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★黒く濁る村


『黒く濁る村』 (苔 MOSS)
〜恐るべし!
   村の秘密が暴かれるとき顕わになるものとは?〜


(2010年 韓国 2時間41分)
監督:カン・ウソク  原作:ユン・テホ 
出演:パク・ヘイル、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサン、ユ・ヘジン、ユ・ソン、キム・サンホ、キム・ジュンベ、ホ・ジュノ

2010年11月20日より丸の内TOEI、シネマスクエアとうきゅうほか全国順次公開
11/27〜梅田ブルク7、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都、
12/4〜シネ・リーブル神戸、
2011年3/12〜25 高槻ロコ9シネマプラス

公式サイト⇒ http://kurokunigorumura.com/
 どこにでもある山村。だが、孤立したその村には決してよそ者を受け入れぬ厳しい掟があった。ある秘密を守るために……原作はウェブ連載の人気漫画作品。カン・ウソク監督は、それまで『シルミド』や『公共の敵』など世相を反映させたオリジナル脚本で映画を制作してきたが、今回は漫画の映画化ということで大きな話題を呼んだ。しかし、「漫画だろうが、小説だろうが、原作を全く別のコンテンツである映画として作り直すということは、新しい1本のシナリオを創作するよりも容易なことではない」と語るように、ただのミステリーではすまされない欲望渦巻く人間の業をえぐりだすと同時に、過去30年を通した独裁国家のメタファーとも捉えられてとても興味深い。
 ソウルで起訴されそうになった青年ユ・ヘグク(パク・ヘイル)は、幼い頃生き別れた父の死の知らせを受けてある山村にやってくる。そこは絶対権力を握る村長(チョン・ジェヨン)を中心とした外部と遮断されたような小さなコミュニティだった。村人は、父親の死因を究明しようとするヘグクに対し警戒心をあらわにする。そして、ヘグク自信が襲われると同時に、次々と村人が死んでいく。そこで、ヘグクのせいで左遷されたパク・ミヌク検事(ユ・ジュンサン)に助けを求めるが、……。
 予想もつかぬ展開と緊張の連続で、2時間41分もあっという間だった。30年前のヘグクの父親(ホ・ジュノ)が所属するある宗教団体で一体なにが起きたのか? 人心を暴力的脅威で掌握していく村長のやり方は、軍事政権下の韓国もしくはどこかの独裁国家を揶揄しているようにさえ見えた。いわくありげな村人や緊迫した捜査など、過去を織り交ぜながら展開されていく。その見事なストーリーテリングに自ずとミステリーは強まる。
 独裁者・村長を演じたチョン・ジェヨン(『トンマッコルへようこそ』『彼と私の漂流日記』など)の冷徹な人心操作ぶりと、不安を前面に出しながらも真相究明の手を緩めないパク・ヘイルのエキセントリックな表情も対称的で面白かった。さらに、ヘグクに悪態つきながらも正義を全うするユ・ジュンサン演じる検事も、泥沼化した事件が展開される中で精悍で清々しい印象を与えていた。それぞれのキャラクターを対比させることによって、作品の持つおかしさや悲しみが滲み出てくる。韓国映画のパワーと奥深さを改めて実感させる作品だ。
(河田 真喜子)ページトップへ
   
             
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