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  『アレクサンドリア』
  河田充規バージョン
  江口由美バージョン
新作映画
★アレクサンドリア (河田充規バージョン)

(C)2009 MOD Producciones,S.L. ALL Rights Reserved.
『アレクサンドリア』 (原題:AGORA)
〜今,なぜヒュパティアの生きた時代なのか?〜

(2009年 スペイン 2時間07分)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、アシュラフ・バルフム他

2011年3月5日〜丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、
なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://alexandria.gaga.ne.jp/
 西暦400年前後,ローマ帝国の都市アレクサンドリア。そこにはヒュパティアという天文学者がいた。彼女の姿を通じ,今も昔も変わらない不寛容な人間社会が描かれる。後に対立することになるローマ提督オレステスとキリスト教主教シュネシオスもヒュパティアの講義を聴いていた。これらの実在の人物のほか,監督が創作した人物だと思われる奴隷ダオスが目を引く。彼は,ヒュパティアを慕っており,ラストで印象的な役割を果たす。
 当時,まだ新興宗教だったキリスト教をユダヤ教徒が迫害していた。侮辱を受けたキリスト教徒が報復に出て,両者の対立が激化する。その中で,ヒュパティアは学者としての立場を貫く。信念に生き,そのために命を落としたといえる。惑星の運行に関するエピソードが象徴的に挿入される。天動説が支持され,惑星は円軌道を運行すると信じられていた時代だ。ヒュパティアは,地球が楕円軌道を描いて太陽の周囲を運行していると考える。
 その考えは,彼女の死と共にこの世から姿を消した。ケプラーが惑星の軌道は円ではなく楕円であるという法則を唱えたのは17世紀だ。復讐や暴力の連鎖が一個人を呑み込み,その偉大な発見が闇に葬られてしまう。自らの首を絞めるような人間の愚かさが浮き彫りにされる。宗教は,人間にとって救いであると同時に,相容れない考えを完膚無きまでに排斥するという,二面性がある。人間が生きていくために衝突は避けられないのだろうか。

  ヒュパティアは,あらゆる現象を科学的に解明しようとして,異端というレッテルを貼られてしまう。ダオスは,キリスト教徒に捕らえられたヒュパティアを救い出すことができない。だが,そのときダオスが取った行動は,恐怖と暴力が渦巻く社会に対する精一杯の抵抗のように思える。それは,暗闇の中の仄かな灯りであり,優しさの表れだといえよう。このエンディングには,人間の抱える哀しさと平和への願いが込められているようだ。
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★アレクサンドリア (江口由美バージョン)

(C)2009 MOD Producciones,S.L. ALL Rights Reserved.
『アレクサンドリア』 (原題:AGORA)
〜伝説の女性天文学者が命がけで示した
                    “信念を貫く勇気”〜

(2009年 スペイン 2時間07分)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、アシュラフ・バルフム他

2011年3月5日〜丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、
なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://alexandria.gaga.ne.jp/
 『海を飛ぶ夢』で尊厳死を選ぶ男性の実話を描き、アカデミー賞外国語賞を受賞したアレハンドロ・アメナーバル監督。待望の新作は4世紀のエジプト、アレクサンドリアを舞台に、学問に身を捧げ、悲劇的な最期を遂げた伝説の女性天文学者ピュバティアの物語を壮大なスケールで現代に甦らせた。

 ローマ帝国末期、エジプトのアレクサンドリアで生徒たちに天文学を教えていた女性学者のピュバティア(レイチェル・ワイズ)は類稀なる美貌とリベラルな精神を持ち、弟子たちも密かに心を寄せていた。その頃勢力を伸ばしてきたキリスト教徒は、古代の神々を称える科学者たちと対立し、激しい闘いの末彼らの聖地であった図書館を奪回、キリスト教とユダヤ教のみが認められることに。だが、キリスト教徒による異教徒への仕打ちは激しさを増していくのだった。
 権力者に臆することなく、男にも心を揺らさず、誰にでも平等に凛とした態度で接するピュバティア演じるレイチェル・ワイズの清々しい美しさは正に女神のよう。また、神秘的な4世紀のアレクサンドリアの世界を完全に再現したセットの素晴らしさと共に、時には銀河からGoogle earthのようにアレクサンドリアをズームアップしていく視点がとてもユニークだ。徹底的に異教徒を糾弾していた戦乱の時代にも、ピュバティアは銀河の中の地球の動きに全神経を集中させる。彼女の視点の違いが映像に反映されているかのようで、離れた場所から冷静に眺める視点を見ている私たちも持つことができるのが斬新だ。
 変わらぬ信念を持ち続けたピュバティアとは対照的に、変わらなければ生きていけなかったのは、ピュバティアの奴隷であり生徒であったダオス(マックス・ミンゲラ)だ。キリスト教に改宗することで人生が変わると信じ、手に入れた自由でキリスト教の戦士として殺戮にも身を投じる。結局、愛するピュバティアを守れず無念さを味わうダオスの姿は、集団の中で自分の信念を貫ききれない人間の弱さと重なる。

 ピュバティアにとって自分を捧げるものは神ではなく、キリストでもなく、学問だった。権力に屈せず信念を貫く勇気に深く感じ入ると共に、異質なものを受け入れず抹殺する人間の愚かな歴史がそこにある。アレハンドロ・アメナーバル監督が4世紀の物語を現在に甦らせたのは決して偶然ではないだろう。
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