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★白夜行
『白夜行』
〜心の悲鳴がこだまする傑作サスペンスの映画化〜

(2010年 日本 2時間30分)
監督: 深川栄洋  原作: 東野圭吾
出演: 堀北真希 高良健吾 姜暢雄 緑友利恵 栗田麗 
     今井悠貴 福本史織

2011年1月29日(土)〜 梅田ブルク7 なんばパークスシネマ 
アポロシネマ8 MOVIX京都 神戸国際松竹 MOVIX橿原

公式サイト⇒ http://byakuyako.gaga.ne.jp/














 ある密室のビルで起きた質屋店主殺害事件を境に、日陰の青春期を送ってきた容疑者の娘・唐沢雪穂と、被害者の息子・桐原亮司の壮絶な19年間を描くミステリー「白夜行」がテレビドラマ、舞台に続き実写映画化。先のドラマも舞台も未見だが、今回の作品は小説の世界観をうまく踏襲した重みのあるサスペンスに仕上がったと思う。監督は『半分の月がのぼる空』『60歳のラブレター』の新鋭・深川栄洋。

  この物
語の面白い所は、主人公2人の心理表現を省き、第三者の目を通して事件の真相を掘り下げていく点にある。19年前、第一の殺人が起こったとき、雪穂と亮司はまだ10歳だった。当時、事件は容疑者の死により一応の解決を迎えるが、担当刑事の笹垣だけは腑に落ちない思いを抱えていた。それから数年後。捜査が打ち切られたあとも真相を追い続けていた笹垣は、高校生に成長した雪穂の周囲で不可解な事件が相次いで起こっていることに気付く。そして、その陰にはいつも亮司の気配があることも…。容疑者と被害者、接点のない2人が裏でつながっている。思わぬ事実を突き止めた笹垣は、やがてあまりにも哀しい2人の過去を知るのだった。

 恵まれない家庭環境から心を閉ざし他人を欺きながら成長してきた雪穂と、彼女のために手を汚し罪を重ねてきた亮司。何が2人をしたたかな悪へと駆り立てるのか。動機となる幼少時代の悲劇は、同情しきれないほどに残酷な出来事であるが、だからと言って関係のない人間を地の底へ陥れていいとは限らない。よくよく考えてみると雪穂と亮司の犯罪はターゲットを定めた明確な復讐とは違い理不尽なものばかりだ。ずっとやわらかな微笑みを絶やさず、自分に有利なように運命をコントロールしていく雪穂は、悪女というよりも感情を失った人形のようでとても怖い。

 原作者いわく、この物語で描きたかったのは主人公たちの“理屈では説明できない負の感情”だという。確かに2人の孤独には心から光を奪われた者同士にしか理解できない闇がある。雪穂は他人の希望を略奪することでしか生きられず、亮司は雪穂に過剰に尽くすことで、ある者に変わって懺悔し続けていたのかもしれない。見る者の理解や共感を拒むあまりにも深い闇に絶句しつつ、最後に亮司が自らの肉体をもって仕上げた完全犯罪の切なさに心が震える思いがした。
 雪穂役に堀北真希は少々若すぎる気もするが、初の悪女役をどうにか踏ん張って演じていた。最近、儚くて影のある役はすべて彼に回ってくるのかと思うほど、繊細な演技の表現力はお墨付きの高良健吾。今回の亮司もはまり役で彼がスクリーンに出てくると一気に画面が引き締まる。その高良に引けを取らない存在感を示したのが亮司の子供時代に扮した今井悠貴だ。彼が登場シーンで見せる冷ややかな目つきには参った。どういう風に感情を込めたらあの目の演技ができるのか。黒目の奥が空洞になっているような彼の目が白夜行のすべてを物語っているといっても過言ではない。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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