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★ドアーズ/まぼろしの世界 (安永五郎バージョン)

(C) 2010 Rhino Entertainment Company, a Warner Music Group Company.
『ドアーズ/まぼろしの世界』 (WHEN YOU'RE STRANGE)
〜ジム・モリソンとロックとアメリカと〜

(2010年 アメリカ 1時間28分)
監督:トム・ディチロ
出演:ドアーズのメンバー( ジム・モリソン/ジョン・デンズモア/ロビー・クリーガー/レイ・マンザレク)他
ナレーション:ジョニー・デップ

2010年10月30日〜新宿武蔵野館、シアターN渋谷、
11月20日〜シネマート心斎橋、11月27日〜京都みなみ会館、12月18日〜神戸アートビレッジセンターほか順次公開
公式サイト⇒  http://www.thedoors.jp/
 黄金の60年代、一瞬光輝いた伝説のロックグループ“ドアーズ”の本質に迫ったドキュメンタリー。リーダー、ジム・モリソンの素顔に肉薄していて興味深い。

 ビートルズが英国の希望と解放を感じさせたとしたらドアーズはアメリカの絶望と混沌を体現した。公民権運動→キング牧師暗殺→ケネディ暗殺→ベトナム戦争→反戦運動→ヒッピー→フラワームーブメント→ウッドストックと続くカウンターカルチャーの流れの中で、目立ってロックしていたのがドアーズ、中でもジム・モリソンだった。

  最初のヒット「ハートに灯をつけて」に始まるドアーズの音世界は一見おとなしそうなサウンドに過激なメッセージ性を込めて、政治や抑圧にうんざりした若者を熱狂させた。ギターのジミ・ヘン、女王ジャニス・ジョプリンとともに破滅的な生きざまが当時の「明日なき若者」の心境を代弁。

  ドアーズも問題と苦悩を抱え、ジムもアルコール、ついでLSD、コカインに溺れ、正常なバンド活動は不能に。この時代、平常心では歌など歌えなかったに違いない。過激さを増す歌詞、破壊が目立つステージ、69年の全国ツアー、フロリダ公演で大観衆の前でジムが下半身を見せた猥褻行為で途中打ち切りになり、ジムが訴えられる騒ぎになるあたりドアーズの面目躍如(後に一部有罪)。

  ジミ・ヘンもジャニスも、ウッドストック直後、薬物で死去。ともに27歳。フロリダ騒動で「ウッドストック」に出られなかったジムは「次は俺だ」と覚悟しながらもなお薬に頼りながら作品を発表、ライブも行い人気を集めたが、71年7月死去。彼もまた27歳だった。反抗に生きたロッカーの命はあまりに短かった…。 ジョンとポールのビートルズに比べてドアーズはジムひとりが目立った。それほど感性豊かで傷つきやすい詩人だったのだろう。ジョン・レノンがそうだったように。

 コッポラの大作「地獄の黙示録」のエンディングに流れるドアーズの「ジ・エンド」は、ストーンズとともにロックが世に送り出し得た絶望表現の希有な音。「すべては滅びても詩と歌は残る」というジムの言葉は今も生きている。自由奔放に生き自分らしさを貫いたジムは時代の花として今なお生きている、そう実感させるドキュメンタリーである。
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★ドアーズ/まぼろしの世界 (江口由美バージョン)

(C) 2010 Rhino Entertainment Company, a Warner Music Group Company.
『ドアーズ/まぼろしの世界』 (WHEN YOU'RE STRANGE)
〜本物のロックスターの真実がここにある〜

(2010年 アメリカ 1時間28分)
監督:トム・ディチロ
出演:ドアーズのメンバー( ジム・モリソン/ジョン・デンズモア/ロビー・クリーガー/レイ・マンザレク)他
ナレーション:ジョニー・デップ

2010年10月30日〜新宿武蔵野館、シアターN渋谷、
11月20日〜シネマート心斎橋、11月27日〜京都みなみ会館、12月18日〜神戸アートビレッジセンターほか順次公開
公式サイト⇒  http://www.thedoors.jp/
 確かにその名前は聞いたことがあった。曲も聞けばわかるに違いない。恥ずかしながら伝説のロックバンド、ドアーズについてはそれぐらいの前知識しかなかった。それが観終わってみると、今までバラバラになっていたパズルのピースが組み合わさるかのように、60〜70年代のアメリカカルチャーシーンがくっきりと浮かび上がってきた。まるでドアーズが当時のアメリカを映し出す鏡のように。

 本作は、全て1960〜70年代当時のドアーズの本物の映像を元に作られており、再現映像は一切ない純度100%のドキュメンタリーだ。ジム・モリソンが製作・脚本・監督・主演をした幻の映画『HWY(ハイウェイ)』の一説からはじまるオープニングのカッコ良さに度肝を抜かれ、そこからは60年代アメリカの変貌と重なるようにブルースからロックへとサウンドの変貌を遂げ、圧倒的人気を獲得するドアーズの生映像が怒涛のごとく押し寄せる。
 
 フラメンコギターを習っていたというギターのロビー・クリーガー、吹奏楽からジャズに傾倒していたというドラムスのジョン・デンズモアなどロックバンドでは珍しい経歴の持ち主たちが揃い、そのサウンドは今聞いても曲進行が予測不可能的なオリジナリティーを感じる。そして、ジム・モリソンが書いた詩が、あまりにもピュアで普遍的で、かつシンプルなのにも驚いた。エドサリバンショーから逮捕騒動を起こした伝説のライブまで、生音を通じて当時のジム・モリソンやバンドの苦悩を体感することだろう。

 トム・ディチロ監督は、全て当時の映像で構成された本作のナレーションに自身のキャリアをミュージシャンとしてスタートさせたジョニー・デップを起用し、ドアーズの軌跡だけでなく時代のうねりを浮かび上がらせるドキュメンタリー映画に仕上げた。ジム・モリソンの光と影、ボロボロになったジムを見捨てずドアーズ活動を続けるメンバーたち、ドアーズに熱狂した怒りと狂気の世代、すべてがそこにある。観終わった後の余韻が半端じゃなかったのは、今が怒りも熱気も消え失せてしまったからかもしれない。

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