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GOMORRA ゴモラ
『GOMORRA ゴモラ』
〜浮び上がる,巨大な影と得体の知れない不安〜

(2008年 イタリア 2時間15分)
監督・共同脚本:マッテオ・ガッローネ
出演:サルヴァトーレ・アブルッツェーゼ,ジャンフェリーチェ・インパラート,マリア・ナツィオナーレ,トニ・セルヴィッロ,カルミネ・パテルノステル,サルヴァトーレ・カンタルーポ,マルコ・マコル,チロ・ペトローネ

2011年10月29日(土)〜渋谷シアター・イメージフォーラム 他全国順次公開
関西では、12月24日(土)〜第七藝術劇場、京都みなみ会館、
近日〜神戸アートビレッジセンター
公式サイト⇒  http://www.eiganokuni.com/gomorra/
*第61回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞










 5つの物語を並行させて8人の人生の一端を描き,その背景に厳然とそびえる社会を浮彫にする。説明的なシーンは排除され,登場人物の心象を可視化することもなく,客観的な事実を見据えている。その冷徹な視線は,個人の力ではどうすることもできない大きな存在を実感させる。人はただ,背を向けて去っていくか,その内部に自分の居場所を確保するか,どちらかを選択するしかない。大きなうねりの中で個人の存在は余りにも小さい。

 少年トトは,度胸試しの儀式を経て,組織の中で麻薬の密売等に手を染める。そして,俺たちの味方か敵かと迫られ,敵ならここから帰さないと言われて殺人に加担する。マリアの息子はトトの友人だが,敵対する組織に入っていく。息子を裏切れないと言うマリアを,トトは裏切らざるを得ない。ドン・チーロは,組織の帳簿係でマリアらに給料を配達していたが,抗争に巻き込まれる。必死に生き延びようと逃げていく,その姿が痛ましい。

 青年マルコは,誰かに命令されるのはイヤだと言い,「スカーフェイス」のトニー・モンタナを気取っている。チーロと2人で,麻薬を奪い取り,ボスに反感を抱いて組織の銃を盗み出す。彼らなりに青春を謳歌しているが,その末路は愚かしく哀れだ。ロベルトは産業廃棄物を処理する仕事に就き,彼の父親は息子の就職をフランコに感謝する。だが,ロベルトは,もう働けないとフランコに告げ,不法投棄の実体に背を向けて立ち去っていく。

 パスクアーレは,オートクチュールの製造工場で長年働いてきた職人だが,組織を裏切って中国人の工場で技術指導をする。彼が雇主に「搾取され続けた」と心情を吐露するシーンは痛切だ。最後に,彼らを覆っていた影がナポリを拠点とするカモッラという組織であることが示され,波の音が得体の知れない不安を増幅する。生き続ける者も命を奪われた者も,誰一人として幸せな表情をしておらず,各々の不幸の表情が走馬灯のように浮ぶ。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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