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★ハロルドとモード 少年は虹を渡る

(C)1971 Pramount Pictures Corporation
『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』
(原題:Harold and Maude)
〜自殺を夢見る青年と79歳老女が織りなす異色青春グラフティ―〜


(1971年 アメリカ 1時間31分)
監督:ハル・アシュビー
出演:バッド・コート、ルース・ゴードン、シリル・キューザック、チャールズ・タイナー他

2010年7月17日〜新宿武蔵野館、9月11日〜シネ・ヌーヴォ、10月以降京都みなみ会館、神戸アートビレッジセンター他全国にて公開
公式サイト⇒ http://sky-way.jp/ziggy/
 少年が首を吊る衝撃的なシーンからはじまる本作は、60年代後半から70年代にかけてアメリカで生まれたアメリカン・ニューシネマの中で異彩を放ち、今でも熱狂的な支持を得ているハル・アシュビー監督の作品だ。今のハリウッドではお目にかかれないようなオリジナリティー溢れるストーリーや美しく詩的な映像は必見だ。
 主人公は19歳のハロルド(バッド・コート)。豪邸に住み、何不自由ない生活をしていたが生きる意味も分からず、恋をすることもなく、自殺の真似ごとばかりをしては母親や周囲を呆れさせることが唯一の楽しみ。そんなハロルドが葬儀場で79歳の老女モード(ルース・ゴードン)と出会ったことから、彼の人生が劇的に展開していく。
 自由奔放に人生を謳歌するモードの姿を見て、それまで死んだような表情だったハロルドの眼が輝きに満ちてくる。何の意味もなく死に憧れるような人生を送っていたハロルドにとって、モードの既成概念に囚われず自分のやりたいことを貫く姿勢や、心の壁のなさが羨望から愛に変わっていく様子はまさにミラクルだ。自殺のまねごとでゾクッとさせられる血生臭いシーンがある一方で、ファンタジーのような素朴であったかいシーンや、ロードムービーのように霊柩車でドライブするシーンが混じり、不思議な感覚を残すのも心憎い。
マッカーサーの右腕だったというハロルドの叔父やハロルドの母の会話から当時のアメリカの思想や世情が浮かび上がる一方で、ハロルドとモードの会話や二人が一緒にやることは時代を超えた生きる歓びの表現に思える。劇中で随所に流れるキャット・スティーヴンスの歌が、ハロルドやモードの気持ちを代弁しているように胸に響くのだ。「好きなことをしろ。チャンスはそこにある。」この歌詞のように生きてきたモードにハロルドが心動かされたのと同様に、観ている者にも様々な問いを投げかけているような気がした。奇想天外だけど勇気づけられる、他に類を見ない青春映画として脳裏に焼きつくことだろう。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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