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クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち(河田充規バージョン)

(C)2011 ? IDEALE AUDIENCE ? ZIPPORAH FILMS, INC.TOUS DROITS RESERVES ALL RIGHTS RESERVED.
『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』
(CRAZY HORSE)
〜ただ見惚れるしかないパリの官能的スポット〜

(2011年 フランス=アメリカ 2時間14分 R15+)
監督・音響・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:フィリップ・ドゥクフレ(振付&演出),
    アンドレ・ダイセンバーグ(総支配人),
    アリ・マフダビ(美術監督),
    フィフィ・シャシュニル(スタイリスト),
    クレイジーホースダンサーたち
2012年6月30日(土)〜Bunkamura ル・シネマ、
7月28日(土)〜シネ・リーブル梅田、
9月1日(土)〜シネ・リーブル神戸、
9月22日(土)〜京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.crazyhorse-movie.jp/
 影絵という白と黒だけの変幻自在の世界で幕を開け,エンディングではキスして抱き合った2人が鳥になって飛んでいく。「シザーハンズ」で使われていたダニー・エルフマンの音楽がそこに流れる。影絵でサンドイッチされた本編は,ファンタスティックな光景が広がっていて,我々の目と耳を通して心を豊かに彩ってくれる。程よい間隔で小休止のように挟まれるパリの風景は,ゆるりと心地良くクレイジーホースを包み込んでいるようだ。
 フレデリック・ワイズマン監督は,パリ・オペラ座のバレエに次いで,クレイジーホースのショーを取り上げた。そこは,アラン・ベルナルダンによって1951年に創立された,女性の美を追求する官能的なスポットだ。撮影は2009年の春から秋にかけて約10週間にわたって行われたという。そのとき,演出と振付にコンテンポラリー・ダンス界の第一人者フィリップ・ドゥクフレが起用されていた。その魅力を存分に味わえる作品となっている。
 最初の“ベビー・バンズ”は,コミカルに動く女性7人のヒップに水玉が映るポップな作品だ。次に,リングの中の2人の女性が光でペインティングされる色彩のマジックに酔わされる。宇宙船をイメージした造形の中で無重力空間を遊泳するようなダンスは,近未来の雰囲気を漂わせる。“アップサイド・ダウン”は,暗闇の中に手首や腕が上下対称に水中から突き出るように浮かび,シンクロナイズド・スイミングの興趣があり,幻想的だ。

 スタッフの衣装や美術,照明へのこだわりはダンサーをきれいに見せたい,最高の舞台を作りたいという思いに支えられている。観客を迎える準備の様子も映される。男性ダンサー2人の動きが見事にシンクロするのは微笑ましい。オーディションのシーンは,ダンサーを選ぶ側の視点が描かれて興味深い。ボリショイ・バレエのNG集のような映像を見ながら笑い転げるダンサーたち。そのリラックスした姿を捉えた監督のセンスには脱帽だ。

 黄,緑,赤の3色のスクリーンに映し出されるダンサーのシルエットの美しさに魅了される。“エヴォリューション”では,2人のダンサーの身体に豹柄が浮かび上がり,野獣同士の戦いが激しくもエレガントに表現される。ロープを自在に操るソロはアクロバットのようだ。フィナーレは,断片的にリハーサルを見せられてきた“DESIR”だ。クレイジーホースはパリの華,と歌われる曲が耳に残り,キラキラ光る星の輝きが冴えている。

(河田 充規) ページトップへ

クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち(江口由美バージョン)

(C)2011 ? IDEALE AUDIENCE ? ZIPPORAH FILMS, INC.TOUS DROITS RESERVES ALL RIGHTS RESERVED.
『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』
(CRAZY HORSE)
〜ようこそ、世界一刺激的なショー体験の特等席へ!〜

(2011年 フランス=アメリカ 2時間14分 R15+)
監督・音響・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:フィリップ・ドゥクフレ、フィフィシャシュニル、
    クレイジーホースダンサー他
2012年6月30日(土)〜Bunkamura ル・シネマ、
7月28日(土)〜シネ・リーブル梅田、
9月1日(土)〜シネ・リーブル神戸、
9月22日(土)〜京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.crazyhorse-movie.jp/
 これを特等席と言わずして何と呼べばいいのだろう!眩い照明の中、研ぎ澄まされたダンサーの肉体が独創的なショーの中で華麗に舞い、観る者を魅了してやまない。組織や制度を対象にしたドキュメンタリーを独特の手法で撮り続けている巨匠、フレデリック・ワイズマン監督。本作は『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』(1995)、『パリ・オペラ座のすべて』(2009)、『ボクシング・ジム』(2010 ※2011「フレデリックワイズマンの全て」で上映)、に続く、監督自身“踊り”の映画と位置付けている作品だ。それと同時に、“肉体”を様々な視点から切り取ってきたワイズマン監督にとっては、クレイジーホースに密着することで、肉体をショービジネスに提供しているという観点から切り取っていると言えよう。
 世界で一番美しいヌードショーを繰り広げるパリの老舗ナイトクラブ「クレイジーホース・パリ」で90日間撮影し、編集に1年を費やした本作は、いみじくも影絵から始まり影絵で終わる。ダンサーたちの体がまるでキャンパスであるかのように映し出される数々の鮮やかな照明や、トリッキーなダンス、宝塚歌劇を思わせるダンサーが揃ってのレビュー、そして振付師フィリップ・ドゥクフレによる最新ショー「DESIRS」まで見事な構成で描写している。
 ショーの舞台裏にも密着、昼間新しいショーの練習を重ねるダンサーたち、幕間の稽古をする男性タップダンサー、熱気を帯びたオーディション、フィリップ・ドゥクフレや衣装のフィフィ・シャシュニルらがクレイジーホースのオーナーに運営体制について訴えるくだりまでも含まれ、煌びやかなショーの裏に隠された組織としての問題も赤裸々に映し出す。また、出番待ちの楽屋で慌ただしく準備する傍ら、ショーの様子をモニターで観ながら批評しあうダンサーたち等、熱気に満ちた光景の数々が挿入されているのも魅力的だ。

 クレイジーホース近隣のパリの街並みにも時折目をやりながら、日夜たゆまぬ努力を繰り返し、最高のショーを送り出すナイトクラブの全て。ワイズマン監督ならではの、観察者の姿を消し去り、一切テロップを入れず、真の姿を追求したエネルギーみなぎる作品は、日本にいながらにして、極上のショーを堪能できるぜいたくな時間を与えてくれた。ダンサーたちの肉体から溢れる躍動感がスクリーンからほとばしるのを、ぜひ体感してほしい。

(江口 由美) ページトップへ

(C)2011 ? IDEALE AUDIENCE ? ZIPPORAH FILMS, INC.TOUS DROITS RESERVES ALL RIGHTS RESERVED.
   
             
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