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★127時間

(C) 2010 Twentieth Century Fox
『127時間』 (127HOURS)
〜躍動感溢れるサバイバル体験を目撃せよ!〜

(2010年 アメリカ=イギリス 1時間34分)
監督:ダニー・ボイル
原作:アーロン・ラルストン『127時間』(小学館文庫)
出演:ジェームズ・フランコ

2011年6月18日〜TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ二条、シネリーブル神戸他全国東宝系ロードショー
公式サイト⇒ http://127movie.gaga.ne.jp/

 陸の孤島のような場所で、たった一人身動きがとれなくなった主人公。ほぼ一人劇のような、描きようによっては地味で、重いサバイバル劇になりかねない題材を、あの『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルが驚くばかりの躍動感に満ちた作品に仕立てあげた。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジェームズ・フランコの熱演にも注目だ。

 オープニングから、主人公アーロンが事故現場のブルー・ジョン・キャニオンにたどり着くまでを、分割した画面でフラッシュのように疾走感たっぷりに魅せ、その中でごく普通のアウトドアと音楽が好きな、マイペースの青年という主人公像を浮かび上がらせていく。『スラムドッグ$ミリオネア』のサントラを担当したA.R.ラフマンが皮肉な運命を強い精神力で乗り切るストーリーにぴったりのハートに響く力強いナンバーで後押しする。
 誰にも行く先を告げず、たった一人での気ままなアウトドアが一転、落石で腕を挟まれ、谷底から一歩も動けなくなってしまうアーロンを演じるのはジェームズ・フランコ。持ち前のスマートさで悲壮感を前面に出さないのがいい。立ちはだかる大自然、その中で一人迫りくる皮肉な運命に抗おうとする青年の姿を、ダイナミックな映像とエンターテイメント要素を盛り込みながら表現。ビクとも動かない岩を除けようとする涙ぐましい努力や、自分の尿までも飲むようなシーンは、もっと泥臭く悲壮感が漂うかと思いきや、逆に人間の持つ生命力の凄さに圧倒される。
 生命存続のボーダーラインとなる127時間が近づくにつれ、極限状態で思い出される愛する人々への伝えられなかった気持ちのフラッシュバックや、自己撮影で胸中を明かすなど、アーロンの心理面での揺らぎや葛藤を豊かな語り口で表現している。鳥たちや陽が差し込む様子で時を知り、静かな一人だけの時間を自分の人生を振り返る時間にしたアーロンを見ていると、逆に人間本来が持っている感覚が甦ってきているようも見えるのだ。
 生きて戻るための究極の選択、それを実行するあまりにも生々しい衝撃的なシーンは直視できなかったが、それだけに絶体絶命の状況から自らの力で命をつないだアーロンの喜びに満ち溢れた表情は忘れられないものとなった。ダニー・ボイル監督が人間の生きる力に真っ向から挑んだエンターテイメント作品、まさしく新世代サバイバルストーリーと呼びにふさわしい勇気と精神力にみなぎっている。
(江口 由美)ページトップへ
   
             
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