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★ゲンスブールと女たち

(C)2010 ONE WORLD FILMS-STUDIO37-UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL FRANCE - FRANCE 2 CINEMA - LILOU FILMS - XILAM FILMS

『ゲンスブールと女たち』GAINSBOURG,Vie heroique
〜自由奔放に生きた男の瞳に宿る哀しみ〜

(2010年 フランス・アメリカ 2時間2分)
監督:ジョアン・スファール
出演:エリック・エルモスニーノ、ルーシー・ゴードン、レティシア・カスタ

2011年5月21日(土)〜梅田ガーデンシネマ、(東京)ル・シネマ、新宿バルト9
公式サイト⇒  http://www.gainsbourg-movie.jp/

 「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」など数々の名曲を生み出し、20年前、62歳でこの世を去ったセルジュ・ゲンスブール。ロシア系ユダヤ人に生まれ、絵が大好きな少年は、ピアニストの父から厳しく教えられ、同じ音楽の道を歩む。ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、ジュリエット・グレコと数々の女たちに曲を提供し、愛を贈る。その自由奔放でスキャンダラスな生き方は、今なお多くの人々を魅了してやまない。

 ゲンスブールを敬愛する人気バンドデシネ(BD。フランスのコミック)作家J・スファールによる長編初監督作品。オープニングクレジットのバックでゲンスブールの絵が動き出すのが楽しい。本作のオリジナルは、ゲンスブールが自分の分身と呼ぶキャラクターの存在。子どもの頃は、大きな頭と顔だけのコミカルな人形が、大人になると、ゲンスブールのように背が高く、耳と鼻が大きな姿で現れ、彼を挑発したり、相談相手になったり、喧嘩もする。その対話を通じて、彼の孤独で傷つきやすい魂が浮かび上がる。

 監督が、「彼の人生に忠実ではあるが、単なる伝記映画ではない」と語るとおり、美女と出会い、愛の歌を弾き語る姿や、別れに傷つき酒に溺れる姿、過激な作品を発表し社会に挑戦し続ける姿と、ゲンスブールの波乱に富んだ人生の断面を、歌や音楽とともに切り取るコラージュのようだ。私たちは、自由奔放で、破天荒なゲンスブールの、実は寂しがりで臆病で、容姿へのコンプレックスを捨てきれず、こどものような純粋さを失うことのない、隠された一面を見つけるにちがいない。

 『あの夏の子供たち』で主人公の家族を慰める親友を演じたエリック・エルモスニーノが好演。無精ひげで猥雑な中年男が、煙草をくゆらせながら、けだるく宙を見つめる姿は、ゲンスブールそのもの。全編を通してゲンスブールの楽曲が散りばめられ、彼の紡いだ美しいメロディ一が心に残る。

(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
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