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★赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道

(C)NIPPON ANIMATION CO.,LTD.“赤毛のアン (tm)AGGLA”

『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』
〜鮮やかに甦る、アンと共に過ごしたあの頃・・・〜

(1979年 日本 1時間40分)
監督・脚本: 高畑勲
原作: ルーシー・モード・モンゴメリー
脚本: 千葉茂樹、磯村愛子、神山征二郎
音楽: 三善晃、毛利蔵人
美術: 井岡雅宏
場面設定・画面構成: 宮崎駿
配給:三鷹の森ジブリ美術館

2020年7月17日(土)〜渋谷シネマ・アンジェリカ 他
7月24日(土)モーニングショー〜テアトル梅田、
8月7日(土)〜京都シネマ、
8月21日(土)〜神戸・元町映画館 にて公開

公式サイト⇒http://www.ghibli-museum.jp/anne/top.html

 児童文学の中でもこれ程女の子の心を捉えた作品はないだろう。孤児という逆境にもめげず、その類い希な創造力を駆使して誠実に生きるアンの姿に、どれ程勇気をもらったことだろうか。カナダの女流作家ルーシー・モード・モンゴメリーによって1908年に出版された『赤毛のアン』は、100年経った今でも世界中の女性にエールを送り続けている。本作は、高畑勲監督が原作に忠実に全50話のTVシリーズにまとめた『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』の第1〜6話を劇場版として、1989年に再編集したものである。
 TVアニメは1979年に1年間に渡って放送されたが、その10年後劇場版として製作されたものの、公開はされなかった。『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』とは別に、グリーンゲーブルズへ来るまでのアンを描いた『こんにちはアンBefore Green Gables』は、2008年原作出版100周年記念にモンゴメリー財団の依頼でバッジ・ウィルソンが書いたもので、アンの出生とその生い立ちが感動的に描かれている。TVアニメ30周年記念として2009年に世界名作劇場第26作品として放送された。
 幸いなことに、今年1月から6月にかけてサンテレビで毎朝7時から、『こんにちはアンBefore Green Gables』と『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』を連続して見ることができた。TVアニメ『赤毛のアン』を一挙に堪能できたのだ。他にも、映画『赤毛のアン』(1986)、『続・赤毛のアン アンの青春』(1988)という実写版があるが、いずれも繰り返し見たくなる名作である。

  幼くして両親を亡くしたアンが、2軒の里親の元で子守や家事をさせられ貧しい環境におかれていた11年間を、明るくドラマチックに描いている。アンが身の回りにある物や自然の中の物を擬人化しては孤独に耐える姿は、本当に健気で愛らしく、アンの人格形成の過程がよく理解できる。

 そして、孤児院から憧れのプリンスエドワード島にあるカスバート家に引き取られ、カスバート家の家族として認められるまでを描いたのが本作である。アンは、農作業を手伝える男の子を望んでいたマシューとマリラの困惑振りを見て、ひどく嘆き悲しむ。しかし、プリンスエドワード島やグリーンゲーブルズ(カスバート家の別名)の美しい自然を前に、持ち前の創造力を働かせたお喋りを始めると、カスバート家に今までにない新しい空気が生まれる。そうして、兄妹はそんなアンを理解し、受け入れる覚悟を決める。

 当時、孤児を引き取るということは労働力として期待される処が多く、子供にとっては過酷な状況におかれることが多かったようだ。アンを孤児院へ送り返すというマリラに対し、「あの子に何かしてもらうんじゃなくて、わしらがあの子に何かしてあげられるんじゃないかな」というマシューの寛容な言葉に、ようやくアンを心から受け入れてくれる人が現れた、と心から嬉しく思った。その後、孤独なマシューとマリラの人生に笑いと感動と幸せをもたらすことになるアンの今後を思うと、本作のエピソードの重要性がよく理解できる。
 尚、『アルプスの少女ハイジ』の時と同じように、場面設定・画面構成を宮崎駿が手がけているのにも注目してほしい。豊かな色彩と丁寧な描写で、カナダ、プリンスエドワード島、グリーンゲーブルズ、憧れのアンの世界が鮮やかに再現されており、いつまでもその世界に浸りたい気分にさせてくれる。

 『 赤毛のアン』のファンは勿論、まだアンを知らない人も、この夏アンに会いに行きませんか?痩せてそばかすだらけの顔で赤い髪をした女の子。自意識過剰でおしゃべりで、大人を苛つかせることもあるけれど、優しくて誠実で責任感の強いアンを、きっと好きになると思います。
(河田 真喜子)ページトップへ
   
             
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