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★隠された日記 母たち,娘たち

(C)2009 Sombrero Films - France 3 Cinema ? Filmo
『隠された日記 母たち,娘たち』 (Meres et Filles)
〜社会からの自由,そして自分からの自由〜

(2009年 フランス,カナダ 1時間44分)
監督・脚本:ジュリー・ロペス=クルヴァル
出演:カトリーヌ・ドヌーブ,マリナ・ハンズ,マリ=ジョゼ・クローズ,ミシェル・デュショーソワ,ジャン=フィリップ・エコフュ

2010年10月23日(土)〜銀座テアトル 他順次全国公開
11月6日(土)〜テアトル梅田、近日公開〜シネ・リーブル神戸
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/diary/
 3世代にわたる女性の悩みや葛藤が丁寧に描かれていく。そこから見えてくるのは女性の自由が広がっていく様子だ。自らの意思で選択することが社会的に許容され,その選択肢が増えて行動範囲が広がっていく。祖母ルイーズは,夫から家庭の外に出ることさえ許されず,息苦しさを覚えていた。だが,母マルティーヌは故郷で理解のある夫と暮らしながら開業医として働き,娘オドレイは故郷から遠く離れて結婚せず仕事に打ち込んでいる。
 まず故郷の駅に降り立つオドレイの何だか疲れた表情が映され,続いて彼女とマルティーヌとのギクシャクした関係が描かれる。マルティーヌは,母を理解できず,娘とも分かり合えないと思い込んでいる。ルイーズは,幼いマルティーヌとその弟に黙って家を出たまま戻らなかった。一方,オドレイは,迷いながらもチャンスを掴もうとカナダ行きを選択した。そして,恋人でない男性の子を妊娠し,仕事を犠牲にできないと思い悩んでいる。
 このような設定の下で,オドレイを軸として物語がミステリアスに展開し,マルティーヌが母を理解し娘を受容するまでの過程が明らかにされていく。ラストでは,マルティーヌがルイーズの真情に身を震わせ,オドレイから贈られたドレスを身に付ける。マルティーヌは,ちょっとバツが悪いけど何とも嬉しいという感じを,体全体に表出する。オドレイもまた,積年の澱が消え去ることで,自身の進むべき方向が見えたような表情を見せる。
 始まりは,オドレイが亡き祖父の海辺の家で祖母ルイーズの日記をたまたま見付けたことだった。ルイーズは,日記には子供への愛情を綴りながら,なぜ,大金と荷物全てを残して姿を消し,そして二度と戻らなかったのか。オドレイは,自ら母親となるかどうかの選択を迫られる中,若い頃のルイーズを想起し,何度も彼女と対話する。この幻想シーンに波の音が被さり,水平線の彼方へ広がる海の大きさと底知れない海の深さが染みてくる。
  ルイーズは,家庭より仕事を優先しようと決意するが,それは夫や社会には受け入れられない。オドレイの時代になると,彼女が家を出て仕事に打ち込んでも,社会的な非難を受けることはない。彼女が出産と仕事のどちらを選択するかは,社会の問題というより自身の問題だ。社会の意識が変遷するに伴い,女性の社会的役割が広がっている。今は,家庭内や自分の内面に生じた葛藤を克服したとき,真の自由が訪れる時代なのかも知れない。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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