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  −ある影武者の物語− 』
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 デビルズ・ダブル−ある影武者の物語−

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『デビルズ・ダブル−ある影武者の物語−』 
(THE DEVIL'S DOUBLE)

〜1人2役演技の静と動が、演じ分けられた会心作〜

(2011年製作 ベルギー 1時間49分)「R-18+」指定映画
監督:リー・タマホリ
出演:ドミニク・クーパー、リュディヴィーヌ・サニエ、
    ラード・ラウィ、フィリップ・クァスト、ミムーン・オアイッサ、
    ハリド・ライス、ダール・サリム、ナセル・メマジア

2012年1月13日(金)〜TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸ほかにて全国ロードショー。
公式サイト⇒ http://devilsdouble.gaga.ne.jp
 影武者とあるように、1人2役の演技だ。日本ではあまり知られていない、イギリス出身のドミニク・クーパーが演じた。狂気に満ちた演技と、その狂気に合わせていくプロセス演技、だが、冷静な自分もいるという表裏演技を演じ分けるのだ。しかも、フセインの息子ウダイ・フセインと、その影武者を演じる実話である。かつてヒトラーなどの替え玉映画とか、そのものズバリ武田信玄の『影武者』(1980年)などがあったが、1人2役演技の緻密なサイコ性を披露して、なおかつみんなを痺れさせるのは超難関の演技力となる。

 

 

 だが、ドミニク・クーパーはその高いハードルを、何とかクリアーしてみせた。実在の人物を演じた俳優が、アカデミー賞で演技賞を受賞する傾向が、21世紀になってから顕著になってきているが、本作はベルギー映画とはいえ、この演技はかなり受賞が期待できるものだ。ウダイの残虐でハチャメチャな人間性を示すバイオレンス部と、影武者がウダイになりきろうと頑張る一方で、ウダイの愛人リュディヴィーヌ・サニエとのラブ・ストーリー部ほかの対比が、格差の振幅系ドラマ性をいや増し、そして、クライマックスまで目を離せない仕上げとしている。特に、『引き裂かれた女』(2009年)でも三角関係に陥ったサニエの、迷いと戸惑い演技にも注目したいところ。

 撮影的には、室内照明や空や夕景など、セピアを配色したシーンの挿入が、時おりドラマ効果を呼んでいるようだ。一方で「R-18」指定になっているように、ナイフによる刺殺シーンや強姦シーンなど、バイオレンス・シークエンスは、目をそむけたくなるくらい凄いことになっている。

  そして、ディスコ・シーンで掛かる、1980年代のイギリスのナンバーをメインにした、サウンドトラックというか、設定に合わせて劇中で流れる歌の劇的効果であろう。デッド・オア・アライヴのロック・ナンバーに乗っての、クーパーとサニエの大胆なセックス・シーンしかり、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのジャンキー・ダンサブルな「リラックス」に乗って始まる、2人の逃避行などがインパクト大である。シンセサイザー&打ち込み系の音とオーケストラ・サウンドを混合させるところも、サイコな人間ドラマにマッチしている。
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