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★アジャストメント
『アジャストメント』(THE ADJUSTMENT BUREAU)
〜司られた運命を取り戻せるのは“愛”〜

(2011年、アメリカ、1時間46分)
監督:ジョージ・ノルフィ
出演:マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー・マッキー、ジョン・スラッテリー、マイケル・ケリー、テレンス・スタンプ

2011年5月27日〜TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー.
公式サイト⇒  http://adjustment-movie.jp/
(C) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED
 
 SF映画はCG全盛の今、最も愛されるジャンルだが、最高傑作として名高いのはスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」(68年)とリドリー・スコットの「ブレードランナー」(82年)が双璧だ。「2001年宇宙の旅」がアーサー・C・クラークの本格SF。「ブレードランナー」は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の映画化で、未来の人間とアンドロイドの微妙な関係を描き、その後のSFの基本となった。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の原作がフィリップ・K・ディックである。
  「2001年宇宙の旅」が宇宙に飛び出す人類をテーマにしていたのに対し、「ブレードランナー」は人間の内面に斬り込んだSFであり、「アジャストメント」もまた人間の運命を考察した内省的なテーマのSF。今、SFも宇宙よりも内面へと向かうのが主流といえる。

 型破りな上院議員候補デヴィッド(マット・デイモン)は選挙戦直前にスキャンダルが発覚して落選。その時、トイレで見知らぬ女エリース(エミリー・ブラント)が現れ意気投合する。彼は敗北スピーチで本音を告白、これが功を奏してベンチャー企業に役員として迎えられ、次期上院選の有力候補に再浮上する。 そのデヴィッドとエリースを会わせないよう邪魔する男たちがいた。超人的な能力で人間の運命を操作するアジャストメント・ビューロー(運命調整局)のエージェントたちだった。彼らは“運命の書”に従い、2人の邪魔をする。だが3年後、彼は偶然エリースに出会う。何度引き離されても出会ってしまう2人には古い運命の残骸で互いに惹かれ合っている。「人間の運命は決まっている」のか、愛は運命を変えることができるのか…。

 フィリップ・K・ディックにしては可愛くシンプルな物語。エリースはデヴィッドと接触するとダンサーとしての将来は断たれる、と脅されても、2人は調整局の手を逃れて街を逃げ惑う。扉を開けたらそこは自由の女神像の島だったりする。風変わりなSFという触れ込みながら「愛は運命より強し」といったハリウッドの定番に落ち着いた。「ブレードランナー」や「トータル・リコール」の衝撃的な驚きには及ばなかった。マット・デイモンが「インビクタス」とは一転、太め残しだったのはいつもの役作りか。
(安永 五郎)ページトップへ
   
             
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