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★あぜ道のダンディ

(C) 2011「あぜ道のダンディ」製作委員会
『あぜ道のダンディ』
〜カッコ悪くとも、ひとそれぞれのダンディ〜

(2011年 日本 1時間50分)
監督:石井裕也
出演:光石研、森岡龍、吉永淳、西田尚美、田口トモロヲ、山本ひかる、染谷将太、綾野剛、蛍雪次郎、藤原竜也、岩松了

2011年6月18日よりテアトル新宿ほか全国にて公開
2011年6月25日〜テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、
8月20日〜京都シネマ にて公開
公式サイト⇒  http://www.bitters.co.jp/azemichi/
 「ダンディ」とは“しゃれ者”“伊達男”の意。長い間外見にかまわなかった当方には無縁の言葉。だけど、誰をダンディと感じるかは百人百色。自分だけのヒーロー(ヒロイン)探しで、学生時代は当時全盛だったアラン・ドロンが“理想像”だった。「太陽がいっぱい」や「冒険者たち」、「サムライ」にシビれ、不可能と分かっていても生まれ変わったら、と夢見た。人それぞれのダンディ=ヒーローがいて、そこから人間のありようや生きざまが形成されるのではないか。今の理想像なき時代は不幸に違いない。
 昨年「川の底からこんにちは」で数々の賞に輝いた20代石井裕也監督の“ダンディ”には意表を突かれた。おん年50歳、「進むことも戻ることも出来ない」(主人公=光石研)と幼なじみの男2人のいささかサエない友情物語。2人はいじめられていた中学生時代から仲良しでいじめられながらも「カッコいい男になりたい」と誓い合う。
 で、ともに50歳になった2人はあまりパッとしないまま。宮田(光石)は妻を早く亡くし、息子(森岡龍)や娘(吉永淳)とも話が噛み合わず、家では無言。胃の調子が悪くガンかと疑っているものの、相談相手はやっぱり真田(田口トモロヲ)しかいない。子供たちに話せないのは「弱音など吐けない」という男のつっぱりだった。
 子供たちともコミュニケーションがうまく取れず(話が合わず)不器用で仕事までパっとしないのだが、それでもなお、子供たちの前で強がって見せる…、それが石井裕也の説くダンディというのだからなんと優しいことか。
 安月給なのに、子供たちには「心配するな。お金はいっぱいある」と強がり、息子と少しでもコミュニケーション取ろうと、2人用ゲームを買って来たり(機種が合わないが)、愚痴は真田の前でだけというのは確かに涙ぐましい努力だ。そんな不細工な生き方しか出来ない父親を、若者がダンディなどと見てくれるのか、はなはだ疑問でもあるが…。

 宮田がいつも冷やかす真田の帽子が“ダンディ”の象徴になっていて、ガンの疑いが晴れた後、真田から譲り受ける。ラストは共に大学入学した兄妹が、旅立つ前にオヤジを「カッコいい」と認め、真田に父親を託して去る。よく理解してるやないか。生きることは「カッコよく」とばかりは行かない。石井裕也のまなざしでオヤジたちが見られるなら、いうことはないのだが…。

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