー

2012年6月1日(金)〜丸の内ピカデリー他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://missing-id.gaga.ne.jp
 「おまえは一体誰だ?」と聞かれたら、普通の人なら誰もがすらすらと答えるはずだが「ホンマは違う」といわれたらどうか。今や社会の重要アイテム、インターネットの「誘拐被害者児童」サイトで偶然、自分の子供時代の写真を見つけたら…つい昨日まで当たり前のやんちゃな高校生だったネイサン(テイラー・ロートナー)はその時から、まったく違う人間として何者に命を狙われ、懸命に逃げ続ける…。
 現代社会の暗部を突いて緊迫感あふれるサスペンスに仕上げたのは「ボーイズ´ン・ザ・フッド」のジョン・シングルトン監督。黒人映画の範疇を超えて見事な語り口に舌を巻く。全体としてはスパイ映画だが「本当の自分は何者か」という極めて今日的なテーマで、謎をはらんで進む物語にグイグイ引き込まれる。
 「誘拐被害者児童」一覧に自分と似た写真があったらどうか。「似てるけど別人」と思いつつ周囲に確認するだろう。「大人の想像写真」が「マット・デイモンそっくり」なのは題材が似ている「ボーン・アイデンティティ」への“ご挨拶”か。シャレた趣向にニンマリするところだ。
 マットのヒットシリーズ(第1作)は、嵐の漁船で気付いた男マットはまったく記憶を失っていたが、体が凄腕のスパイであることを覚えていて、迫って来る敵には瞬時に反応して倒してしまう、びっくりアクション。このアイデアはレニー・ハーリン監督、ジーナ・デイヴィス主演の「カットスロート・アイランド」(95年)そっくり。強靱なスパイはボディアクションが自然に出るのだ。
 「ミッシング〜」の高校生ネイサンは、母親から真相を聞き出すが、その直後、何者かに両親を殺される。その場にいた幼なじみカレン(リリー・コリンズ)も腰を抜かし、危険を察知した2人は一緒に逃亡する。 ネイサンには「スパイの子」であるほかにもうひとつ秘密があって、彼がネットにアクセスするだけで動きを突き止める犯罪組織の男コズロフ(ミカエル・二クヴィスト)がいて、その動きをCIAが追う。“仮の両親”は殺され、なぜ逃げるのか、誰に追われているのか、分からないままの目まぐるしい展開は手に汗必至だ。
 高校生のネイサンはマットやジーナほどではないが、高校ではレスリング部、自宅では父親とイヤというほどスパーリングを重ねる。それが“正体発覚”後に生きてくる。ド素人のはずの彼がCIAやFBIのプロ集団相手に、時には敵の裏をかき、翻弄する様子は痛快だ。ラスト、ネイサンに真相を告げ、姿が見えない敵と直接対決する場面はピッツバーグの野球場で本物のパイレーツの試合中に撮影されたという。この本物感こそが「ミッシングID」の真髄だ。

 「トワイライト」シリーズでスターの座についたテイラー・ロートナーが普通の高校生から短期間で一級のプロに変化を遂げる成長物語。マット・デイモンが「幸せへのキセキ」で味のある父親像を演じてるように、俊敏なスパイはロートナーに選手交代、と言ったところか。
 誰が敵で誰が味方か、最後まで分からない。「周りがみんな敵に見える」状況は、映画に登場するCIAやFBIも同じ。誰を敵として戦っていいのか、アメリカの複雑な現状をも表しているようだ。

(安永 五郎) ページトップへ

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