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★ミラル

(C) PATHE - ER PRODUCTIONS - EAGLE PICTURES - INDIA TAKE ONE PRODUCTIONS with the participation of CANAL+ and CINECINEMA A Jon KILIK Production (C) photos ? JoseHaro
『ミラル』(MIRAL)
〜悲しみと苦しみに満ちた紛争の中で、希望を持ち続ける女性たちの生き様〜

(2010年 フランス・イスラエル・イタリア・インド 1時間52分)
監督:ジュリアン・シュナーベル
原作・脚本:ルーラ・ジブリール
出演:フリーダ・ピント、ヒアム・アッバス、ウィレム・デフォー、
    アレクサンダー・シディグ

2011年9月3日〜シネ・ヌーヴォ、第七芸術劇場、10月〜神戸アートビレッジセンター、京都シネマ
公式サイト⇒ http://www.miral.jp/
 人は自分が生まれる国を選べない。イスラエルの占領下で、自由を奪われ、差別され、苦難の歴史の中にあってなお、希望を見失わず、力強く生き抜くパレスチナ人の女性たちの姿を、実話に基づいて描く力作。
 1948年のイスラエル建国宣言を前に起きたパレスチナ人虐殺事件は多くの孤児を生む。ヒンドゥ・ホセイニは、子どもたちを引き取り、私財を投げ打って学校を建てる。30年後、母を亡くし7歳で預けられたのが主人公ミラル。17歳になり、難民キャンプでイスラエル軍に家を壊される人々の姿を目にし、平和行進への実弾による襲撃で親友を喪ったミラルは、憤りを抑えきれず、政治的な活動組織に出入りするようになる…。
 原作は、世界的に活躍するジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの実体験に基づく同名著作。1994年にその生涯を閉じたヒンドゥ・ホセイニが設立したダール・エッティフル(子供の家)は、現在に至るまで3千人もの孤児たちに生活と教育の場を与えてきた。
  イスラエルとの終わりの見えない熾烈な戦いの中で、人はどう生きたらいいのか。絶望的になるのか、テロ活動に走るのか…。学校づくりに生涯を捧げたヒンドゥの生き様にその答えがある。人の力を信じ、未来を信じられるのは、ヒンドゥに理想が、目標があるからだ。教育と愛こそが平和への道だと強く信じ、その教えをミラルはじめ子どもたちに説き続けてきたヒンドゥ。その信条と理想ゆえに、一時の怒りにとらわれることなく、じっと耐え、真なる強さと知性と誇りを持ち続けた姿を、ヒアム・アッバスが熱演。かくしゃくとして穏やかなたたずまいが胸を打つ。
 悩み、迷いながらも、正義感に満ち、心優しいミラルもまたヒンドゥの愛によって守られ、導かれていく。17歳の少女の目線で描かれたパレスチナ人の置かれた実態は、今まで私たちが知らなかった世界。絶えることのない紛争、憎しみの連鎖、理不尽なパレスチナ人への差別の実態に、驚きと戸惑いを隠せない。
 人は守るものがあれば、強くなれる。どんな状況でも子ども達を守ろうとする一途さ、理想と目標を高く、強く持つゆえに希望を失わずにいる姿は、観る者を力強く勇気づけてくれる。ミラルのまっすぐな瞳に未来を感じるとともに、トム・ウェイツのしゃがれた歌声が哀しく心に響いた。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
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