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 『ソウルのバングラデシュ人』
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★ソウルのバングラデシュ人(真!韓国映画祭2011)(河田真喜子バージョン)

『ソウルのバングラデシュ人』
〜ミンソ17歳、 バングラデシュ人カリムと出会って
                 もっと逞しくなりました! 〜

(2009年製作 韓国 1時間47分)
監督:シン・ドンイル
出演:ペク・ジニ、Mahbub Alam Pollob、イ・イルファ、パク・ヒョックォン

2011年4月23日(金)〜「真! 韓国映画祭2011」の1本として、第七藝術劇場にてロードショー
公式サイト⇒http://www.nanagei.com/movie/data/471.html

 私たちは普段、韓流ドラマやK−POPなど洗練された芸能メディアに触れることによって、成熟した韓国社会を想像している。しかし、映画はそういう一面だけではない、社会のひずみにあえぐ人々や変化しつつある世相を如実に表現して見せてくれる。本作は、急激に進む格差社会からはじき出された外国人労働者と、逆境にもめげず図太く生き抜こうとする少女の、偏見を超越した人としての心の交流を描いた快心作である。

 ソウルに母親とその恋人と暮らす17歳の高校生ミンソは、他の生徒と同じように夏休み中の英語塾に通いたいと思っていた。しかし、家にはそんな余裕はなく、仕方なくヘルス嬢のアルバイトをすることに。ある日、バスの中で〈白人ではない外国人〉カリムが落とした財布をネコババしてしまう。それを捕まえたカリムに、警察へ突き出さない代わりに、1年分の給料を支払わない元の雇い主に直談判することを頼まれる。

 29歳のカリムは、お金を稼いでバングラデシュに帰りたいが、それもできず本国の妻に離婚されてしまう。人々に蔑まれ、人間以下の扱いを受け
ながらも、人として純粋で優しい心を保ち続ける。そんなカリムとの出会いは、 それまで自分ひとりの不幸として世の中をうまく渡ることしか考えていなかったミンソに、新たな目を開かせることになる。そして、カリムは唯一心を開いて語れる存在でもあった。

  ミンソは、不純に思えた母と男との関係にも理解を示したり、教え子とは知らずヘルス嬢を指名してしまった担任教師に対して「学校以外の方が学ぶことは多い」と言って堂々と退学したり、白人講師による高額な英語塾に対しては強行に出たり。不遇や絶望にも決してメソメソ泣いたりはせず、怒りのパワーでもって体当たりしていく、実に頼もしい女子高生となっていくのだった。

 確かに、有色人種の外国人に対しては、白人に対してほど愛想良くはしていないかも知れない。劇中も、隣の座席に座らなかったり、白い目でジロジロ見たり・・・見ているこちらにも強い偏見を持っていないか問われているようだ。カリムの外見より内面の気高さに気付いたミンソは、カリムとの結婚を申し出るが、それは恋心とも同情とも受け取れる。

 ラストでちょっと大人になったミンソがバングラデシュ料理店を訪れ、メニューにはない料理を流暢に注文し、手で食べるシーンがある。かつて、カリムが作ってくれた美味しい料理を懐かしむように食べるミンソの表情から、不寛容な社会でも自信を持って生きていることが伺える。ミンソを演じたペク・ジニの不貞な童顔がキュートで、不条理に立ち向かうその姿がまた健気。そう、今の世の中、災難に遭っても、失敗しても、失恋しても、諦めずに、めげずに生き抜くことが最高に格好いいことだと教えてくれているようだ。

 (秀作揃いの『真!韓国映画祭2011』の中でも一番好きな作品です♪)

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★ソウルのバングラデシュ人(真!韓国映画祭2011)(宮城正樹バージョン)
『ソウルのバングラデシュ人』
〜『息もできない』に通じる作品性と演技に注目!〜

(2009年製作 韓国 1時間47分)
監督:シン・ドンイル
出演:ペク・ジニ、Mahbub Alam Pollob、イ・イルファ、パク・ヒョックォン

2011年4月23日(金)〜「真! 韓国映画祭2011」の1本として、第七藝術劇場にてロードショー
公式サイト⇒http://www.nanagei.com/movie/data/471.html
 韓国人と異国の人との恋愛を描いたラブ・ストーリー。なんて聞けば、オールド映画ファンなら、『慕情』(1955年製作)みたいなウットリできるようなのを思い出すかもしれない。しかも、韓国映画だから、韓流テレビドラマからイメージされるような、恋愛ものを期待されるだろう。しかし、本作はそれらの作りとは違う。世界的な不況、不法滞在者問題など、現代的なさまざまな社会問題を取り込みながら、低賃金労働者のバングラデシュ人と韓国女子高生の恋愛を、甘さ控えめに辛口で描かれるのだ。

  例えば、その作り方は、武闘派の主人公と女子高生の交流も描いた傑作『息もできない』(2008年)と似通っている。どちらも社会的には弱者の主人公だが、暴力をふるうか、ふるわないかの違いくらいだろう。特に、ヒロインのペク・ジニの演技は特筆ものだ。『息もできない』のキム・コッピ以上に出番があり、チャキチャキ娘ぶりを披露する。怒りのべらんめぇ調みたいなハングル語が、耳にこびりついてくる。

 そういう声や音を強調するためか、映画としてのサウンドトラックは流れない。登場人物が歌うシーンはある。韓国のバングラデシュ人会みたいな集いで、アカペラで母国語の歌を歌ったり、ヒロインの母が経営するカラオケボックスで、ヒロインが歌を歌う。その歌さえもが世界各国を現代的に、風刺するような歌である点にも驚いた。そして、メイン・テーマの恋愛を描くのに、印象的な長回しの撮影(2分以上)を多投している。

  まずは、2人の出会いのシーン。バスの中で出会うのだが、固定撮影にも関わらず、奥行き感と動きがあるこのカットはとても映画的だ。2人が向こうからこちらへ歩いてくる『第三の男』(1949年)のラストシーン的な、遠近感あるシーンが何箇所かで披露される。食事シーンなど、テーブルで向かい合う長回しも多い。バイトでヘルス嬢やってるヒロインを指名した相手が、実はヒロインが通う高校の担任教師だったことが分かる、焼肉屋でのツー・ショットなど、笑えるシーンもある。最も長い撮影のワン・カットは、ラストシーンである。ヒロインが1人で食事をしてるだけの固定撮影だ。だが、このシーンは、心に深く永く残るシーンとなった。
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