西岸良平原作の大ヒットシリーズ第3作。昭和39年、東京五輪の年、高度経済成長へ日本がばく進を開始する時代に、古き良き三丁目の面々はどうしているのだろうか?
という興味があった。山崎監督も製作動機にあげていたが、こんな懐かしい人々をもう一度見たい、と思うのがシリーズの特徴、強みであり良さだろう。
CG、特撮お手のものの山崎監督なら当然、次は3D。SFやメカニカルなCGはもう食傷気味だが、ノスタルジーな街並みはとりわけ団塊世代には懐かしいし、若い世代には新鮮な発見があるのではないか。シリーズ第1作(05年)が動員284万人、興行収入35億円、第2作(07年)が動員390万人、興収47億円という人気ぶりは単なるノスタルジーだけでは説明できない。
冒頭、三丁目の子供たちがプロペラ機を飛ばすと、カメラも同じように舞い上がり、完成したばかりの東京タワーを視界に入れたと思うとカメラもなめるように上昇し、てっぺんまで上って真上から俯瞰する。圧倒的な一連のシーンは山崎監督が得意とするCGの威力。“到底不可能”に思える映像を見て、一気に1964年(昭39)にタイムスリップ出来る。懐かしい三丁目の風景をはじめ、いっとき閉塞した現代を忘れて時代をさかのぼれる、これが人気の秘密。今作の目標はタイトルにちなんで過去最高の「64億円」だそうな。
小説家・茶川竜之介(吉岡秀隆)はヒロミ(小雪)と結婚し、養子の淳之介と仲良く暮らしているが、ベビー誕生を控えているのに新人作家に人気を奪われ焦り気味。
家の前の鈴木オートの鈴木社長(堤真一)と妻トモエ(薬師丸ひろ子)は、カラーテレビを買って浮かれ気味だが、住み込み従業員の六子(堀北真希)が最近、遊び人の医師(森山未來)と付き合い始めていると聞いて気が気じゃない。
この2家族の“子供(養子と住み込み従業員)”の顛末が物語の骨子だ。竜之助は淳之介に「小説なんて俺みたいにみじめな暮らししか送れない。東大へ行け」と強引にはっぱをかける。だが、竜之助の憂うつの原因である強力な「新人作家の正体」を知ってが
く然とする。
一方、六子は初恋の医者が大変な遊び人と聞いてしょげ返るが、ヒロミから「自分を信じなさい」と言われ、医者に誘われて一泊旅行に出かける…。鈴木社長は当然、怒り狂う。東大を目指す淳之介はどうする?
六子の恋の行方は? というところでバレーボールの五輪決勝(日本対ソ連)が始まり、そんなあわただしい真っ最中にヒロミの陣痛が激しくなる…。
「三丁目」シリーズにずっと出演しているやもめ医師(三浦友和)が今度もポイントで登場、みんなの前で話す言葉が印象深い。「今はみんな上ばかり見ている。だけど、本当のしあわせって何なのか」と。
ヒロミは竜之助と結婚して、貧しくとも「幸せ」と感じ、トモエも親代わりとして六子を嫁に出す決意をする…。 |