topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『ブラック・スワン』
  作品紹介
新作映画
★ブラック・スワン

(C)
2010 Twentieth Century Fox.
『ブラック・スワン』(原題:BLACK SWAN)
〜極限状態に追い詰められた精神と肉体、
                美と衝撃のバレエスリラー〜

(2010年 アメリカ 1時間48分)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、
    バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー他
2011年5月11日(水)〜TOHOシネマズ日劇、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシネマ、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー
公式サイト⇒ http://movies2.foxjapan.com/blackswan/

 バレエの究極の名作、『白鳥の湖』をモチーフに、未だかつて見たことのない衝撃を放つ“バレエスリラー”が誕生した。優雅で繊細なホワイト・スワンと、野心に溢れ、悪を具現化するブラック・スワンの表裏一体の存在を最高のバレエで表現するバレリーナに扮するのは、ナタリー・ポートマン。極限状態に追い詰められた主人公の精神と肉体を体現した演技は、アカデミー主演女優賞を獲得するに相応しい迫力と見るものを釘付けにする美に満ちている。
 ニナ(ナタリー・ポートマン)は、ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するバレリーナ。プリマバレリーナ、ベス(ウィノナ・ライダー)の引退で、芸術監督のルロイ(ヴァンサン・カッセル)は新作『白鳥の湖』のプリマにニナを抜擢する。しかし、優等生タイプのニナには官能的で奔放な黒鳥の踊りが踊れず、苦悩は日々深まるばかり。新入りで黒鳥のように大胆で魅力的なリリー(ミラ・クニス)の存在も脅威に思えてきたニナは、重圧のあまり現実と幻想の境目の区別がつかなくなり、心の闇を彷徨いはじめる。
 表現者の世界で生きる人たちの葛藤、特に人間が持つ二面性をバレエで表現しなければならない究極の役どころに臨むニナの苦悩は、純粋にバレエに打ち込んでいた日常風景や周りからの愛ですら、自分に対する敵意あるものに変貌させてしまう。本番が近づき、緊張感が増す中で次から次へとニナの身に降りかかる不吉で血なまぐさい出来事は、正にホラー並みの恐怖体験だ。その一方で、自分と全く正反対の魅力を持つリリーに刺激され、嫉妬や恐れ、快楽を味わいながら白鳥そのものでしかなかったニナの見えない殻が剥がされていく。ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニスら“野性派”にもまれながら、ナタリー・ポートマンが脱皮する瞬間を心待ちにする自分がいた。
 クライマックスの『白鳥の湖』初日は、狂気すら感じる美の世界に魅了されることだろう。舞台上の優雅な世界と、舞台裏の緊迫した空気のコントラストが見事に表現されている。白鳥のごとき純真なバレリーナが、官能的な黒鳥の舞を踊りぬく姿は感動的かつスリリングそのものだ。『レスラー』で不屈の再生劇を描いたダーレン・アロノフスキー監督とナタリー・ポートマンが最高芸術の世界で描き出した究極の葛藤と自己覚醒の物語。見えない敵に悩まされている我々への興味深い示唆にも見えた。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって