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★瞳の奥の秘密

(C)2009 TORNASOL FILMS - HADDOCK FILMS - 100 BARES PRODUCCIONES - EL SECRETO DE SUS OJOS (AIE)
『瞳の奥の秘密』 (原題: El Secreto De Sus OJos)
〜過去に囚われ未来を失うことのないように…〜
(本年度アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作品)

(2009年 スペイン,アルゼンチン 2時間09分)
監督:ファン・ホセ・カンパネラ
出演:リカルド・ダリン,ソレダ・ビジャミル,パブロ・ラゴ,ハビエル・ゴディーノ,ギレルモ・フランチェラ

2010年8月14日(土)〜TOHOシネマズシャンテ 他順次公開
関西では、8月21日(土)〜シネ・リーブル梅田、秋〜京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開

公式サイト⇒ http://www.hitomi-himitsu.jp/
 溢れる情熱は人間を呑み込んでしまう。人間のコントロールが利かなくなり,逆に人間を突き動かしていく。主人公ベンハミンは小説を書き始める。その題材は20年前に自ら捜査を行った殺人事件だ。彼の生涯を左右したその事件は未だ完結していなかった。誰も皆,逃れるべき過去を心のどこかに抱えている。人間だからこそ虚しさを感じてしまう。逃れるには過去を変えなければならない。決して忘れられない心情がそのパワーの源泉となる。
 リリアナは,1974年初めモラレスと結婚し,6月に殺害された。23歳で無惨な姿になったリリアナとその様子を見ているベンハミン。2人を取り巻く物悲しい空気が全ての始まりだった。モラレスは,犯人には長生きして空虚な日々を生きて欲しいと望む。事件から1年後には駅で毎日犯人を捜し続けていた。彼が現れることのない犯人を待っていたのだと後で分かったときの遣る瀬なさ。彼を支えていたのはリリアナに対する一途な思いだった。
  ベンハミンは,見逃さなかった。アルバムの写真の中でいつもリリアナを見ている幼馴染みのゴメスの瞳。そこには彼女への想いが表れていた。また,駅でリリアナの話をするモラレスの瞳。そこには真の愛が宿っていた。だが,ベンハミンは,自分の瞳からは目を逸らしていた。そこにはイレーネに対する愛が刻印されていたはずだ。駅での別れのシーンが冒頭で示される。ベンハミンは,この情景を変えたくて,小説を書き始めたに違いない。

  イレーネに「なぜ1人で去ったの?」と聞かれ,ベンハミンは返す言葉がなかった。生きる世界が違うというのは言い訳にすぎない。ただ前を向かずに奇跡を待っていた。だが,20年の時を経て,彼はその情熱の故に過去を断ち切ろうとする。モラレスは情熱のために過去を変えられず,ゴメスへの復讐に生きていた。2人が互いの人生を奪い合ったようで虚しい。ベンハミンが虚しさと決別し愛を取り戻そうとするラストにはホッとさせられる。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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