3.11の東日本大震災、福島原発事故、そして各地での原発の停止で、日本は待ったなしの「節電」対策を迫られているというときに、驚くべきドキュメンタリーがやってきた。
1年という期限付きながら、1家族の試みがどのように世論を巻き起こしていくのかも含めて、その「エコ生活」、「節電」ぶりに注目したい。
エコ生活といっても最初はごく当たり前のことから始まる。ごみを減らす、新しいモノを買わないことから、次第に消費する商品の輸送で使われるエネルギーにも着目し、地産地消の食生活に取り組む。そしてついには、電気なし生活にチャレンジしていくのだ。真っ暗な中、ローソクの明かりで夕食を食べたり、読書や会話を楽しむ。冬ともなれば家の中でもジャケットを着て寒さをしのぐ。さながらインドアのアウトドア生活だ。
この作品が魅力的なのは個人ではなく家族でチャレンジしているところだ。実は買い物中毒、カフェイン中毒、アウトドア大嫌いの奥さんは、夫の節約生活に対するストイックな姿勢に素直な不満も打ち明ける。夫の夢だけを叶えて、自分の第二子出産の夢は犠牲になっているとの告白は切実だ。だが、次第にこのチャレンジが家族にとって歓びをもたらすものになっていく様子は、何が本当の豊かさなのかを私たちにも教えてくれる。食材の出所にこだわり、実際に酪農家や農家まで足を運ぶことで、食に対する意識も高まり、生産者とコミュニケーションをとることもできる。今まで無意識で消費していたものに対して、必要か不必要か、必要ならば環境に負担をかけない摂取はどうすればよいか。今こそ皆が知恵を絞るべきときなのだろう。
もちろん、彼らの実験を皆が暖かく見守るわけではない。明らかに敵意を寄せるブログへのコメントや、批判的なメディア。そして自分たちが究極のエコライフを行う一方、妻が勤める出版社がアメリカ資本主義そのものの消費を推進させている矛盾をビシッと指摘されたりもする。しかし個人の活動にとどまらず、ノンストップで生活の仕方そのものの変換を迫られている私たちに問題意識を与えてくれるだけでも、大きな一歩と評価してもいいのではないか。真に豊かな生活とは何かのヒントが、この実践型ドキュメンタリーには散りばめられている。