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木漏れ日の家で (美しく生きて〜アニエラと犬〜)
『木漏れ日の家で』 (美しく生きて〜アニエラと犬〜)
 
(Time to Die)

〜余りに美しすぎるモノクロ映像に放心!〜

( 2007年 ポーランド 1時間44分)
監督:ドロタ・ケンジェルザヴスカ
撮影:アルツール・ラインハルト
出演:ダヌタ・シャフラルスカ

2011 年6月11日(土)〜シネ・リーブル梅田、
近日〜シネ・リーブル神戸 にて公開
(配給:パイオニア映画シネマデスク)
・監督&撮影監督インタビュー⇒こちら
・公式サイト⇒
http://www.pioniwa.com/nowshowing/komorebi.html
 ファーストシーンからアニエラの性格が端的に示される。彼女は,デリカシーに欠ける女医の言葉に怒っている。そして,何ともチャーミングだ。これがラストでの彼女の選択に説得力を与える。監督のセンスの良さと女優の確かな演技力が伝わってきて,大いに期待が膨らむ。何より映画に相応しいシンプルなプロットが嬉しい。彼女が人生で最後の大きな選択をするまでが端的に描かれる。しかも,全編モノクロのカメラが実に素晴らしい。

  アニエラがブランコに乗ったときのカメラの揺らめきは,往年の名画を偲ばせる。また,夜,雨が降って稲妻が光り雷鳴が響くシーンがある。恐怖の前触れを示すホラー映画の定番のようだが,全く別の意味が与えられる。生きる力を与えてくれる嵐だ。アニエラは,雨の中に出て行き,両腕をVサインのように突き上げ,神々しい光に包まれる。彼女が息子の幼い頃を追憶するシーンが3回ほど描かれるが,愛犬フィラが彼女を現実に引き戻す。

 ポーランドでは,共産主義時代,同志を同居させる義務があったそうだ。時代は変わり,アニエラの住む邸宅から同居人が出て行った。息子ヴィトゥシュは,アニエラが愛着を示している邸宅を売り払おうとする。今では妻子のある息子と,アニエラが記憶する幼い息子とのギャップが大きい。彼女は,息子が隣家を訪ねている姿を見て,その裏切りに気付く。そのとき彼女が息子の幼い頃の写真を踏み付けて階段を下りていくシーンは,かなり怖い。

  息子と妻マジェンカとの間には娘がいる。このアニエラの孫は,邸宅を修理するより燃やせばいいと言い放つ。世代間の意識の違い,埋めようのない落差が浮き彫りになる。アニエラは,邸宅を維持しながら,そこに永住できる方法を選択する。孫が欲しがっていた指輪は,マジェンカに与えることにする。彼女の毅然とした態度が爽快だ。その後,カメラは,邸宅を離れて周囲の木々,そして空を映す。最後までアニエラの視線に徹して美しい。
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