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★未来を生きる君たちへ

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『未来を生きる君たちへ』
(HAEVNEN / IN A BETTER WORLD )
〜この先の世界が平和であることを願って〜

(2010年 デンマーク,スウェーデン 1時間58分)
監督:スサンネ・ビア
出演:ミカエル・パーシュブラント,トリーネ・ディアホルム,
    ウルリッヒ・トムセン

2011年8月13日〜シャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開、 8月27日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、近日〜京都シネマにて公開
公式サイト⇒  http://www.mirai-ikiru.jp/
 家族の再生の物語を基本に据えているが,その枠に収まりきらないスケール感がある。物語の根底に流れているのは,死から生へ,復讐から赦しへ,という人間の本質に根差した救いだ。しかも,デンマークの日常とアフリカの難民キャンプの様子を対比させながら,どのような状況でも寛容を保つことの困難さを浮かび上がらせる。同時に,一見全く異なる世界でも人間の営みは基本的に何ら変わりがなく,世界は一つであることが示される。

  医師アントンは,自らの過ちで妻マリオンと別居し,謝っても許してもらえない。クリスチャンは,父クラウスが見放したから母が死んだと非難し,苦しい選択だったと言われても許せない。癌で母を亡くしたクリスチャンが転校してアントンの長男エリアスと出会う。そのときから,夫婦や親子の間にわだかまりを抱えている家族が大きくゆっくりと変化していく。クリスチャンが学校でのイジメに対する報復をしたのが,その始まりだった。
 やり返さなかったらやられるというエリアス。アントンは,殴られてやり返したらきりがない,戦争はそうやって始まると諭す。実際,ラースから理不尽な暴力を受けても抵抗しない。避難民の治療を行っているアフリカでは,周囲の人々の冷たく悲しい視線を浴びながらも,地元の悪党ビッグマンの治療を行う。だが,彼が亡くなった女性を侮辱したときは怒りを抑えられず,彼を恨む人々の中に丸腰のまま放り出してリンチに晒してしまう。
  放心したようなアントンの表情,思い悩み沈んでいるアントンの姿。人間の弱さを嘆くようなショットが重ねられる。エリアスが大事な相談をしているのに,今日は疲れていると言ってインターネット電話を切ってしまう。一方,クリスチャンは,父への苛立ちの矛先をラースに向けていた。エリアスは,ラースに仕返しをしようと持ち掛けられ,迷った末にクリスチャンに同調する。2人は,試作した爆弾の威力に狂喜し,狂気へと落ちていく。

  エリアスは,通り掛かった母娘を助けようとして意識を失い,病院へ運ばれる。マリアンは,嘆き悲しみ,クリスチャンに怒りをぶつける。クリスチャンは,死の問題に直面してアントンに救われ,母の死を乗り越える力を得たようだ。マリアンは,やっとアントンに赦しを与えられるようになる。繰り返される,どんよりした空模様や砂漠の荒涼とした風景。哀しげに心の底に響いてくる音楽。だが,その先には出口がはっきりと見えている。
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