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★君を想って海をゆく

(C)2009 Nord-Ouest Films-Studio37-France 3 Cinema-Mars Films-Fin Aout Productions.

『君を想って海をゆく』 (WELCOME)
〜希望の可能性に向かって進む姿の美しさ〜
( 「SPACE BATTLESHIPヤマト」と通底するものが!?)


(2009年 フランス 1時間50分)
監督・共同脚本:フィリップ・リオレ
出演:ヴァンサン・ランドン,フィラ・エヴェルディ,オドレイ・ダナ

2011年2月5日(土)〜梅田ガーデンシネマ、
2月19日(土)〜京都シネマ、
2月26日(土)〜神戸元町映画館 にて公開
公式サイト⇒ http://www.welcome-movie.jp/

 17歳のビラルは,イラクのクルディスタンだ。トルコ兵に捕らえられ,8日間ビニール袋を被されていたという。彼は4000キロ歩いてフランスの港町カレにやって来た。ドーバー海峡を挟んで対岸はイギリスだ。そこに彼の大好きなものがある。恋人のミナに,サッカーチームのマンチェスター・ユナイテッドだ。不法滞在者のビラルはドーバー海峡を泳いで渡ろうと水泳教室に通い始める。2008年のことだ。原題のWELCOMEという言葉が重い。
 カレでは,シモンが水泳コーチとして働いていた。現状を受け入れるだけの人生を送っている。水泳選手として栄冠の一歩手前で挫折した苦い過去が,彼の人生に影を落としているようだ。妻マリオンは,中学校の英語教師で,ボランティアで難民に食事を配っている。だが,シモンは,難民問題に無関心で,目前に迫ったマリオンとの離婚も仕方ないと思っている。従容としているわけではなく,ただ自分自身の行く末を傍観しているだけだ。
 ビラルに戻る場所はない。ただ希望の可能性を信じて前に進むしかない。ちょうどヤマトがイスカンダルを目指したように。ビラルにとってミナはヤマトから見たイスカンダルであり希望の象徴にほかならない。愛する人だけを見詰める姿勢が美しい。観客だけでなくシモンもその端正な姿に心を動かされる。目の前のマリオンさえ手放す自分自身の姿がビラルとの対比で客観的に見えてくる。そして,マリオンの心を取り戻したいと切に願う。
 海峡の向こう側では,ミナが従兄との結婚を余儀なくされていた。父親の決定には逆らえない。そのエピソードが加わったことで,より一層ビラルの一途さが哀しみを帯びる。海峡を泳ぎ切れなかったときはもとより,無事に対岸まで辿り着いたとしても…という閉塞感が,ままならない人生とオーバーラップする。しかし,ビラルの瑞々しい想いは,シモンが自分の弱さを乗り越える切っ掛けを与えてくれた。清々しさの残る愛すべき作品だ。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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