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『エジソンズ・ゲーム』

 
       

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(C)LANTERN ENTERTAINMENT, LLC (C)2019.ALL RIGHTS RESERVED.

       
作品データ
原題 The Current War: Director’s Cut  
制作年・国 2019年 アメリカ
上映時間 1時間48分
監督 監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン(『ぼくとアールと彼女のさよなら』「glee/グリー」シリーズ) 脚本: マイケル・ミトニック 製作総指揮: マーティン・スコセッシ
出演 ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、トム・ホランド、ニコラス・ホルト 、キャサリン・ウォーターストーン、タペンス・ミドルトン、マシュー・マクファデン
公開日、上映劇場 TOHOシネマズ梅田他 近日公開

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~直流VS交流の「電流戦争」、その熾烈な舞台裏~

 

蓄音機(フォノグラフ)、白熱電球の実用化、映画撮影機(キネトグラフ)、1人用映写機(キネトスコープ)、スクリーン投影式映写機(ヴァイタスコープ)、電話、株価表示機……。アメリカの発明王トーマス・アルバ・エジソン(1847年~1931年)は1300ほどの文明の利器を生み出し、1000以上もの特許を取得しました。


でも、すべてが順調に実現できたわけではありません。失敗を積み重ね、たゆまぬ努力の末に得られたものばかり。「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」の言葉はあまりにも有名ですね。もちろん、挫折もいろいろ味わいました。その中で最大のものが「電流戦争」でした。比較的よく知られた事実ですが、本作はエジソンの知らない面を浮き彫りにしながら、その舞台裏を仔細に描いています。


edisonsgameメインb.jpg今から130年ほど前、電気の普及を図っていたエジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)は直流電気を推し進めます。それに対し、実業家のジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は、オーストリア移民の科学者ニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)が研究してきた交流電気をプッシュします。これが「電流戦争」。これからの電気産業の方向性を決定づける歴史的な出来事でした。


ぼくはゆめゆめ電気に詳しくありませんが、直流と交流の違いはざっとこんな感じです。電気が一方向しか流れない直流は、扱いやすいけれど、大きな発電機が必要で、短い距離しか送電できません。一方、電気の向きが周期的に変わる交流は、扱いにくい反面があるものの、小さな発電機で遠くまで送電できます。


edisonsgameサブ2.jpgどちらも一長一短があるとはいえ、コスト面で圧倒的に分のある交流が世界中で定着していきました。日本では最初、直流でしたが、すぐに交流に切り替えられました。つまり、「電流戦争」の勝者は周知の事実なので、本作ではその熾烈なプロセスを見せているわけです。


エジソンがひじょうに傲慢、かつ狡猾な人物に描かれています。手段を選ばず、何が何でもごり押しで物事を進めるやっかいな男です。「世界の発明王」の異名を取るだけに、めちゃめちゃプライドが高いのでしょうね。ライバルの弱点を見つけると、容赦なくそこを突いてきます。映画の中では、交流電気が感電死しやすいことをマスメディアに吹聴し、スキャンダラスにウェスティングハウスを追い詰めていくシーンがありました。うーん、嫌なヤツですわ。


edisonsgameサブ1.jpg野望の塊といったエジソンの役どころは、ぼくのイメージからすると、クールな面が強いイギリス人俳優のカンバーバッチではなく、レオナルド・ディカプリオです。アメリカ資本主義の権化ともいえるエジソンはやはりアメリカ人俳優に演じてもらいたかった。それにディカちゃんの方が断然、脂ぎってますからね。かといって、カンバーバッチの演技にNGを出しているわけではありませんので、どうかお含みおきを~(笑)。


edisonsgameサブ4.jpgそんなエジソンに対し、ウェスティングハウスはジェントルマンそのもの。思いやりがあり、常に冷静です。ちょっと美化されているようにも思えますが、おそらくこういう御仁だったのでしょう。わめきながら姑息的な手法で攻めてくるエジソンを、悠然と迎え撃つウェスティングハウス。何だか子供と大人の関係みたいで、笑ってしまいます。


あまり表沙汰になっていないエジソンのプライベートな面が刺々しいバトルの中で潤滑油になっていました。夫を献身的にサポートする妻メアリー(タペンス・ミドルトン)の何といじらしいこと。もっと夫婦の絡みを見せてもらいたかった。エジソンに遠慮なく小言をぶつける秘書インサル(トム・ホランド)ももう少し際立たせてもよかったかもしれません。


edisonsgameサブ3.jpgちょっと驚いたのが、死刑執行の際に使われる電気椅子です。これが「電流戦争」に登場するとは思わなかった! まさに電気椅子の誕生時期だったんですね。このくだり、なかなかスパイスが効いていました。「実験材料」になった死刑囚が何とも気の毒でしたが……。


エジソンは見極めが早いようで、「電流戦争」の終結後、ただちに別の新しいモノへと没頭していきます。それが映画でした。ラスト、その世界に足を踏み入れる姿が映されていました。スクリーン投影式の映写機では、フランス・リュミエール社のシネマトグラフに対し、エジソンがヴァイタスコープを引っさげて戦いに挑んでいきます。この人、よくよく「争い」がお好きと見えますね。


edisonsgameサブ6.jpg本作では、エジソンのマイナス面がクローズアップされていましたが、社会に与えた功績は絶大です。「電流戦争」の最中に、エジソンが設立した電気会社エジソン・エレクトリック社が他社との合併によってゼネラル・エレクトリック社へと名を変え、発展していきます。このゼネラル・エレクトリック社こそ、現在、世界最大の総合電機メーカーです。


最後に……。ぼくは拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社、2016年)を執筆する上でエジソンのことを徹底的に調べました。はっきり言って、がめついお人です。特許取得のために数えきれないほど訴訟を起こしています。ある意味、科学者というより商売人といった方がふさわしい人物かもしれません。


ところが映画を観ると、「金には興味がない。誰よりも先んじたい」という姿勢を貫くエジソン像が前面に出ていました。ありゃ、全然ちゃうやん。このギャップがすごく刺激的でした。果たして、素顔はどちらかな?


武部 好伸(エッセイスト)

公式サイト⇒ https://edisons-game.jp/

(C)LANTERN ENTERTAINMENT, LLC (C)2019.ALL RIGHTS RESERVED.

配給: KADOKAWA

 
 

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