topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
  『おにいちゃんのハナビ』
  作品紹介
新作映画
★おにいちゃんのハナビ
『おにいちゃんのハナビ』
〜 届け!ありがとうの気持ち 〜

(2010年 日本 1時間59分)
監督:国元雅広 
脚本:西田征史(「ガチ☆ボーイ」「半分の月がのぼる空」) 
出演:高良健吾、谷村美月、宮崎美子、大杉蓮、佐藤隆太

2010年9月11日より新潟にて先行上映
9 月25日(土)〜 シネリーブル梅田、シネマート心斎橋、T・ジョイ京都 他全国ロードショー

公式サイト⇒  http://hanabi-ani.jp/

 秋の夜空に大輪の華を咲かせる一発の花火――そこに込められた深い想いを辿っていくと、兄や両親を案じながら逝ったひとりの少女の、花火にも勝る輝きに満ちた笑顔が浮かんでくる。この物語は、2005年に国元雅弘監督が見た新潟震災後のドキュメンタリー番組の中の実話がベースとなっている。新潟県小千谷市片貝町で9月に開催される花火まつりでは、誕生祝や記念日、長寿祝や愛の告白まで、花火に想いを込めて個人がスポンサーとなって打ち上げられているそうだ。この秋、亡き妹のため兄が打ち上げた4尺玉花火は、溢れるような家族の愛情と生きることの貴さを、観る者の心を照らすような感動で教えてくれる。
  白血病を患うハナの家族は、5年前に東京から空気の綺麗な片貝町へ引っ越してきた。タクシー運転手の父とスーパーでパート勤めの母、そして、転校先の高校に馴染めず引きこもりになってしまった兄の太郎。久しぶりに退院したハナは、自分のせいで家族がバラバラになってしまったのを見てある決断をする。それは、まず太郎を部屋から連れ出して、バイト先を捜して働かせ、地元の「成人会」に入会させて“二十歳の花火”を打ち上げさせること。だが病気が再発して、家族揃って見る花火を楽しみにしながらハナは逝ってしまう。そして、妹のため自ら進んで花火を打ち上げようと奮闘する太郎の姿があった。
 本作は、兄妹の想いが新潟の風情に溶け込むように丁寧に描かれており、家族の絆の貴さと温もりを感じさせてくれる感動作だ。ハナが、太郎の新聞配達のバイトに付き合って毎朝二人乗り自転車で出掛けたり、入院中毎日お見舞いに来る太郎を照れながら迎えたりするシーンがいい。一方太郎の、クリスマスにお揃いの携帯電話を買ってハナにプレゼントしたり、「花火を見ると幸せになれる気がする」というハナのために4尺玉の大花火を打ち上げようしたりする姿は、優しさに満ち溢れている。
 ナイーブで内向的な太郎を演じた高良健吾と、病気と闘いながらも明るく健気に兄を励ますハナを演じた谷村美月の、深い想いを内包した瑞々しい演技が素晴らしい! 二人とも近年の活躍がめざましいことからもわかるように、最も信頼できる若手俳優だと言えよう。彼らの演技には説得力があり、醸し出す世界観にも嘘がない。この後撮った『ボックス!』でも共演した二人。高良くんは「迷いのない演技をする美月ちゃん」と語り、美月ちゃんは「高良くんの素直な演技に影響を受けた」とお互い評価しあっているようだ。

 退院して束の間の高校生活を愛おしむように、屋上で友達とお弁当を食べるハナの嬉しそうな笑顔が忘れられない。友達と遊んだり、恋をしたり、美しいものに出会ったりと、もっともっとやりたかったことが沢山あっただろう。太郎にも若者らしく生きることを楽しんでほしいと願ったハナの真心が、頑なな太郎の心をほぐし、家族の絆を再び取り戻すことができたのだろう。家族との確執や人間関係、勉強のことや仕事の問題等々、様々な悩みを抱えては絶望することもあるかもしれない。だが、生きていられるだけでもどんなに幸せなことか…「生きることを諦めてはいけない」と勇気付けてくれる作品だ。

【余談ですが・・・】
 父親を演じた大杉蓮は、タクシー運転手という役のため57歳にして初めて運転免許を取ったそうだ。母親役の宮崎美子と谷村美月とは『コドモのコドモ』でも親子を演じており、似たような雰囲気を持った者同士であることを楽しんでいたという。それにしても、宮崎美子さんは母親役が多い。『君が踊る、夏』『雷桜』『悪人』『書道ガールズ!』『デトロイト・メタル・シティ』『うん、何?』等々、いまや日本の母のシンボルに! 今回丸坊主になることも速攻で頭を剃ってしまった谷村美月ちゃん。思い切りがいいというか、確かに高良くんが言うように迷いがない女優さんですね。
(河田 真喜子)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって