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★黄色い星の子供たち

(c)2010 LEGENDE LEGENDE FILMS GAUMONT LEGENDE DES SIECLES TF1 FILMS PRODUCTION FRANCE 3 CINEMA SMTS KS2 CINEMA ALVA FILMS EOS ENTERTAINMENT EUROFILM BIS
『黄色い星の子供たち』 (LA RAFLE)
〜フランスによるユダヤ人一斉検挙の真実、
          それでも明日を夢見た子供たち〜


(2010年 フランス・ドイツ・ハンガリー 2時間5分)

監督:ローズ・ボッシュ
出演:メラニー・ロラン、ジャン・レノ、ガド・エルマレ、
    ラファエル・アゴゲ、ユーゴ・ルヴェルデ他

2011年7月23日〜TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、
シネリーブル梅田、シネリーブル神戸、
今夏〜京都シネマ他順次公開
公式サイト⇒  http://www.kiiroihoshi-movie.com
 戦争の悲劇がここにもあったとは。第二次世界大戦下、ナチスドイツではなくフランスにより行われた一万人規模のユダヤ人一斉検挙は、フランス政府が1995年に国家の責任を認めるまで歴史の陰に隠されてきたという。この真実に光をあてたのは、ドキュメンタリー出身のローズ・ボッシュ監督。生存者の証言や資料を調べぬき、今は亡き犠牲者が生きた証を壮大なスケールでよみがえらせた。
 タイトルの「黄色い星」とは、ラヴァル政権が1942年にユダヤ人に着けることを義務付けた印のこと。当時、職場追放や公共の場所への立ち入り禁止など、ユダヤ人の迫害政策が進行していた。それでも救いの国フランスを信じて暮らしていたユダヤ人にとって、一万人規模に及ぶ一斉検挙はまさに不意打ち。女性、子供関係なく根こそぎ検挙する凶行ぶりが露わに描かれる一方、必死の思いで親が逃がした子供たちを命がけでかくまう市民の姿が目に焼き付く。
 検挙されたユダヤ人たちが最初に移送されたヴェル・ディヴ(冬季競輪場)では、消防車による給水に歓喜の声が溢れ、離ればなれになった家族や友人への手紙を消防団員にそっと託す。実際にあったことを元に描かれた切実なエピソードの数々から、当時の異常な状況が窺い知れる。そんな中、ユダヤ人医師シェインバウム(ジャン・レノ)の、一人で最後まで患者に寄り添う献身的な姿。また看護婦アネット(メラニー・ロラン)の、子供たちを見守り、命を奪い兼ねない劣悪な扱いに対し相手が役人であろうが訴え続ける姿が、理不尽極まりない状況に陥ったユダヤ人たちにかすかな希望を与えるのだ。
 一方で、一斉検挙をされてもなお未来を信じている子供たちの姿が彼らの目線で描かれる。いつもこぐまのぬいぐるみを抱えた男の子ノノは母の死を知らずに、帰ってくると信じていた。突然次の強制収容所に移送されても、少年ジョーは家族や友人とこのまま過ごせると信じていた。無残にも家族は引き裂かれ、大人だけがドイツの収容所へ移送されるときに、母が命がけでジョーに伝えた言葉が生々しく響く。「約束して、生きるのよ。」
 母の言葉で脱走を決意したジョーを含むごくわずかな子供以外は、親と会えることを信じてドイツ行きの移送列車に詰め込まれ、生きて帰ることはなかった。苦難に耐えながら未来を信じたその短き命の尊さを思わずにはいられない。ヴェル・ディヴ一斉検挙の悲劇を目の当たりにし、人間が犯した罪のあまりにもの重さに愕然とさせられた。二度とあってはならない悲劇に真正面から向き合うと同時に、希望を失わず生き抜こうとした姿を胸に刻みたい。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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