topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『グッド・ハーブ』
  作品紹介
新作映画
★グッド・ハーブ
『グッド・ハーブ』 (Las buenas hierbas)
〜メキシコの大自然の息遣いを感じながら綴る
                        母娘の物語〜


(2010年 メキシコ 1時間58分)
監督・脚本・製作:マリア・ノバロ
出演:オフェリア・メディーナ、ウルスラ・プルネダ、
    アナ・オフェリア・ムルギア

8月20日〜梅田ガーデンシネマ、
9月10日〜神戸アートビレッジセンター、
10月〜京都シネマ(予定)
公式サイト⇒  http://www.action-inc.co.jp/hierbas/
 メキシコの山々、植物、夜空の星といった自然と、人の生とがつながりあっているかのように感じられる不思議な映画だ。ダリアは、コミュニティラジオで働くシングルマザー。母のララは薬草の研究家(民族植物学者)。二人とも夫とは別々に暮らしている。ララがアルツハイマー型認知症になったことがわかり、ダリアは母の仕事を手伝おうとするが…。
 ララの家の庭には、幾十種類もの植物が植えられている。メキシコの薬草は、スペイン征服以前から先住民が治療に用いており、その歴史は長い。クルスーバディアーの写本と呼ばれる「先住民の治療用薬草について」(1552年編纂)という薬草の絵本・解説本のすてきな絵が、章構成になっている本作の章見出しに用いられ、まるで不思議な薬草の絵本をめくっているかのような楽しみがある。ハーブには、人の心を癒してくれる効果があり、古い歴史を持った奥深い世界があることを教えてくれる。
 霧に覆われた山々、アップで映し出された花や葉の映像が頻繁に挿入され、母と娘を包む、メキシコの大自然の営みや植物の姿が、ドラマと同じぐらいの重みと繊細さでとらえられ、強い印象を残す。虫の声が聞こえ、メキシコの風鈴が美しい音色をたて、柔らかな響きの民族音楽が奏でられる。雨の音もすばらしく、生と死の狭間のような神秘的な世界に導き入れられる。
 ララやダリア、近所の女たちが、自分の生き方を模索しつつ、女同士語りあい、助け合いながら、たくましく生きる姿が頼もしい。ドラマを直線的に描くというよりは、洗濯場やラジオ局、ダリアの夫の家と、母娘をメインに、近所に住む女性たちをも緩やかに描写していく感じが、独特なリズムを生んでいる。なかでも、殺された孫娘のことをいつも身近に感じている老女が、ララのベッド脇で頼みごとをする場面や、電車に乗っている時に孫娘が現れる幻想的なシーンが心に残る。
  室内の映像も美しく、えんじや深緑の布、美しい装飾と、色鮮やかなメキシコ文化・民芸の世界を楽しめる。メキシコ映画といえば、不法移民や麻薬戦争などを扱った作品が多いが、本作は、唯一、女性を主人公に撮り続けている女性監督マリア・ロバロによる、日本初公開作品。ぜひ独特の音と映像の世界に浸ってほしい。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって