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★デザートフラワー

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『デザート フラワー』 (DESERT FLOWER)              
〜トップモデルが明かすアフリカに今なお残る習慣〜

(2009年 ドイツ・オーストラリア・フランス 2時間7分)
監督:シェリー・ホーマン
出演:リヤ・ケベデ、サリー・ホーキンス、ティモシー・スポール

12/25〜テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、2月下旬〜京都シネマ
公式サイト⇒http://www.espace-sarou.co.jp/desert/
 ソマリアの遊牧民家庭に生まれ、いまや世界的トップモデルとして活躍するアフリカ人女性ワリス・ディリーの自伝本をもとに、その半生を綴る。華やかなシンデレラ・ストーリーの裏に秘められた真実の過酷さに、ただもう驚くばかりだ。
 13歳のとき、お金と引き換えに老人との結婚を決められ、家出をするワリス。広大な砂漠をたった一人で歩きとおし、祖母の住む街にたどりつく。親戚をたよってロンドンに渡り、バーガー店で働いているところを一流ファッションカメラマンにスカウトされ、ショーモデルに。さまざまな人の助けで強制送還の危機を乗り越え、スーパーモデルへと躍進の階段をのぼることに…。あるインタビューで「あなたの人生を変えた運命の日は?」と聞かれ、5歳の時のある記憶について語りだす…。
 ワリスを演じるのは、本作が初主演となる現役のエチオピア出身のトップモデル、リヤ・ケペデ。カメラを前にしなやかな肢体が俄然輝きだすのを目のあたりにする。凛とした美しさ、気高さと同時に、繊細で傷つきやすい表情が、観る者を引きつけてやまない。本物の美しさは、外面だけでなく、内面からにじみでるものと実感する。

 

 

 ワリスの華やかな成功と、類まれなる美貌の影に隠された苦しみの記憶…それは、女性性器切除というアフリカに今なお残る社会的慣習。ワリスも姉妹と同様、ある日突然砂漠の片隅に連れられて切除を受け、麻酔や鎮静剤もなくあまりの激痛に泣き叫んだという悪夢のような体験をしていた。この信じられないほど残虐な行為が、貞操や純潔の象徴として平然と行われていることに慄然とする。痛み、心の傷は、女性のその後の人生をも苦しめ続ける。ワリスは、女性性器切除という残酷な伝統について公の場で率直に語った初めての人物。国連でのスピーチの場面には圧倒された。女性としての誇りを強く持ち続けたワリスの姿に感動を覚える。

 悪しき伝統については毅然とした態度でのぞむ一方、アフリカの大地や自然、家族には無限なまでの愛を注ぐワリスの姿が、救いとなる。シーンとしては少ないながらも、アフリカの荒涼とした砂漠の風景と青い空の中を、少女ワリスがピンクの着物で一人歩きぬく姿が美しく、心に残る。ワリスの弟、母、祖母の温和な表情からは、それぞれにワリスを思う深い愛が伝わり、家族の尊さを思う。

  女性として生を受けたことが、屈辱に思えるような習慣があってはならない。ワリスの勇気ある告白は、今なお苦しみ続けているアフリカの女性たちの希望となり、救いとなるにちがいない。 
 
【参考情報】
女性性器切除(FGM)について
女性性器切除とは、思春期までの女児の外性器を切り取ったり、その一部に傷をつけたりする社会的慣習。現在もアフリカや中東などを中心に、イスラム圏、土着宗教、キリスト教徒においても行われている。麻酔や鎮静剤もなく、不衛生な場所での切除は、施術直後に出血や激烈な苦痛を伴うだけでなく、長期的にも、性行為や出産時の痛み、難産や不妊、トラウマといった弊害をもたらす。この慣習は貞操や純潔の象徴とされ、切除を受けなければ、結婚もできず、社会から阻害されてしまう。何らかの形でFGMを受けている女性は、約1億〜1億4000万人といわれ、現在も、推計で毎年300万人もの女児に切除が施されている。ワリスの告白を受け、FGMを廃止する機運が生まれ、アフリカの国々でも禁止の法制度を整え始める国が出てきた。
(伊藤 久美子)ページトップへ
   
             
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