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★サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―
『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』
〜夢の中の豊穣なイメージで遊ぶ〜

(2010年 チェコ 1時間48分)
監督・脚本:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:ヴァーツラフ・ヘルシュス、クラーラ・イソヴァー、
    ズザナ・クロネロヴァー

2011年10月8日(土)〜第七藝術劇場、京都シネマ、
10月15日(土)〜元町映画館 にて公開
公式サイト⇒ http://survivinglife.jp/
 チェコ・アニメの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルの5年ぶりの長編。中年サラリーマンのエフジェンは、夢の中で若く美しい女性に出会い、一目惚れ。退屈な日常から脱け出し、夢の中に逃避するエフジェン。そこに自分そっくりの男や息子まで現れ、夢の謎をつきとめようとする…。本作は、実写と写真を巧みに組み合わせたカットアウトアニメ(切り絵アニメ)。シュルレアリスム(超現実主義)を追求し、独特なイメージの映像で観客を魅了してきた監督。本作でも、エフジェンが行ったり来たりする夢の世界だけでなく、現実世界でも、次々と奇抜な人物や物を、脈絡なく登場させては、観客をおもしろがらせたり、驚かせたりして、本領を発揮。

(c)ATHANOR
 冒頭、監督自身が登場し、前口上を述べる。人を食ったような話に、いきなり呆気にとられる。監督のつくりあげるシュルレアリスムの映像世界では、物の大きさも現実とまるで違い、建物の窓のあちこちからやたら大きな手だけが出てきて、拍手をしたり、登場人物をつまみあげたりする。人間の頭をしたニワトリが現れたり、いろいろなイメージ、音、動きにあふれている。人の頭がいきなり水道の蛇口に変わるのも、水が出るのと言葉を発するのとでどこか似ている気にもなり、おもしろい。人間大のりんごが建物のドアから道に転がりだすシーンなど、音もユニークだ。

(c)ATHANOR
 美女に会うために、夢をみようと懸命になり、まるで胎内に帰っていくようにして眠りにつき、夢の世界へ通い続けるエフジェン。自分の欲望に正直な姿は、ストレスを抱えて生活に追われている現代人からみれば、羨ましいかぎりだ。奇抜なイメージの連鎖に、次に何が登場するのか期待する人もいれば、ついていけなくなって溺れかける人もいるかもしれない。でも、3拍子のワルツのテーマ音楽に身をゆだね、夢うつつの世界をさまよううちに、いつしか観客もまた、夢という大海に浮いている自分に気付くにちがいない。そして、大きな緩やかな波にふうわりと身体が持ち上がり、波が去った時には、越えられなかった壁を越えていることもあるかもしれない。あるいは、映画のイメージの中に、自分自身気付かなかった欲求やトラウマを見つけるかもしれない。
  ラスト、残っていた最後の1つのパズルのピースが、ぴたりとはまるかのようなおさまり具合に、思わず意外さと同時に懐かしさを感じ、ちょっぴり胸が熱くなった。
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