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『星の旅人たち』
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星の旅人たち

(c)The Way Productions LLC 2010
『星の旅人たち』 (The Way)
〜人と人との心地よいつながり〜

(2010年 アメリカ・スペイン 2時間08分)
監督:エミリオ・エステヴェス
出演者:マーティン・シーン、デボラ・カーラ・アンがー、
      ジェームス・ネスビット、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニング

6月9日(土)〜シネ・リーブル梅田、 6月16日からシネ・リーブル神戸、今夏、京都シネマにて上映予定
公式サイト⇒ http://hoshino-tabibito.com

 巡礼の旅、それは人との出会いであり、自分の心との対話の旅でもある。年を重ねるに連れ、人の心には、他人には言えない傷、“人生の澱”のようなものが降り積もっていく。そんな自分を見つめ直そうと、人は旅に出るが、さりとて達観できるわけでもなく、引き連れているのは自分自身。いろんな悩み、思いを抱えながら旅を続ける大人たちを暖かく見つめたヒューマン・ドラマ。
 アメリカの眼科医トムの元に一人息子の訃報が届く。スペイン北西部サンディアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅に出発した矢先、ピレネー山脈で嵐にあっての不慮の死。トムは、不仲だった息子の真意を知ろうと、その遺志を継いで、聖地まで800キロの道のりを歩き出す。
 道中で出会う巡礼者たちがいい。陽気なオランダ人のヨストは、気難しく頑固なトムとは対照的。ヨストの親切をむげにもできず、トムは道中を共にする。そして、カナダ人でヘビースモーカーのサラ、アイルランド人でおしゃべりな旅行ライターのジャックと知り合う。はじめは一人でこっそり出発しようとしたり、どこかなじめなかったトム。ワインを飲みすぎて、とうとうジャックやヨストに、たまっていた不満を爆発させ、悪態をついてしまう。しかし、このことがきっかけで、逆に彼らの関係は緩やかに変化する。不器用なトムの言えなかった思いを理解し、フォローしようとする三人。それぞれ人には言えない苦しみ、過去を抱えた大人たちが、互いに少し距離を置きながらも、思いやりを持ち、そっと見守りながら、道中を共にする姿は、すばらしく、すがすがしさがあふれる。
 旅先の土地で暮らす地元の人々も強い印象を残す。とりわけ、ブルゴスで、差別されながらも誇り高く生きようとするジプシーの親子のたたずまいは忘れられない。巡礼の旅を通じて、4人それぞれの心に刻み込まれたものは何だったのだろう。彼らともに観客もまた一緒に旅に出ているような気持ちになるほど、彼らの歩く姿はすてきで、スペインの美しい大自然や古い街の風景を満喫できる。
 登場人物の心の奥深くまで踏み込んで描くことはせず、その人生に寄り添うようなスタンスが心地よい。時折、不器用な父を見守るかのごとく現れる息子と、トムとの視線の会話も余韻が残る。トムを演じるマーティン・シーンの深みのある表情と遠くを見つめる目。旅を終えた時のトムの心境に、思いを馳せたい。

(伊藤 久美子) ページトップへ

(c)The Way Productions LLC 2010
   
             
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