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★ミラノ、愛に生きる |
(C)2009 First Sun & Mikado Film. All Rights Reserved |
『ミラノ、愛に生きる』 (Io sono l'amore)
〜彼女が陽の当たる場所へ飛び出していくまで〜
(2009年 イタリア 2時間) 監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ティルダ・スウィントン,フラヴィオ・パレンティ,エドアルド・ガブリエリーニ,アルバ・ロルヴァケル,ピッポ・デルボーノ,マリア・パイアート,ディアーヌ・フレリ,ワリス・アルワリア,ガブリエーレ・フェルゼッティ,マリサ・ベレンソン
2011年12月23日(金)〜Bunkamuraル・シネマ
12月24日(土)〜梅田ガーデンシネマ
2012年1月7日(土)〜シネ・リーブル神戸、新春〜京都シネマ、他全国順次公開
・公式サイト⇒http://www.milano-ai.com/ |
エンマは,美術品の収集にロシアを訪れた夫と一緒にミラノにやって来た。夫は,ママより美しい人と結婚したいと言ったそうだ。エンマは,必死にイタリア人になろうとしたが,部屋にはマトリョーシカを飾り,息子エドとは時折ロシア語で話している。彼女は,母親の役割を終えて自我に目覚め,国家や家族という心理的な束縛の外へと踏み出していく。大きな代償を払いながらも,抑えられない感情に突き動かされ,飛翔するかのように。 |
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裕福な家庭で暮らす女性が息子の友人と恋に落ちるというメロドラマの王道のような展開だが,現実から逃避して夢想に浸る安直なファンタジーに堕してはいない。エンマの心の奥底に眠っていた意識が覚醒する様子が丁寧に視覚化され,新しい生き方を求めようとするエンマの主体性が前面に押し出されている。彼女に扮したティルダ・スウィントンの圧倒的な存在感にも助けられ,凡百のメロドラマにない強靱さを備えた作品となっている。 |
ジョン・アダムズの音楽がスケール感で映像を引き立てる。エンマがアントニオの後を追うシーンでは,少しコミカルな感じでドキドキする心,浮き立つ思いを奏でる。ジル・サンダーのラフ・シモンズが手掛けた衣装デザインは機能的で美しい。自分の気持ちに対する戸惑いを振り払ったエンマの決意をオレンジのパンツルックが代弁する。「ペック」直営レストランのシェフ,カルロ・クラッコが監修した料理も重要なインパクトを与える。 |
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物語も巧みに構築されている。娘ベッタの同性への愛は,エンマが動き出す契機となったに違いない。長くエンマの世話をしてきたイダは,エンマの心の揺らぎを決して見逃さない。さらに,エドがエンマの変化にいつ気付くか,どんな反応を示すかというサスペンス性も生きている。指輪を外してトレーナーを着たエンマがイダと固くハグする。ベッタとの無言の交歓も爽やかだ。衝撃に耐えられないエドに引きかえ,女性たちが輝いている。 |
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