topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『デンデラ』
  作品紹介
新作映画
★デンデラ

(C) 2011「デンデラ」製作委員会
『デンデラ』
〜地獄か極楽か“彼岸の女”たちの逆襲〜

(2011年 日本 1時間59分 東映配給)
監督:天願大介
出演:浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子

2011年6月25日〜全国ロードショー
公式サイト⇒
http://www.toei.co.jp/movie/details/1194467_951.html

 深沢七郎の原作『楢山節考』を木下恵介監督が映画化して社会現象を巻き起こしたのが日本映画最盛期の1958年。セットと色彩に凝った実験的作りで話題となり、ヒットした。25年後、今村昌平監督が再映画化、今度はカンヌ国際映画祭のパルムドール(グランプリ)に輝き、世界に認められた。老人はある年齢(デンデラでは70歳)になると「おやま」へ捨てられる、という民間伝承(深沢七郎原作)、姥捨ての映像化は、木下版も今平版も来るべき高齢化社会の予言として日本だけでなく、世界的に受け入れられた。
 今平版から28年後、「オヤジは家ではただの酔っぱらい」と言っていたその息子、天願大介が“続編”を撮るとは、オヤジも思わなかったに違いない。親の因果が子に報い、というか、親の宿題を息子が片付けたのか。キャッチコピーは「姥捨山には続きがあった」(原作は佐藤友哉)。
 過去2作、親思いの息子(木下版・高橋貞二、今平版・緒形拳)が村の掟に従って、母親(田中絹代、坂本スミ子)を背負って山に置き去りにするお話。今平版では、息子が母親を山に置いて来たとたん、雪が激しく降りだし、姥捨ての残酷さが強調されていたものだ。 “続編”は母親が捨てられるところから始まる。死を覚悟し「極楽浄土」を夢見ていたカユ(浅丘ルリ子)が思いがけず気が付くと、そこは老女だけの集団“デンデラ”だった。ボス(草笛光子)の指導のもと、カユの加入でちょうど50人になったデンデラの老女集団は、自分たちを捨てた村に復讐を企て準備する。
 集団には、村の襲撃に反対して“臆病者”と呼ばれる倍賞美津子らのグループもいるが、カユは反対しながらもボスの方針に従う。村襲撃の日取りが決まったある日、30年間人間を襲わなかった熊がデンデラを襲う。ボスは、カユの傷ついた友人をおとりに熊をおびき出す作戦を実行する…。
  一度はお山に捨てられた老女たちの元気、達者なこと。男を敵とみなす集団なのは男社会だった村への反発だろうが、復讐が何物をももたらさないことはカユも分かっており「極楽浄土などない」と悟ったのだった。生きることを模索する彼女たちに共感するのは、当方がデンデラに近づいたからか。
 村襲撃の決行日に、今度は雪崩に遭い、再度の熊の襲撃には臆病者の倍賞やカユら全員が雄々しく?立ち向かい、一度は熊を閉じ込めるのに成功する。火をつけて仕留めたと思ったものの、必死の熊に逃げ出され、最後は熊VS老女の対決が西部劇並みに繰り広げられる。
 お年とはいえ、浅丘ルリ子の凛とした美しさは目を見張るばかり。山本陽子、草笛光子、白川和子、山口美也子らかつての美人女優たちが素顔をさらして映画に生々しい迫力を与えている。彼女たちが巨大な熊に立ち向かう姿は凡百のアクション映画をも超える。不死身の熊は死の恐怖の象徴。それに立ち向かっていくデンデラ老女たちにとっては、いかに死に立ち向かえるかのリハーサルだったのかもしれない。シニア向けなどではない、大人の映画を堪能した。
(安永 五郎)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって