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★愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

(C)2009Rai Cinema-Offside-Celluloid Dreamas
『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(VINCERE)
〜記憶に残すべき“ムッソリーニの妻”の存在〜

(2009年 イタリア,フランス 2時間08分)
監督・脚本:マルコ・ベロッキオ
出演:ジョヴァンナ・メッゾジョルノ,フィリッポ・ティーミ,
    ファウスト・ルッソ・アレシ,ミケーラ・チェスコン

2011年5月28日よりシネマート新宿ほか全国にて順次公開
6月11日(土)〜シネマート心斎橋、順次京都シネマにて公開
 イーダは、1907年ムッソリーニと出会い、1914年ミラノで再会する。そのころ、第一次世界大戦が勃発し、ムッソリーニは、社会党の機関誌の編集長を辞め、自分で日刊紙“ポポロ・ディタリア”を発行する。イーダは、全財産を処分し、ムッソリーニにその発行費を提供する。1915年に息子が生まれるが、蜜月は束の間に過ぎていく。ムッソリーニから「出て行け」と言われたときは、彼を睨みながら悲しみに耐えている。その目が印象的だ。
 ムッソリーニは、ナポレオンは国ではなく軍を率いただけで器が小さい、だれにでも一度は巡ってくる運をものにするんだ、とイーダに語る。そんな彼の目は、イーダには焦点が当てられていない。自分の将来に思いを馳せるように遠くを見ている。これに対し、イーダの視線は、いつもしっかりとムッソリーニに注がれている。その目には強い意志が宿っている。ムッソリーニの正妻をもねじ伏せてしまう迫力に満ちており、恐ろしいほどだ。
 カラー作品だが、光と影のコントラストが鮮やかだ。特に、精神病院に設けられた柵にはい上がったイーダを映したシーンが秀逸だ。降る雪の白さが彼女の孤高ともいえる純粋さを讃えているようだ。凛とした佇まいが迫ってくる。また、ムッソリーニが負傷して入院中の病院内で映されるキリストの受難シーンや、イーダが息子を思いながらチャップリンの「キッド」に見入るシーンなど、過去の映像が登場人物の心情描写に巧みに利用される。
 ムッソリーニは、当初、俳優によって演じられ、イーダの眼前に生身の人間として存在する。だが、やがてニュース映画の中でしか登場しなくなる。隔絶された世界に生きる2人の視線が決して交わらないことが端的に示される。イーダは、権力に屈することなく、時代に流されることもなく,ムッソリーニの妻であることに執着する。偏執症として精神病院に収容されても決して妥協しない。そのしたたかさは国家権力をも凌ぐほどであった。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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