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★ゴーストライター

(C)2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
『ゴーストライター』 (The Ghost Writer)
〜深まる謎、疑惑の人物、モデルは監督?!〜

(2010年、フランス、ドイツ、イギリス、2時間08分)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、
    オリヴィア・ウィリアムズ

2011年8月27日(土)〜ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか全国順次公開
10月1日(土)〜シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸にて公開
公式サイト⇒  http://www.ghost-writer.jp
*2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)受賞
 映画監督は豊富な経験をしている人が多いものだが、ロマン・ポランスキー監督ほど波乱万丈、ドラマチックな人生を送っている人はない。パリ生まれのユダヤ人で両親とも強制収容所に収容され、母親はアウシュビッツで虐殺。本人もユダヤ人狩りから逃れて転々。この体験はアカデミー賞受賞作「戦場のピアニスト」に生きている。

 これだけでも一生分の体験だと思うが、ポランスキーにはまだ2つ、大きな出来事がある。69年、チャールズ・マンソンのカルト集団に身重の妻シャロン・テートが惨殺されたショッキングな事件。当時、イギリスで撮った「吸血鬼」が上映中で大阪・梅田シネマ劇場前のシャロン・テートの大看板が不気味だったのを今も覚えている。

 最後は今でもアメリカに入れない原因、子役モデルへの淫行疑惑。本人は否定しているが、アカデミー賞監督賞を受賞しても受け取りに行けなかった。こんなに悲惨な経験をしたらおかしくなっても不思議じゃない。事実、80〜90年代のスランプは“逃亡人生”と無関係ではないだろう。

 希有な経験が発酵した「戦場のピアニスト」は幼少期の体験が芸術的表現に昇華したものだし、ベルリン国際など数々の受賞で健在を印象づけた「ゴーストライター」の面白さはポランスキーの複雑な人生経験を抜きに考えられない。









 元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)に自伝執筆のために雇われたゴーストライター(ユアン・マクレガー)の“恐怖体験”談。一見、ハリウッド流サスペンスに見えるが、ポランスキーの醸し出す空気はそんな生易しいものじゃない。冒頭、海岸に打ち寄せられた死体から波乱の幕開け。この遺体が前任のゴーストライターと分かったから何かが起こるあやしい雰囲気が立ち上る。ユアンは出版社の面接を受け、報酬25万ドル、期限は1か月以内でゴーストに決まる。作家志望で政治に興味ないユアンだったが。

 彼が取り掛かろうとした矢先、元首相に疑惑勃発。ラングがイスラム過激派のテロ容疑者への拷問に加担した疑いがかかる。その影響で元首相近辺は大騒ぎ。ラングの妻(オリヴィア・ウィリアムズ)、秘書(キム・キャトラル)らクセ者ぞろいの環境で前任者の初稿を読んでみたら、想像以上に酷いシロモノだった……。 これでも冒頭部分。前任者はなぜ死んだか。その謎を追ううち、ラングの秘密の過去に行き当たり、疑惑はふくれ上がっていく。ラングは一体何者なのか?

 アメリカにいるラングが「英国に帰国したら起訴される」という怯える心境はポランスキー本人のものに違いない。人生の大半を“異邦人”として暮らしてきた異才の根無し草の心情が一見分かりやすい物語に深い陰影を付け加え、ゾクゾクさせるサスペンスにつながっている。収容所を逃れて以来、果てしなく続くポランスキーの人生に平穏な日は訪れるのだろうか。「ゴーストライター」とは、世界各国を渡り歩いて映画を撮り続けるポランスキーの自己とう晦なのかもしれない。

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