本作は朝鮮戦争を素材とした、戦争映画という体裁の韓国映画である。すると、みなさんには、すぐにピーンとくるものがあるはずですよね? 「ブラザーフッド」(2004年)しかり、「戦火の中へ」(公開中)しかり。でも本作は、正真正銘の戦争映画とはとても思われない映画だ。なぜなら、上の命令に従い米国軍が、武器1つ持っていないので何の抵抗もできない民衆を、無情にも攻撃し殺戮していくのである。
とても考えられないことだ。それが平然と当たり前のように、眼前に、スクリーンに展開していく。攻撃側を映すことはほとんどない。殺されていく人々を次々に映していくシーンの数々に、もうどうにもこうにも、たまらなくなってきてしまった。どうして、そうなるんだ、おかしいじゃないか。みなさんは、見ながら唖然としつつ、そういう風に思われることでしょう。
しかし、これが現実だったらしい。小さな農村の人々が、村が戦場になるとのことで、村人全員家族揃って疎開しようと、どこかへ移動しようとしたところ、このメチャクチャな攻撃を受けたのだ。訳が分からない。米軍の命令系統も破綻をきたしていたのだろう。現場にいる隊長は「どう見ても民間人だが…」と言いながらも、上の命令通りに無抵抗の人たちを銃撃し続けていくのだ。死体が累々と転がるなか、子供が鉄道の線路で泣きじゃくっているところへ、逃げた民間人たちを狙って、米軍兵士たちがにじり寄っていくシーンは、衝撃的であった。さらに、その後も、目を覆いたくなるような銃撃シーンが続いていく。
これは1950年にあった実話を基にした映画である。「光洲5.18」(2007年)も無差別殺人を含んだ韓国映画だが、韓国映画は映倫なんてなんのその、本当にむごたらしく描く映画の、ある意味で宝庫なのかもしれない。宝庫などと言っては語弊があるかもしれないが…。しかし、これが真実なのだ。ロベルト・ロッセリーニ監督が特に代表となるが、「無防備都市」(1945年)や「戦火のかなた」(1946年)など、イタリアン・ネオリアリズムという、現実の悲惨さを映画化した、かつての名作群に匹敵するような仕上がりとなっている。それでも、ラストの1つの光明には救われた思いがした。悲惨なままに終わらないところがいい感じだった。
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