「菅田将暉」と一致するもの

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『銀河鉄道の父』  特製グッズ プレゼント!
 

◆『銀河鉄道の父』特製扇子:1名様   ◆『銀河鉄道の父』特製手ぬぐい:2名様


 

◆提供:キノフィルムズ

◆締め切り:2023年5月5日(金・祝) 

◆公式サイト:https://ginga-movie.com/

◆公開日:2023 年 5 月 5 日(金・祝)~全国ロードショー



 

役所広司、菅田将暉、森七菜といった名優たちが集い、監督は、『八日目の蟬』『いのちの停車場』など、日本中に感動を巻き起こしヒット作品を生み出してきた成島出が務める映画『銀河鉄道の父』が、2023 年 5 月 5日(金・祝)に公開します。


父・政次郎と長男・賢治の、人間味あふれる親バカ・ダメ息子のユーモアと苛烈な闘いの日々。 ©2022「銀河鉄道の父」製作委員会日本のみならず世界中の“人の心”に生き続ける宮沢賢治。没後 90 年となる 2023 年(1896 年 8 月 27 日生―1933 年 9 月 21 日没)、不安定で激動の時代に、人の心に生きる力を与えてくれる、映画史に残る一本が誕生いたします。
 


【STORY】

宮沢賢治の父・宮沢政次郎。父の代から富裕な質屋であり、長男である賢治は、本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は適当な理由をつけてはそれを拒む。学校卒業後は、農業や人造宝石、宗教と我が道を行く賢治。政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。

やがて、妹・トシの病気を機に、賢治は筆を執るも―。
 

出演:役所広司 / 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 / 坂井真紀 / 田中泯
監督:成島出
原作:門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫)
脚本:坂口理子 音楽:海田庄吾
主題歌:いきものがかり「STAR」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:木下グループ 制作プロダクション:キノフィルムズ / ツインズジャパン
配給:キノフィルムズ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
コピーライト:©2022「銀河鉄道の父」製作委員会
公式サイト:https://ginga-movie.com/

2023 年 5 月 5 日(金・祝)~全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

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cinefes2023-murakami-240-1.JPG今年で通算47周年を迎える大阪の映画ファンによる映画まつり、《おおさかシネマフェスティバル》(実行委員長:高橋聰)が、3月5日(日)、ホテルエルセラーン大阪5階のエルセラーンホールで開催された。


メインイベントとなる午後の表彰式では、総合司会の浜村淳が登壇。デビュー30周年で初の受賞となった主演男優賞の村上淳(『夕方のおともだち』)は、浜村に自ら距離を縮めるパフォーマンスで先制パンチ。地元大阪での受賞に「心から感謝申し上げます」と感激の表情を浮かべた。廣木監督とは13本のタッグを組み、ようやく主演作でマゾヒスティックな性癖が醒めかかっている男という難役にチャレンジ。「撮影でSMに目覚めればラッキーぐらいに思って臨んだが、痛かっただけ」とハードな撮影を振り返った。

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『ハケンアニメ!』で主演女優賞を受賞した吉岡里帆は、映画まつりの盛り上がりに驚いた様子。浜村も同じ京都の太秦出身ということで、吉岡への注目度の高さを伺わせた。撮影では、監督の意見とプロデューサーの意見が食い違っているときに難しさを感じたという吉岡。関西出身の受賞者に囲まれ、笑顔が絶えなかった。

 

 


 

 

 

 

 

 

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菅田将暉とW主演男優賞を受賞した『火花』でも会場を大いに沸かせた桐谷健太は、『ラーゲリより愛を込めて』で見事、助演男優賞を受賞。「監督、キャスト、一緒にシベリアに抑留された役者さんたちの力なので、共に分かち合えたらうれしい」と一気に挨拶。撮影しているときに映画の世界観に入り込みすぎて、絶望を感じ、セリフが言えなくなりそうになったこともあると明かしながら、「少しでも戦争が嫌だとか、幸せな方がいいと思ってもらえれば。それが演じる中の心の糧だった」と、浜村とのお笑いトークバトルの間を縫って、映画に込めた思いを語った。

 


 

 


 

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新人賞、助演賞、そして昨年の主演女優賞と当映画祭常連俳優といえる尾野真千子は、『サバカン SABAKAN』で、今年も助演女優賞に輝き「こういう賞は何度いただいても嬉しいもので、昨年に引き続き2度目。嬉しいです!」と喜びを表現。家中トロフィーや賞状だらけでは?という浜村に「そうですよ」とニヤリ。最近のオファーは100%母親役だというが、「番家兄弟で息子役をしていたので、演じる上ではちょっとラクだった」と余裕の笑みを浮かべた。

 


cinefes2023-sabakan1-500-2.jpg新人男優賞の番家一路と原田琥之佑は、共に受賞作『サバカン SABAKAN』が映画初出演。客席に本作の金沢知樹監督がいることを意識しながら、「金沢監督がいるので緊張しなかった」「ここに立てているのは金沢監督のおかげ」と、監督への感謝の言葉を口にした二人。途中からは監督も壇上に上がる一幕もあり、撮影さながらの和気藹々とした雰囲気に。浜村からも「感性豊かな演技」と大絶賛だった。


cinefes2023-arashi-240-1.JPG新人女優賞を受賞した『マイスモールランド』の嵐莉菜は、「5カ国のミックスルーツを持つ自分が経験したことのある葛藤が脚本に描かれていたので、早く現場に入って撮りたいと思った」と本作の出会いを語り、川和田恵真監督との受賞に喜びいっぱいの表情を浮かべた。また新人監督賞を受賞した川和田恵真監督も、「社会的な面がある一方、高校生の主人公とその家族の視点で描いた青春映画として楽しんでいただける作品。主演の嵐さんとは、ミックスルーツとして日本で生きて感じてきたことを共に話し合った中で、彼女ならこの作品を一緒にやっていけると感じた」と嵐の起用理由を語り、内容面など様々な撮影のサポートを行ったクルド人コミュニティの方々に感謝の意を表した。


監督賞は、『夜明けまでバス停で』の高橋伴明監督。「制作側からの過酷な条件をスタッフ、キャストが受け入れ、努力、その熱い想いがこの賞につながった」と挨拶。封印してきた怒りを解いて作ったという本作が高評価を受けたことで、次への意識が高まった様子で「この機会に浜村さんを見習って、生涯現役をやってみようと思った。次回作は沖縄問題に取り組みたい」と力を込めた。脚本賞の梶原阿貴も、「社会的な背景がある事件で、社会性と娯楽性のバランスをとるのが難しかった」と苦労を語る一方、実在の事件を元にはしているが映画の魔法で彼女を死なせないという選択をしたという。「(映画で描写するなら)若い女性の方がいいという風潮には抗いたい」と旧態依然とした映画界の女性描写の風潮にも異議を唱えた。


新人監督賞の山﨑樹一郎監督(『やまぶき』)ワイルドバンチ賞の辻凪子監督、大森くみこ弁士(『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』)も登壇。地元関西での受賞を喜んだ。


他、2022年度の受賞結果は以下のとおり。


【2022年度・個人賞】

◆日本映画

主演男優賞 村上淳           『夕方のおともだち』
主演女優賞 吉岡里帆        『ハケンアニメ!』
助演男優賞 桐谷健太        『ラーゲリより愛を込めて』
助演女優賞 尾野真千子       『サバカン SABAKAN』
新人男優賞 番家一路        『サバカン SABAKAN』
              原田琥之佑                 『サバカン SABAKAN』
新人女優賞 嵐莉菜           『マイスモールランド』
監督賞   高橋伴明        『夜明けまでバス停で』
脚本賞   梶原阿貴                  『夜明けまでバス停で』
撮影賞   斉藤幸一        『とんび』
音楽賞   大島ミチル       『サバカン SABAKAN』
新人監督賞 川和田恵真       『マイスモールランド』
                  山﨑樹一郎               『やまぶき』
ワイルドバンチ賞          『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』     
                                                       監督:辻凪子  活動弁士:大森くみこ 

◆外国映画

監督賞   マイク・ミルズ     『カモン カモン』
主演男優賞 トム・クルーズ     『トップガン マーヴェリック』
主演女優賞 エミリア・ジョーンズ  『Coda コーダ あいのうた』
助演男優賞 トム・ハンクス     『エルヴィス』
助演女優賞 ケイト・ブランシェット 『ナイトメア・アリー』
 


(江口 由美)

 

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松竹映画 100 周年記念作品 / 山田洋次監督 最新作

映画も夢も終わらない、諦めなければ何度でも“奇跡”は起きる。

“キネマの神様”を“しゃべりの神様”(上沼恵美子)が大絶賛!

 


■実施日程:7 月6日(火)15:40~16:05

■場所:豊中市立文化芸術センター 大ホール(大阪府豊中市曽根東町 3-7-2)

登壇者:山田洋次監督、上沼恵美子さん(タレント・歌手)



kinemanokami-pos2.jpg松竹キネマ合名社の設立、そして数々の名作を創り出した蒲田撮影所の開所を迎えた 1920 年から、日本映画史を飾る傑作、ヒット作の製作、配給、興行を続け、2020 年松竹映画は 100 周年を迎えた。本作は、そんな松竹映画 100 周年を記念した作品となる。日本映画界を代表する巨匠・山田洋次を監督に迎え、これまで数々の文学賞を受賞してきた人気小説家・原田マハ原作の『キネマの神様』だが、幾度の公開延期を経て、ついに 8 月 6 日(金)より劇場公開を迎える。


そしてこの度、7 月 6 日(火)に<豊中市先行上映会舞台挨拶>が実施された。豊中市名誉市民である山田洋次監督とスペシャルゲストとして山田監督の大ファンでもある上沼恵美子が登壇し、本作の魅力や映画にまつわる二人の思い出のエピソードを対談形式で語った。数々の困難を乗り越えいよいよ公開まであと1か月に迫った中で、山田洋次監督と深い繋がりのある豊中市の皆様を前に映画に対する想いが語られる特別な舞台挨拶となった。


本作は 1960 年代ごろの日本映画の黄金期と現代を舞台に、夢を追いかけ、夢に挫折しながらも“映画の神様”を信じ続けた主人公・ゴウが時代を越えて織り成す“夢”と“愛”と“奇跡”に満ちた感動の物語が描かれる。そんな本作を観て、山田監督の大ファンで、毎回新作を楽しみにしているという上沼は、「しばらく席を立てないような感覚になる作品で、本当に泣きました」と語り、また「“松竹映画 100 周年記作品”という冠がついた作品ですから、少し仰々しい内容なのかと思っていましたが、全然そんなことなかった!さすが監督。」と感動しきり。主役のゴウ役を志村けんさんが演じる予定だったことについても触れ、山田監督は「彼が亡くなって、どうしようかと思った」と当時の心境を語るも、上沼は「ジュリーはやっぱり男前だった」と志村の遺志を継ぎ代役を務めた沢田研二の演技を称賛した。また、本作のラストシーンについて、上沼は「監督の脳みそを覗いてみたいと思うほど感動した」と興奮気味で感想を伝え、山田監督があの演出は初めから頭にあったことを明かすと、「やっぱり監督は凄い。今でも現役でやられていることがもう普通じゃない!」とますます山田監督への尊敬の念を深めていた。


kinemanokami-500-1.JPG上沼が大の寅さんファンであることから決まった今回の豪華対談。「私の体は「男はつらいよ」でできているといっても過言ではないほど大ファン。細胞が「男はつらいよ」で形成されていると言ってもいいくらい、もう大好き」と語り、その熱量に、場内は大爆笑。特にお気に入りのシーンはやはりあのメロンの名シーンであることを明かすと、山田監督は「あのシーンは渥美清に『寅はね、きっと悲しかったんだよ。悲しみのあまりああいう風に怒ったりしたんじゃないかな』と話したところ、そこから芝居がガラッと変わった」という貴重なエピソードを披露。それを聞き上沼も「やはり天才同士ですね!」と感嘆しきりだった。


最後に、山田監督の作品のおかげで人生に色が付いたと語る上沼は、「監督のおかげで喋る仕事ができている。こんなに尊敬している人はいない。山田洋次監督は日本の宝と思っております!」と熱い想いを語ると、山田監督も「今日来てくださって本当に嬉しかった。これからも、人の心に灯がともり続けるような、そんな仕事をしたい」と語り、会場は温かい拍手で包まれ舞台挨拶は幕を閉じた。山田監督の大ファンである上沼恵美子も感嘆したラストシーンに、どのような感動が待ち受けているのか。山田洋次監督最新作「キネマの神様」は、いよいよあと一か月後の 8 月 6 日公開となる。
 


【対談内容】

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上沼恵美子さん(以下上沼):コロナの中ありがとうございます。あまりに綺麗でびっくりしたでしょ?(笑)監督、「キネマの神様」拝見いたしました。松竹映画 100 周年記念の映画ということで、少し難しくてとっつきにくいイメージを勝手に抱いていましたが、全然そんなことなかったですね!
この映画は撮影所が舞台になっていますから、内輪のお話になってしまうのではないかと思っていましたが、さすが監督でございました。最後ジーンときました。ジュリーはやっぱり男前でしたね!あの役は志村けんさんが演じられる予定だったんですよね。

山田監督(以下監督):そうなんです。彼が亡くなって、どうしようかと思いましたね。

上沼:コロナもなかなか収束しないですね。映画に足を運ぶ方も少なくなって。

監督:一時は閉鎖されちゃってね。

上沼:監督は本当にお元気で。体が元気とかそういうことだけではなくて、本当にすごいです。私は一度監督の脳みそを拝見したい。
なぜ私が今日ここに座っているかといえば、私の体は「男はつらいよ」でできているといっても過言ではないほど大ファンです。一作目は小学生の頃に観て、お正月の風物詩だったんですよ。細胞が「男はつらいよ」で形成されていると言ってもいいくらい、もう大好きで。オファーをずっと待っていたんですが…泉ピン子さんは出ていましたね(笑)

監督:嬉しいなあ。

上沼:息子もハマりまして、全作観ております。心の喜びとか、思いやりとか…そういうものが全て詰まっていて、学校よりずっと勉強になります。昭和は輝いていましたし、やはりいい時代ですよね。マドンナもすごい。私はリリーさんが好きです。

監督:浅岡ルリ子さんね。

上沼:キャスティングが素晴らしいです。

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監督:運もありますね。

上沼:やっぱり一番笑うのは、メロンのシーン。あれは大笑いするというより、どこか寂しいんですよ。

監督:あのシーンは、渥美さんに「寅はね、きっと悲しかったんだよ。悲しみのあまりああいう風に「怒ったりしたんじゃないかな。」と話したら、そこから芝居がガラッと変わったの。

上沼:そういう風に演出されて、渥美さんがお芝居を変えられるんですか!やっぱり凄い方ですね。天才同士です。天才といえば、「キネマの神様」のラストシーンのあの感動的な演出は最初から考えていたんですか?

監督:最初から頭にありました。

上沼:すごい。やっぱり何かが違いますよね。やはりご高齢になられると、助監督の方が考えられていたりとかが多くなると思うのですが、監督は今でも現役ですものね。全てご自分でやられるからすごいですよ。

監督:いや、若い時のようには動けていないですよ。

上沼:それはそうですよ!(笑)監督は本当にすごい。私の人生に綺麗な彩を与えてくださいました。山田監督の作品は、ポッと心に灯がともります。主人なんかより、私の人生に影響を与えています!(笑)結婚して 44 年になるんですが、なんでこんなに長く同じ顔を見ないといけないのかと思っています(笑)この女の気持ちって、監督分かります?

監督:それは難しい問題だなあ(笑)

上沼:74 歳で、ずーっと遊んでばっかり!

監督:いいですね。羨ましいなあ。

上沼:それにしても、監督という仕事は、人助けですね。今家でも色々と監督の作品を観ることができますが、コロナになんか負けるな!と思います。
いま私が喋りの仕事ができるのは、監督のおかげです。次の作品はなんだろうといつも楽しみにしていて、今回の「キネマの神様」。本当に泣きましたね。もうしばらく席を立てないような。本当に、現役でずっとやられているというのはすごいです。私は山田監督は日本の宝だと思っております。

監督:上沼さんに今日来ていただけると聞いて僕もびっくりして。

上沼:生きていてよかったです!本当に嬉しいです。ありがとうございます。
 


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【STORY】

無類のギャンブル好きなゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父。 そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」 一 。行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて映画の撮影所で働く仲間だった。若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)をはじめ、 時代を代表する名監督やスター女優の園子(北川景子)、 また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。そして、ゴウとテラシンは淑子にそれぞれ想いを寄せていた。しかしゴウは初監督作品の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。ゴウは撮影所を辞めて田舎に帰り、淑子は周囲の反対を押し切ってゴウを追いかけて行った・・・。


あれから約 50 年。ゴウの孫・勇太(前田旺志郎)が、古びた映画の脚本を手に取る。その作品のタイトルは、『キネマの神様』。それはゴウが初監督の時、撮影を放棄した作品だった。勇太はその脚本の面白さに感動し、現代版に書き直して脚本賞に応募しようとゴウに提案する。最初は半信半疑で始めたゴウであったが、再び自身の作品に向き合う中で、 忘れかけていた夢や青春を取り戻してゆく――。これは、“映画の神様”を信じ続けた男の人生とともに紡がれる 愛と友情、そして家族の物語。


■監督 :山田洋次 ■脚本 :山田洋次 朝原雄三
■原作 :原田マハ「キネマの神様」(文春文庫刊)
■出演 :沢田研二 菅田将暉 永野芽郁 野田洋次郎 / 北川景子 寺島しのぶ 小林稔侍 宮本信子
■主題歌 :「うたかた歌」RADWIMPS feat.菅田将暉(Muzinto Records/EMI)
■配給 :松竹
■コピーライト:(C)2021「キネマの神様」製作委員会
公式サイト :https://movies.shochiku.co.jp/kinema-kamisama
■公式 Twitter:https://twitter.com/kinema_kamisama
■公式 Instagram:https://www.instagram.com/kinema_kamisama

2021年8月6日(金)~全国ロードショー!!!


(オフィシャル・レポートより)

 

 

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『花束みたいな恋をした』オリジナル ステッカー プレゼント!

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★名称:「はな恋」ステッカー
  

 

◆プレゼント数:5名様

◆締め切り:2021年1月29(金)

◆公式HP: https://hana-koi.jp/

 

★2021年1月29日(金)~全国ロードショー


 


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何かが始まる予感がして、心臓が鳴った―。


「東京ラブストーリー」(91)、「Mother」(10)、「最高の離婚」(13)、「Woman」(13)、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16)、「カルテット」(17)、「anone」(18)など、常に私たちの心を捉えて離さない多くの連続ドラマを手掛けてきた脚本家・坂元裕二が、2020 年の東京を舞台に、今を生きるすべての人へ贈るために書き下ろした最新作。
『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』『舟を編む』などの製作陣が手掛ける本作、主役を演じるのは、菅田将暉と有村架純。二人の実力派俳優による<初のダブル主演>が実現しました。監督を担うのは『罪の声』(20)の土井裕泰。『いま、会いに行きます』(04)、『ハナミヅキ』(10)、『映画 ビリギャル』(15)など多くの大ヒット映画を送り出して来た土井は、ドラマ「カルテット」で坂元裕二と組んで以来、映画では初タッグとなります。 
 

【STORY】
 
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東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った山音やまね麦むぎ(菅田将暉)と八谷はちや絹きぬ(有村架純)。
好きな音楽や映画か嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。
まばゆいほどの煌きと、胸を締め付ける切なさに包まれた<恋する月日のすべて>を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。
最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!―これはきっと、私たちの物語。
 
 
◆脚本:坂元裕二
◆監督:土井裕泰
◆出演:菅田将暉 有村架純 清原果耶 細田佳央太 オダギリジョー/戸田恵子 岩松了 小林薫
◆コピーライト:Ⓒ2021「花束みたいな恋をした」製作委員会
◆配給:東京テアトル、リトルモア
Ⓒ2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

 

◆公式HP: https://hana-koi.jp/

★2021年1月29日(金)~全国ロードショー


(オフィシャル・リリースより)

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血縁関係の家族、疑似家族が入り混じる世界で、ぶつかり、歩み寄ることの大切さを描く。
『ひとよ』白石和彌監督インタビュー
 
 劇団KAKUTAを主宰する劇作家・桑原裕子の代表作を実写化した白石和彌監督(『孤狼の血』『凪待ち』)の最新作『ひとよ』が、11月8日(金)よりTOHOシネマズ 梅田他全国ロードショーされる。
 家庭内暴力から子ども達を守るため、雨の降る夜、夫を殺害したこはる(田中裕子)が、15年後に出所し、約束通り子ども達のもとに帰ってきた。事件によって運命を狂わされた長男・大樹(鈴木亮平)、次男・雄二(佐藤健)、長女・園子(松岡茉優)という3兄妹の皮肉な運命と、母との再会からはじまる葛藤を、彼らが住むタクシー会社の面々たち(音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、佐々木蔵之介)の人間模様と絡めて描く奥深いヒューマンドラマだ。本作の白石和彌監督に、お話を伺った。
 

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■田中裕子はまさに映画女優、本当に特別な時間になった。

――――白石監督にとっては、初めて血縁関係に結ばれた家族を真正面から描いた作品ですが、その母親こはる役は、田中裕子さんを最初から念頭に置いていたそうですね。
白石:田中さんは 降旗康男監督の『夜叉』(85)などずっと女の情念を演じられていて、女としても女優としても底のなさを見せつけられていました。近年では青山真治監督の『共喰い』(13)で、菅田将暉君が演じる主人公の母親を演じていた田中さんも素晴らしかった。今回、母をテーマにした作品で、田中さんは役の年齢的にもちょうど良かったですし、まずは無理を承知でオファーをしました。早速「来年の春は無理です」と断られたので、「1年待てば大丈夫ですか?」とお聞きすると、「考えさせてください」。最終的にはそこまで待ってくれるのならと、出演を決めてくださいました。
 
――――役作りの過程で、どんなやりとりをされたのですか?
白石:時々マネージャーを通じてメッセージが来るのです。セリフなど、その都度修正して書き直してまた送ったり、脚本という名の往復書簡を繰り返しました。送るたびにメッセージを再度いただくので、一度お会いして直接お話しをしてもいいですかとお聞きすると、「衣装合わせの時で大丈夫です」と(笑)。だから、初めてお会いするまで、すごく緊張感がありましたよ。実際に衣装合わせで初顔合わせをした時に、なぜ田中さんにオファーをし、なぜこの作品をやりたいと思ったのかをお話し、あとは本当にお任せしました。初対面の時は、相当緊張しましたが、とても柔らかい感じの方で、とはいえ、なかなか本心は見せていただけない。まさに、映画女優といった方で、本当に特別な時間になりました。
 
――――15年後に出所したこはるを演じるにあたり、田中さんは自ら白髪で演じることを提案されたそうですね。
白石:日頃は染めていらしたそうですが、オファーを受けていただいた際に、「今から染めるのを止めれば、来年の春にはちょうどいい感じになると思います」とおっしゃり、準備していただきました。こちらの思いの大きさを十分に感じて、田中さんも時間をかけて役の準備をしてくださったのだと思います。
 
 
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■佐藤健の「内に秘めた並々ならぬ情熱」を体感してみたかった。

――――次男・雄二を演じた佐藤健さんは白石組に初参加ですね。
白石:佐藤さんはスター俳優ですが、まだその階段を駆け上がっている途中で、これから日本映画界を背負って立つ俳優になる人材です。それだけの仕事ができているのは、クールに見えても本人の中に並々ならぬ情熱があるはずで、それがどんなものかを体感してみたかった。また雄二は最初、母親にきちんとコミュニケーションをできない役ですが、後半になるにつれ、他のどの兄弟よりも母親のことが好きで、兄弟のことを誰よりも考え、母親の期待に応えられていない自分にイラついている。そんな内に熱いものを持っている雄二が、佐藤さんにマッチするのではないかと思ってオファーしました。
 
――――長男・大樹役の鈴木亮平さん、長女・園子役の松岡茉優さんも、東京から帰ってきた雄二、そして出所した母親に翻弄され、家族ならではの難しさを見事に体現していました。
白石:鈴木さんはキャラクターの作り方の強さに加え、器用さと不器用さを持ち合わせた方。内にエネルギーが向かうという大樹役に合うのではないかと思ってオファーしました。松岡さんは、兄妹の時間や空間を埋め合わせる能力が非常に高かった。この3兄妹をまとめ上げたのは、松岡さんの力が本当に大きいですね。園子は他人には強く当たるのですが、実は一番自分の中の時間が止まっているキャラクターで、母親がいなくなってから、ちゃんと大人になれていなかった。そういうキャラクターがとてもハマっていましたね。
 
 
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■タクシー会社の社員たちはある意味で疑似家族。舞台として絶対に必要だったタクシー会社を探し求めて。

――――非常に重いテーマの家族物語ですが、一方、舞台となったタクシー会社の社員たちの日常描写が秀逸で、『月はどっちに出ている』(93崔洋一監督)を彷彿とさせるような活気もあり、非常に印象的でした。実際に、ロケ地を探すのは大変だったのでは?
白石:原作となる劇団KAKUTAでは、タクシー会社の事務所、裏庭があり、稲村家の母屋が隣接しているという舞台ならではの設定になっており、やはり家が離れていると困るのです。そういう場所を探そうとしたのですが、こちらの思うような場所はなかなか見つからない。5ヶ月ほど、総出で探しても見つからなくて、これはヤバイと皆が思っていた時に偶然国道沿いで見つけたのが浜松タクシーというタクシー会社。見せていただくと、あて書きかと思うぐらい、増設されている場所もあり、少し狭目ではありますが中庭もあって、見るだけでストーリーができるような建物だった。実際には営業中の場所だったのですが、皆でお願いし、事情を汲んでいただいて撮影期間はその場所をお借りすることができました。浜松タクシーさんのご協力が全てだったと思います。
 
――――住居と職場が一体となっている場所で、従業員とも家族のようないい関係だったことが、母親が帰ってきたことで動揺を隠せない三兄妹の不安を包み込んでいるようでした。
白石:稲村家だけでなく、大樹が結婚して抱えている家族、筒井真理子さんが演じる弓子が抱えている家族、佐々木蔵之介さんが演じる堂下が抱えている過去の家族と、血縁関係にある家族は皆、それぞれに重いものを抱えています。でもタクシー会社の社員たちはある意味で疑似家族的になっていて、そこにいる時は皆楽しそうにしている。血が繋がっていないからこそ、家族間では口にできないような悩みを打ち明けられたり、家族だからこそ言えないことも多々あるというような疑似家族や家族ならではの雰囲気が、タクシー会社と自宅が一体となったあの場所ではよく出ていると思います。
 
――――ラスト近くに目が覚めるような大きな太陽がスクリーンに現れ、やりきれない気持ちの登場人物たちにエールを送っているようにも映りますね。
白石:カーチェイスのシーンは、3日間海辺で撮影したのですが、あらかじめ太陽が昇る場所を探して、太陽がでるかどうかとドキドキしていたら1日目で撮れました。『太陽を盗んだ男』(79 長谷川和彦監督)ぐらい大きく撮ってとお願いしたのは、この一夜から朝が来て、何かが動き出したという感じを出したかったのです。
 
 
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■「巻き込まれなよ」というセリフに込めた思い。 

――――音尾琢真さんが演じる、こはるの甥で稲丸タクシーの社長、丸井が、母親こはるとの向き合い方に悩む三兄弟に放つ一言「巻き込まれなよ」。親子関係だけでなく、様々な局面につながる言葉だなと、思わず唸りました。

 

白石:あのセリフはこの物語のトリガーになっています。家族だけではなく、人との関係であったり、さらには国と国という政治的な場所でも、自分のことだけでなく、相手のことを考えてという歩み寄りの一歩が必要ですね。また最初の台本にクラッシュシーンは、なかったんです。でもそのシーンを入れたのは、まずはクラッシュしないとコミュニケーションは始まらないという僕からのメッセージでもあります。
 
 

■若松さんが歴代の弟子たちに言い続けてきた言葉を胸に。

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――――確かに、避け合っていては何も始まらない。一度ぶつかってみることで、いがみ合う間柄でも、お互いに感情を吐露したり、何かが動き出すきっかけになりますね。最後に、白石監督にとって人生を動かす「ひとよ」とは?
白石:『止められるか、俺たちを』(18)で門脇麦さんが演じた吉積めぐみさんが、若松さん(若松孝二監督)に新宿ゴールデン街に連れて行かれ、「おまえ、どんな映画を撮りたいんだよ。誰かをぶっ殺したいとか、爆破したいとか、そういうものはないのかよ。そういうものがあれば、それを、ばあっと入れれば映画になるんだよ」というようなことを言われるシーンがあります。その言葉は取材して聞いた言葉ではなく、僕がまさに若松さんに20歳の時、言われた言葉です。めぐみさんも僕が弟子入りする30年前に、若松さんに弟子入りしているのですが、若松さんは変わらない人なので、めぐみさんに言ったのと同じことを僕に言っていたはずです。僕は当時、ぶっ殺したい奴はいなかったので「映画監督になれねえー」と思ったのだけど(笑)、あの瞬間はワクワクした。そのワクワクは今まで続いています。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ひとよ』
(2019年 日本 123分)
監督:白石和彌
出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介・田中裕子他
11月8日(金)よりTOHOシネマズ 梅田他全国ロードショー
公式サイト → https://www.hitoyo-movie.jp/
(C) 2019「ひとよ」製作委員会
 
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「現代の神話的なものを作りたかった」
『タロウのバカ』大森立嗣監督インタビュー
 
 名前も戸籍もないタロウ、高校生のエージ、スギオの3人が、河原で、隠れ家で戯れ、街中を疾走する。「愛ってなに?」「好きってなに?」「死ぬってなに?」何も知らないタロウが、エージとスギオに交わることで起きる化学反応は、衝動的かつ刹那的で、青春にしかない一瞬のきらめきに目を奪われる。生きづらくても、3人でいれば無敵だった。
 
 大森立嗣監督(『さよなら渓谷』『日々是好日』)が長年温めていたオリジナル脚本を映画化。最新作となる『タロウのバカ』が、2019年9月6日(金)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都、9月13日(金)より京都みなみ会館他全国ロードショーされる。
名前も戸籍もない主人公のタロウ役にオーディションで選ばれた演技初体験の新人、YOSHI、ある事情から学校に行かなくなってしまったエージ役に菅田将暉、援助交際をする同級生の洋子に恋してしまうスギオ役に仲野太賀が扮し、3人のアナーキーな日々が、偶然拳銃を手にすることで死に近づいていく様を、エネルギッシュに演じている。
 
 死の匂いが漂う現代社会の闇と、その中で生きる彼らを真っ直ぐに描いた大森立嗣監督にお話を伺った。
 

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■戦中戦後の死の匂いを必死で消し、何かが失われているという20代半ばの実感を脚本に。

――――長編デビュー作の『ゲルマニウムの夜』以前に書かれたオリジナル脚本ですが、当時はどんな思いでその脚本を書かれたのですか? 
大森:僕の中学、高校時代は校内暴力全盛期で、学校がある種のアナーキーな感じがする場所でした。僕自身はいじめる側でもいじめられる側でもなかったけれど、一歩間違えればそのアナーキーな世界に行きかねないという肉体的感覚がすごくあったのです。1970年生まれの僕からすれば、高度成長時代を経て経済的に豊かになっているけれど、一方で経済的な豊かさを得ることで、戦中戦後の死の匂いを必死で消そうとしているのではないか。そして何かが失われているのではないか。そういう考えを当時の素直な衝動をもとに、ちょうど助監督になりたての20代中盤で書いた脚本でしたね。
 
――――脚本を書かれた当時から25年ほど経った今、映画化するに至った経緯は?
大森:年に1度ぐらい脚本を読み直し、そんなに風化していないという実感がありました。僕自身が年をとっていく中で、若い主人公たちのかなり無軌道な物語を撮れる気力が残っているかと考えると、まだいけると。実際、最初に脚本を書いてから時間が経ちましたが、現代の問題を盛り込むためにオープニングのシーンや携帯の扱いを考えた以外はほとんど脚本を変えていません。
 
 

■25年経っても日本は変わらないから、『タロウのバカ』を作りたいと思った。

――――現代に合わせてかなり加筆されたのかと思っていたので、驚きました。全編に死の匂いが漂いますが、その部分は25年前より強めた表現にしたのですか?
大森:阪神大震災やオウム真理教事件が起きた95年頃に最初の脚本を書き、もちろんその影響は大きかったのですが、その後の東日本大震災の影響も僕にとっては大きかったです。原発事故以降、日本が変わるのかと思ったら、やはり変わらない。事故を忘れようとする力がすごく働いている気がして、脚本はむしろ風化していないと感じたのです。『タロウのバカ』を撮らなくていい時代の方が良かったのかもしれませんが、やはり時代が変わらないから作りたいと思ったのでしょう。過去を忘れようとする、或いは消費する力をすごく感じますね。
 
 
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■どこにも所属していないタロウを演じたYOSHIは「変に社会化されていない」

――――タロウをはじめとする3人のボーダレスな関係が、突き進む疾走感を生んでいます。その中でもタロウの描き方が作品の肝だと思いますが、キャスティングやキャラクター設定について教えてください。
大森:タロウは戸籍も名前もないという設定で、かなり無軌道な行動をします。15歳ぐらいで、大人でも子どもでもない。どこにも所属していないという価値観を出したかった。でも実際にオーディションをすると、15歳ぐらいなら既に社会化されていて、なかなか思うような人に出会えなかったのです。YOSHI君は変に社会化されておらず、初対面でも親世代のような僕らに緊張することなく話すことができ、むしろ僕たちに近いような部分を持っていると感じて、タロウがそこにいると思いました。
 
――――仲野大賀さんが演じるスギオは、アウトサイダーと一般社会人の境界にいる人物で、その苦悩に共感しやすいと同時に危うさも感じますね。
大森:脚本を書く時、ある程度箱書きするのですが、書いているうちにキャラクターが動き出すこともあります。結果的に、我々と一番近い立場の人間が窮地に追い込まれる。それが社会に対する警鐘になればという気持ちがありました。
 
 
 

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■「愛ってなに?」「好きってなに?」という問いかけで、人間の感覚を素直に見つめる。

――――タロウは劇中で「愛ってなに?」「好きってなに?」「死ぬってなに?」と何度も問いかけます。スギオも、同級生の洋子もやはり愛が何か分からない。この作品で愛は大きな問いかけになっています。
大森:僕たちは「好き」ということをなんとなくわかったふりをして生きているけれど、本当はわかっていない。それぞれが社会生活を営む中で、好き嫌いを判断していると思うのです。でも、人間が経済的に豊かになり、合理性や生産性を追求するのとは別に、人間はそもそも生物です。生まれて死ぬという感覚や、どうしようもなく好きになるという人間の感覚を素直にみつめることが、今、失われすぎているのではないかという思いから、登場人物たちに「愛ってなに?」「好きってなに?」という問いかけをさせています。ただ、スギオや洋子は、1回転半ぐらい回った後での「好きってなに?」という感覚で、タロウのまっすぐな感覚とは違うと思います。タロウがいる河原で見かけるダウン症のカップル、藍子と勇生もタロウと同じような存在ですね。
 
――――タロウや藍子と勇生の存在が、物語を寓話的、神話的に感じさせますね。
大森:実は現代の神話的なものを作りたいという思いがありました。今は自意識が肥大しすぎている人が本当に多いと感じます。皆が自分の周りのことに敏感になりすぎ、傷ついて何もできなくなってしまう。でも自分は、もっと大きな地球の中で生かされている存在であり、人間であると肯定するだけで、悩みへの対処の一つになるのではないかと思うのです。世の中には自分がわからないものがいっぱいあるし、自分はそんなに大きいものではないと思うと、少し楽になれるのではないでしょうか。
 
――――3人の中のリーダー格であるエージは、半グレ集団との付き合いがある一方、他の2人が口にしないような戦争や虐げられた詩人の言葉を口にするのが印象的でした。
大森:僕は1970年生まれで、終戦から25年しか経っていないのにすごく戦争を昔のことにように捉えていた。そういう実感を、エージに反映させています。エージは早めに社会生活からドロップアウトしてしまいますが、そこでタロウという存在に出会い、無意識のうちに死が立体感をもって掴めそうな気になる、とても敏感な少年です。半グレの吉岡らに首を絞められたり、柔道部の先輩たちにボコボコにされた時、リアルに死が頭をよぎってしまった。だから、エージは教科書に載っていた詩の一部を口にしたりするのです。
 
 

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■YOSHIをキャスティングした狙いに沿った、全員がフラットな撮影現場。

――――菅田さん、仲野さんと、15歳で新人のYOSHIさんが組むことで、撮影中も予期せぬ化学反応が起きていたのではないかと思いますが、3人での撮影の様子は?
大森:映画の撮影は、映画監督をトップに置き、そこから下はピラミッド方式で、ある種の封建的な力が働きます。でも、今回は社会化されていない部分に魅力を感じて、演技経験が全くないYOSHI君を主演に起用した訳です。だから従来の撮影現場のシステムをYOSHI君に押し付けるやり方は全く違うと思い、本当に皆が並列にいるような現場を目指しました。YOSHI君は撮影の合間に「たっちゃん〜」と僕の膝の上に乗ってきたり、撮影が終わると「ゲーセン行こうよ!」と声をかけてくるので、スタッフが皆びっくりしていましたが、逆に皆が彼の影響を受けましたね。菅田君にも「マサキ〜」と駆け寄って、遊びの延長でじゃれあっている。菅田君も色々な撮影現場で仕事をしているので、「この現場は、こういうやり方なんだ」と敏感に感じ取り、先輩っぽさは一切出さなかった。みんなで銭湯にも行きましたし、非常にフラットな現場でした。僕は本当に楽しかったし、そういう現場であったことが、この映画にどこかリンクしている感じがします。
 
――――バイオレンスなシーンと共に印象に残るのは、歌のシーンです。特にずっと一緒にいた勇生が溺死している傍らでで、雨の中大声で歌い続ける藍子の存在感は絶大で、カメラもこれ以上ないぐらいのアップで藍子を捉えていましたが、その狙いは? 
大森:藍子さんが歌うシーンは当初ありませんでした。実際に会い、彼女が歌っているのを聞かせてもらい、脚本に取り入れています。僕の中では溺死した勇生君を生き返らせる儀式だと思っているので、生き返らせるためにもっと大きな声で!と藍子さんに指示を出しました。雨の中全身全霊で歌う、祈りのシーンにしたかったのです。
 
 

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■「わからないものにどう触れていくか」を模索させた、死が浮き上がるシーン。

――――後半、死者を表現したような大駱駝艦のパフォーマンスは、「生きてる人と死んでる人、どちらが多い?」という問いかけと共に、自分たちがあまたの死者たちの中で生きているような感覚を覚えますね。
大森:大駱駝艦にある種の死者を演じてもらいましたし、「生きている人と死んでる人、どちらが多い?」「死んでる人だよ」とか、「死ぬんだから痛くたっていいじゃない」など、子どもの遊びのようなセリフの中に、死そのものがフワッと浮き上がるようにもしています。また、拳銃を手にしたエージがロシアンルーレットのようにするシーンも含めて、ふと肌触りのように死が近寄ってくる感じを表現したかった。死は、実際に死んだ人でなければわからないものですが、わからないものにどう触れていくかをタロウらに模索させたかもしれません。
 
――――死が全編に匂うというのは、そういう様々な表現の積み重ねによるものが大きいと改めて感じました。最後に、同世代の子どもたちの中でタロウは絶叫しますが、そのシーンに込めた思いは?
大森:あの絶叫は、タロウが生まれ変わる時の産声だと思っています。社会的になるというより、タロウが新しい人間として生まれてこないだろうかと。そういうタロウの姿をもう少し見ていたい。この先どう生きていくのかを見ていたいと思ったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『タロウのバカ』(2019年 日本 119分) R15+
監督・脚本・編集:大森立嗣 
出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太、豊田エリー、植田紗々、國村隼
2019年9月6日(金)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都、9月13日(金)〜京都みなみ会館他全国ロードショー
公式サイト⇒http://www.taro-baka.jp/
(C) 2019 映画「タロウのバカ」製作委員会

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津波が繋いだ縁。全編インドネシアロケの合作映画で描きたかったことは?
『海を駆ける』深田晃司監督インタビュー
 
インドネシア、スマトラ島北端のバンダ・アチェを舞台に、日本・インドネシアのキャストが集結した深田晃司監督最新作『海を駆ける』が、5月26日(土)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他で全国ロードショーされる。
海辺に突然現れた意識不明の男、ラウ(ディーン・フジオカ)の正体を探る一方、アチェに移住した貴子(鶴田真由)の息子タカシ(太賀)、日本から訪れた親戚のサチコ(阿部純子)、タカシの同級生クリス(アディパティ・ドルケン)、クリスの幼馴染でジャーナリスト志望のイルマ(セカール・サリ)の4人の群像劇が重なる。ラウの周りで起きる不思議な出来事、そして驚愕のラストと、深田流ファンタジーは最後まで目が離せない。
本作の深田晃司監督に着想のきっかけや、インドネシアキャストとの撮影、日本=インドネシア合作映画で描きたかったことについてお話を伺った。
 

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■津波の被害は日本だけではない。受け止め方も違うと気づいたバンダ・アチェのシンポジウム。

――――今回は日本とインドネシアの合作映画ですが、どのようなきっかけで実現したのですか?
深田監督:2011年12月に京都大学とインドネシア バンダ・アチェのシアクアラ大学が共同で、津波と防災に関するシンポジウムを開催しました。バンダ・アチェは2004年に起きたスマトラ沖地震による津波の被害を被った場所で、東日本大震災による津波の知見を共有する目的で行われたのです。京都大学で混成アジア映画研究会を主催されている山本博之先生が、私の作品『歓待』(10)を気に入って下さったことから、声をかけていただき、記録係としてバンダ・アチェに同行しました。
 
2011年に東日本大震災で津波が起こったとき、津波が全てを飲み込むような映像は信じられませんでしたし、多くの日本人が何か足元から覆されるような衝撃を受けたと思います。一方、バンダ・アチェで2004年に地震や津波が起き、その映像をニュースで見た時、きっと自分は驚いてはいたと思うのだけど、外国のたくさんあるニュースの一つとして消費したに過ぎず、日本で起きた津波のようには実感してはいなかったのです。でも、津波の被害は日本だけのものではないし、日本人だけが被害に遭った訳ではない。バンダ・アチェで、そのことに気付かされた経験が、非常に強く心に残りました。もう一つは、津波に対する受け止め方です。津波の被害に遭った日本人とインドネシア人とでは大きな違いがあるように思えた。そのことも、印象に残りました。
 
 

■『ほとりの朔子』の発展形をイメージ。朔子はインドネシアを遠くの地と感じていたが、今度はサチコがインドネシアに行く話にしようと考えた。

――――『ほとりの朔子』(13)で共演した鶴田さんと太賀さんが、本作で再共演しています。特に鶴田さんはインドネシア地域研究家という役柄だったので、本作との繋がりを感じますが、『ほとりの朔子』を作った頃から、いつかはインドネシアで映画を撮りたいという気持ちがあったのですか?
深田監督:(気持ちは)ありましたね。最初は、東日本大震災の経験をした日本人がバンダ・アチェに行くと、どんな景色が見えるのかと空想しました。どちらかといえば『ヒロシマ・モナムール』のような、いわば原爆という歴史的な大惨事が起きた場所にフランス人の女性が訪れ、現地の人と恋に落ちるという物語のインドネシア版ができればと思っていました。そんな妄想を重ねながら、一方で『ほとりの朔子』を制作、公開し、2014年1月に日活のプロデューサーとのミーティングで日本人が外国に行く映画を作りたいという話が持ち上がったので、すかさずインドネシアのバンダ・アチェを候補に挙げ、GOサインが出たのです。既に『ほとりの朔子』を作った後ですから、どこかでその発展形をイメージしはじめていました。朔子にとって、叔母の海希江が訪れていたインドネシアはどこか遠くの地というぼんやりしたイメージでした。今度は阿部純子さん演じる女子大生のサチコがインドネシアに行く話にしようと考えていきました。
 
 
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■ラウのイメージは、マーク・トゥエイン「不思議な少年」の美しい少年44号。

――――本作の鍵となるラウという存在は、自然に宿る神のようにも映りました。最初からファーストシーンが浮かんでいたそうですが、どのようにラウのイメージを膨らませていったのですか?
深田監督:インドネシアの話を書こうと思った時、「海から出てきてバタッと倒れる記憶喪失の男」というシーンからスタートしました。そこに日本からインドネシアに来る若者や、現地の若者が登場し、彼らの恋愛模様と同時並行して描くプランになりました。実はイメージとして、「トム・ソーヤの冒険」などアメリカ的楽天主義の小説で有名なマーク・トゥエインが、人間の存在に対してペシミスト(悲観主義)になる晩年に書いた「不思議な少年」がありました。人間社会に44号と名乗る美しい少年が現れて働き始めるが、最終的には人間の価値観を相対化し、疑念を投げかけて去っていく。ラウも、人間の価値観を相対化する存在と捉えられますし、むしろ自然そのもので、植物のようにニコニコとそこに立っていたり、意図も目的もなく人を助けることもあれば、でたらめに人を殺すこともあるという存在にしようと思いました。
 
 

■世俗離れした美しさと多国籍なプロフィールのディーン・フジオカなら、ラウのミステリアスさを演じられると確信。

――――ラウ役にディーン・フジオカさんのオファーを考えたのは、どの段階ですか?
深田監督:最初は「不思議な少年」のイメージがあったので、20代前後をイメージしていたのですが、なかなかピタリとくる人が見つかりませんでした。少し浮世離れしたような感じが出せる人を探していると、日活のプロデューサーをはじめ、周りの複数の方からディーン・フジオカさんの名前が挙がったのです。ちょうど朝ドラの「あさが来た」でディーンさんがブレイクされていた頃でした。経歴を拝見すると、生まれは日本ですが、香港や台湾でキャリアを重ね、ジャカルタをベースにしながら今は日本で活躍されているという多国籍のプロフィールがラウのミステリアスさを後押ししてくれると思いました。あとは世俗離れした美しさ。この人にお願いしようという気持ちに迷いはありませんでした。
 
――――ディーンさんは日本人キャストの中で、誰よりもインドネシア語が堪能だと思うのですが、そんなディーンさんにインドネシア語をほとんどしゃべらせない脚本にしたのは、ある意味勇気がありますね。
深田監督:ディーンさんはインドネシア語、日本語、中国語、英語がしゃべれますから、とにかくしゃべるシーンを作ろうという誘惑は、すごくありました(笑)でもラウをしゃべらせすぎると、どんどん人間臭くなってしまうので、ぐっとこらえて減らしました。記者会見で、中国語の記者に、中国語でラウが答えるというシーンも考えたのですが、いかにもディーンさんが語学堪能だから入れたシーンに見えそうだったのでボツにしました。
 
――――台詞が少ないことで、ディーンさんが持つ雰囲気と相まって、ラウ独特の存在感が浮かび上がっていますね。
深田監督:若者たちの人間ドラマの中で、だんだんラウという存在が大きくなり、最後一気に別の存在として立ち上がるイメージになればと考えて書きました。最初は全員が主人公のつもりで書いていましたが、やはりディーンさんの存在感は大きいですからね。
 
――――ラウは何者なのかという問題提起の一方で、人種を越えた青春群像劇も見ごたえがありました。インドネシア人キャスト、セカール・サリさん、アディパティ・ドルケンさん(大阪アジアン映画祭2018上映作、『ひとりじめ』主演俳優)について、教えてください。
深田監督:インドネシアのエドウィン監督作品をずっとプロデュースされているメイスケ・タウリシアさんに、現地プロデュースをお願いし、何人か候補を挙げていただいた中セカール・サリさんとアディパディ・ドルケンさんに、シナハンでジャカルタに行くタイミングでお会いし、決めました。それにしても、アディパティ君があんなに人気者とは、撮影を始めるまで知りませんでした。Twitterでもフォロワーが50万人程いますし、Youtubeにアップされている予告編(日本語)のコメント欄も、アディパティ君ファンのインドネシア語コメントで埋まっていますから(笑)。
 
 
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■インドネシアの菅田将暉こと、アディパティ・ドルケンは人気者だがとても気さく。撮影中もスタッフと俳優の距離が近く、気持ち良かった。

――――インドネシアでもアディパティさんの出演映画最新作として注目されているようですね。
深田監督:そうですね。帰りのタクシーでも若いインドネシア人男子の看板を見て「全部アディパティ君に見えるね~」なんて冗談半分で言うと、実は本当にアディパティ君がイメージキャラクターの携帯電話の広告だったとか。日本で言えば、菅田将暉さん並の人気者です。しかも本当に気さくなんです。日本が見習いたいと思う部分で、今回気持ちよく撮影できた理由の一つが、スタッフと俳優の距離が近いこと。我々スタッフが打合せをしている部屋の隅で、俳優たちが集まって同じ空間にいるんです。インドネシア人の俳優も日本人の俳優もスタッフと一緒にご飯を食べたり、リハーサルをしたりするので、スタッフも俳優たちを芸能人扱いしない。両者の垣根が低くて気持ちよかったです。セカール・サリさんも既に国際的な場で活躍されているので、本当にいいキャストに出演してもらえたと思っています。
 
 

■順応性が高い太賀の演技に、現地の人も「インドネシア人に見える」とお墨付き。

――――タカシ役の太賀さんも、インドネシア語を本当に自然に話し、いつもの飄々とした雰囲気で、アディパティさんともいいコンビぶりでした。
深田監督:太賀君は現地の人が見ても、インドネシア人に見えるとお墨付きをもらいました。現地の方が見て驚くのは、言葉やちょっとした仕草がインドネシアの若者そのものだそうです。一番良かったのは、太賀君と阿部純子さん、セカール・サリさん、アディパティ君が、出会ったその日からすごく仲良くなったことですね。太賀君と阿部さんはリハーサルのために、クランクインの1週間前に現地入りしたのですが、リハーサルの時はもちろん、撮影後もご飯を食べに行ったり、買い物に行ったり、本当にいい雰囲気でした。太賀君は順応性が高いので、こう演じようと凝り固まるのではなく、共演者の演技を受けて、それに反応するのがとても上手い俳優です。今回アディパディ君とは大学のクラスメイトで仲の良い二人という設定でしたが、自然に表現できていたと思います。
 
 
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■日本人として生まれ育ち、インドネシアに向き合う視点で、両国の関わりを提示する。

――――ドキュメンタリー的要素として、占領時に日本兵から教わった歌を歌ったり、津波の傷跡を映し出すなど、インドネシアの歴史と日本の繋がりに気付きを与えるシーンが挿入されているのも印象的です。
深田監督:日本人としてインドネシアに向き合うことになるので、普遍的な映画を作ろうとしてはいても難しい。かといって、普遍的になることが、あたかも自分がインドネシア人のように振る舞うことだとすれば、それは少し違うと思うのです。大事なのは作り手の視点なので、日本人として生まれ育ち、そしてインドネシアに向き合うという視点を絶対踏み外してはいけない。その視点でみると、日本とインドネシアの関わり方には色々な発見がある訳です。戦争中、日本が占領下に置いていた時代があり、ODA(政府開発援助)として支援をしていた一方で、その支援の歪みもある。今は津波で両方が繋がっている。インドネシアは親日国というイメージが強く、実際、現地では日本に親しみを感じてくれています。でも、日本は加害国なので、加害国と被害国という関係は消えません。占領されていた時代に日本軍に強制労働させられ、いまだに日本に対して恐怖感を抱いている人もいるのです。政治的メッセージを発している訳ではないので、親しみを込めて日本の軍歌を歌うおじいさんや、強制労働をさせられたことを歌うおじいさんを並べて描くことで、あとは観客に受け取り方を委ねるようにしています。
 
 

■大きな自然の営み(ラウ)と、たわいもない若者たちの人間らしい営みを対比して描く。

――――深田監督の一貫したテーマと思える不条理を、今回はファンタジーで表現したように見えますが、映画全体を通して描こうとしたことは?
深田監督:全体を通した一番大きなモチーフは自然であり、世界の不条理だと思います。ラウという存在が一番の鍵です。彼はたまたま、人間の恰好をして現れ、気まぐれに散歩をして去っていく存在です。大きな災害があると、人間はそれに意味やメッセージを汲み取ってしまいます。「なぜ自分だけ生き残ってしまったのだろう」とか、「これは天罰だ」等、良し悪しは別として、そのように考えてしまうのはある意味人間らしいことです。でも自然は、それこそ残酷かもしれませんが、何の意図も、目的も、意味もなく、ちょっとした偶然によって人間に恵みをもたらしもすれば、一方で災害を引き起こし、人間を死なせてしまう。ラウもそういう自然と同じ存在にしたかった。大きな自然の営み(ラウ)と、たわいもない若者たちの人間らしい営みを対比して描く。それが『海を駆ける』でやりたかったことです。
 
――――日本=インドネシア合作で、スタッフもキャストもインドネシアの方と混合での映画作りでしたが、今後この経験をどのように活かしていきたいですか?
深田監督:異文化の人と映画を作るのは面白いです。自分の狭い世界観を打ち崩してくれます。単に資金的に合作にするのではなく、多くの異文化の人と映画を作ることを今後もやっていきたいですし、またインドネシアで映画を撮りたいですね。一番良かったのはスタッフです。本当に優秀だし、怒鳴り声の全くない現場というのはとても気持ちよく、日本も見習うべきだと思いました。
(江口由美)
 

<作品情報>
『海を駆ける』(2018年 日本・フランス・インドネシア 1時間47分) 
監督・脚本・編集:深田晃司
出演:ディーン・フジオカ、太賀、阿部純子、アディパティ・ドルケン、セカール・サリ、鶴田真由 他
2018年5月26日(土)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国ロードショー
公式サイト⇒http://umikake.jp/ 
©︎2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
 
 
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