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★しあわせの雨傘

(C) Mandarin Cinema 2010
『しあわせの雨傘』 (POTICHE)
〜魅せます! カトリーヌ・ドヌーヴ流“女の花道”〜

(2010年 フランス 1時間43分)
監督:フランソワ・オゾン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ、ジェレミー・レニエ

2011年1月8日(土)〜TOHOシネマズ シャンテ、新宿ピカデリーほか全国順次公開
関西では、1月8日(土)〜梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他
公式サイト⇒ http://amagasa.gaga.ne.jp/
 昨年からカトリーヌ・ドヌーヴ主演の映画がたて続けに公開され、ファンにとっては嬉しい限り。三世代の女性の生き方を、それぞれの立場と心情をサスペンスフルに綴った『隠された日記−母たち、娘たち−』。クリスマスに集う家族の人間模様と家族の絆を捉えた『クリスマス・ストーリー』。そして、本作では、フランソワ・オゾン監督が、エレガントな大女優の代名詞ともいえるドヌーヴに赤いジャージを着せて、『8人の女たち』路線のカラフルで軽快なコメディを作り上げた。しかも、彼女を一躍大スターにした『シェルブールの雨傘』(1964公開)ならぬ『しあわせの雨傘』という日本語タイトルまで付けちゃって!(原題は、「POTICHE」:お飾り用の首の細い壺のこと)  


 


 傘工場の創業者の娘スザンヌは、2人の子供が巣立った邸宅で、仕事も家事もさせてもらえず、亭主関白で独裁的な夫とセレブ生活を送っていた。ある日、工場で労働争議が勃発し、社長である夫が監禁されてしまい、かつてスザンヌの恋人だった共産党派の市長の力を借りて夫は救出される。だが、入院してしまった夫に代わり会社経営を任されることになったスザンヌ。お嬢様育ちでお飾り同然だった彼女に誰も期待していなかったが、その大らかな母性的包容力で労働者の意見を取り入れたり、新たなデザインや企画を考案したり、意外にも会社を好転させてしまう。社員は勿論、夫の愛人の秘書までも彼女の虜になっていき、いよいよ夫の立つ瀬が無くなる。

 舞台は1970年代の地方都市でのお話。女性の社会進出が徐々に高まりつつあった頃、ブルジョワジーの女性は才能があっても仕事や家事をさせてもらえず、いつも綺麗に優雅に過ごすべきとされてきた。現代の我々からすると何とも羨ましい限りだが、人間としてアイデンティティーを自覚することもなく、対等に扱ってもらえない疎外感もあったと思われる。社会や家庭の中で、自分の居場所や役立つ場所を持つということは、自分の存在感、すなわち生きるパワーを得られるということで、これは誰にでも必要不可欠なことなのだ。

撮影中のフランソワ・オゾン監督
 そんな真剣なテーマを、何とも軽やかに、カラフルでユーモアあふれる作品に仕上げているのがフランソワ・オゾン監督(『リッキー』『スイミング・プール』)。純粋無垢だと思われていたスザンヌが、意外にも情熱的で発展家だったりして、決して単純なハッピーエンドに終わらないのがオゾン流。ラストのスザンヌの表情に注目して見て頂きたい。

 
元々舞台劇だった『POTICHE』をオゾン監督が映画用に書き直す際、より共感と感動を得られるような物語にしたかったという。そのためには、「単なるお飾りの壺ではないのよ!」と深みのあるスザンヌを演じられる女優・カトリーヌ・ドヌーヴが不可欠。監督のオファーを喜んで引き受けたドヌーヴは、脚本やキャスティングなど製作にも係わり、本作を成功へと導いている。日頃から才能豊かな若手の発掘にも尽力しているドヌーヴらしい。
 かつての恋人・市長を演じたジェラール・ドパルデュー(『終電車』『グリーン・カード』等)はすっかりオデブになってしまってあまりロマンスは感じられないが、そこは彼のこと、ドヌーヴとの息もピッタリで、あの巨体がキュートに見えてくるから不思議。一方、敵対する夫を演じたファブリス・ルキーニ(『モリエール』『親密すぎるうちあけ話』等)に至っては、最も美しいフランス語を喋る俳優としてフランス国内で尊敬されているという。正にスランスを代表する名優たちが3本柱を形成して繰り広げられる意味深いコメディ。これは新春公開作品の中でも一番のオススメです♪

*同じオゾン監督の新作『RICKY リッキー』( 1/22〜梅田ガーデンシネマ他で公開)は、本作とは全く違う色彩でシリアスな雰囲気の作品ですが、根底には監督の優しさと遊び心満載の、とってもキュートな映画です♪乞うご期待!!!⇒こちら
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