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★ゴダール・ソシアリスム
『ゴダール・ソシアリスム』 (原題:FILM SOCIALISME)
〜3Dよりも刺激的!
         脳を覚醒するゴダールワールドへようこそ〜

(2010年 フランス=スイス 1時間42分)
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:マチアス・ドマイディ、ナデージュ・ボーソン=ディアーニュ、ジャン=マルク・ステーレ、アガタ・クーチュール他

2010年12月18日〜TOHOシネマズ シャンテ
、2011年2月12日〜第七藝術劇場、
2月19日〜東宝プラザで公開
公式サイト⇒  http://www.bowjapan.com/socialisme/
 80歳を超えたジャン=リュック・ゴダール監督の最新作『ゴダール・ソシアリスム』は、驚愕の1本と言っても言い過ぎではない。映画全編を超高速早送りにした前代未聞の予告編を見ても、それで一つの作品として成り立つのだから、頭で見るものではないなと実感するのだ。
 3章構成となっている本作では、第1楽章が「こんな事ども」と題し、地中海を周遊するゴールデン・ウェブ号を舞台に様々な国籍の人が集い、語り、食事をし、カメラを向け、歌い踊る。踊り狂う波、陽光降り注ぐデッキでの会話、スペインの黄金伝説の秘密・・・幾重もの伏線が張り巡らされていることを頭の片隅に置きながらも、映像の刺激とかぶさるような重厚感のある音楽に飲み込まれ、観ている者の意識は彷徨うことだろう。
 第2楽章では、フランスの田舎街が舞台。「どこへ行く、ヨーロッパ」と意味深なタイトルでガソリンスタンドのマルタン一家と彼らの元に訪れた取材クルーのストーリーが語られる。ひときわ原色が鮮やかに映る中、特に輝きを放っているのは長女フロと息子のリュシアン。なんてことない日常風景で語られる詩的な言葉の数々、それを聞いているのが彼らが飼っている動物たちであるのも興味深い。
 第3楽章は「われら人類」。人類の歴史をひもとく映像と詩の嵐だ。エジプト、パレスチナ、オデッサ、ギリシャ、ナポリ、バルセロナと人類の伝説をたどり歴史を縦横無尽に行き来する。ゴダールの頭の中を旅しているのか、そんな気分にすらさせられる長い旅の終わりには「自由は高くつく!」という言葉が解き放たれる。映画の自由な可能性を追求し続けてきたゴダールだからこその説得力ある言葉だ。
 素直にゴダールの映像と詩と音楽の世界に身を委ねていれば、これほど刺激的で斬新で、圧倒される作品はないと感動できるだろう。逆を言えば、私は理解しようと試みたばかりに「よく分からなかった」と頭を抱えてしまったクチである。分かろうと思って見るなんて100年早い、そんなことをしなくてもいい映画がある。映画に対するつまらない既成概念を安々と打ち壊してくれた、「自由に」感じる作品なのだ。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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