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★アントキノイノチ

(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会
『アントキノイノチ』
〜繋がるイノチを感じて〜

(2011年 日本 2時間13分)

監督:瀬々敬久
原作:さだまさし『アントキノイノチ』(幻冬舎文庫)
出演:岡田将生、榮倉奈々、松坂桃李、鶴見辰吾、檀れい、
    染谷将太、柄本明、堀部圭亮、吹越満、 津田寛治、
    宮崎美子、
原田泰造
2011年11月19日(土)〜丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー
・記者会見レポート⇒ こちら
・公式サイト⇒  www.antoki.jp
※第35回モントリオール世界映画祭イノベーションアワード受賞作品
 さだまさしの原作『アントキノイノチ』が、『ヘヴンズ ストーリー』の瀬々敬久監督によって映画化された。死と対峙した若者2人を主人公に据え、遺品整理会社で働きながら彼らが生きることに意味を見い出すまでを繊細かつ感動的に描き出す。葛藤を乗り越えて成長していく主人公を演じる岡田将生と榮倉奈々の表情にも注目したい。
 高校時代に起こった事件がきっかけで心を閉ざしてしまった永島(岡田将生)は、父の勧めで遺品整理会社で働くことに。そこで出会った手首に傷のあるゆき(榮倉奈々)は、永島に仕事を教える一方、仕事中に涙ぐんだ永島のことを心配して飲みに誘い、少しずつ心の距離を縮めていく。ある日、傷の理由を永島に語ったゆきは、忽然と姿を消してしまい・・・。
 遺品整理の現場で、人間が生きた痕跡を目の当たりにしながら、故人とその家族の関係や、生きることの恥ずかしさまでも実感する永島とゆき。その一方で、自分の心を殺してしまった永島の過去が重なるように描かれる。岡田将生が演じる「人間が壊れる瞬間」の衝撃に、心の傷の深さを思い知らされる。いじめの事実を知りながら無関心を装う同級生や先生たちと永島の関係は、いみじくも他人に関心を持たない無縁社会の縮図に映るのだ。
 永島の心の痛みを受け止めたゆきも性犯罪の被害者であり、自殺を重ねた挙句、お腹に宿った命を失っていた。自分が生きていていいのか自問自答しながら、永島に心をさらけ出し、誰にも頼らず新しい仕事に打ち込むゆきを、榮倉奈々が決意に満ちた表情で演じている。ゆきとの関わりの中で、閉ざした心を開き、彼女に言葉を伝えようとする永島。「元気ですか」、シンプルに相手を思いやる言葉は、生きる一歩を踏み出した二人にふさわしい。
 2人が生を見つめ直すきっかけとなった遺品整理業。親族からの仕事の依頼が増えていることや、遺族の対応などを通じて、現代社会の抱える問題をリアルに浮かび上がらせている。親との断絶や無縁社会など、殺伐としていく家庭の姿が露わになる一方、家族を想いながら孤独に生きてきた人たちの生き様が静かに語られるのだ。生きている命と今は亡き命。その両方とも尊く、それらの命は繋がっていく。永島やゆきが生きることと懸命に向かい合う姿を通じて、人と人との繋がりや今生きている意味を改めて考えてみたくなった。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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