「綾野剛」と一致するもの

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『影裏』オリジナル クリアファイル(非売品)プレゼント!

 

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◆提供:東宝

◆プレゼント数:名様

◆締め切り:2020年2月24(月)

◆公式サイト: https://eiri-movie.com/

 

2020年2月17日(金)~ TOHOシネマズ(梅田、なんば、西宮OS)、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、MOVIX京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー!! 
 


 

突然消えた親友。 哀しみも、過ちも、失って初めて知る本当の姿。

彼の“真実”は、何を照らすのか?


2017 年第 157 回芥川賞。処女小説で文學界新人賞を受賞したばかりの若き作家がセンセーションを巻き起こす。混戦の中での受賞だった。その小説は、自らが住む盛岡を舞台とし、見知らぬ土地で唯一人心を許した友との出会いと別れ、いなくなった友の本当の姿を探しながら、主人公自身が喪失と向き合い再生していく物語。一方で、新たな風を日本映画界に送り続け、時代ごとのエンタテインメントを牽引してきた監督・大友啓史がこの小説と出会い、自身の故郷・盛岡を舞台にした物語に心を奪われすぐに映画化に動く。 

そして 2018 年、監督が熱望したふたりの俳優、綾野剛と松田龍平が加わり、物語は走り出す。國村隼、筒井真理子、中村倫也、永島暎子、安田顕など、日本を代表する実力派キャストが脇を固め、さらにスタッフ陣も日本映画界を牽引する錚々たるメンバーが集結。脚本に『愛がなんだ』の澤井香織。音楽にNHK 連続テレビ小説「あまちゃん」の大友良英。撮影には、黒沢清監督作品をはじめ、多くの監督から信頼を受ける芦澤明子。日本映画界を牽引するキャストスタッフが描き出す感動のヒューマンミステリーがいよいよ公開する。 
 

【STORY】
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今野秋一(綾野剛)は、会社の転勤をきっかけに移り住んだ岩手・盛岡で、同じ年の同僚、 日浅典博(松田龍平)と出会う。慣れない地でただ一人、日浅に心を許していく今野。二人で酒を酌み交わし、二人で釣りをし、たわいもないことで笑う…まるで遅れてやってきたかのような成熟した青春の日々に、今野は言いようのない心地よさを感じていた。 夜釣りに出かけたある晩、些細なことで雰囲気が悪くなった二人。流木の焚火に照らされた日浅は、「知った気になるなよ。人を見る時はな、その裏側、影の一番濃い所を見るんだよ」と今野を見つめたまま言う。突然の態度の変化に戸惑う今野は、朝まで飲もうと言う日浅の誘いを断り帰宅。しかしそれが、今野が日浅と会った最後の日となるのだった—。 

数か月後、今野は会社帰りに同僚の西山(筒井真理子)に呼び止められる。西山は日浅が行方不明、もしかしたら死んでしまったかもしれないと話し始める。そして、日浅に金を貸してもいることを明かした。日浅の足跡を辿りはじめた今野は、日浅の父親・征吾(國村隼)に会い「捜索願を出すべき」と進言するも、「息子とは縁を切った。捜索願は出さない」と素っ気なく返される。さらに日浅の兄・馨(安田顕)からは「あんな奴、どこでも生きていける」と突き放されてしまう。 そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔だった。 陽の光の下、ともに時を過ごしたあの男の“本当”はどこにあるのか—
 
■出演:綾野剛 松田龍平 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 國村隼 永島暎子 安田顕 
■監督:大友啓史 
■脚本:澤井香織 
■音楽:大友良英 
■原作:沼田真佑「影裏」(文藝春秋刊) 
■配給:ソニー・ミュージックエンタテインメント 
■配給協力:アニプレックス ■コピーライト:
『楽園』瀬々監督(シネルフレ江口).jpg
  「悪人」「怒り」などの原作者・吉田修一の短編集「犯罪小説集」より、「青田 Y 字路」「万屋善次郎」を映画化した瀬々敬久監督(『64-ロクヨン-』シリーズ、『友罪』)最新作『楽園』が、10月18日(金)よりTOHOシネマズ梅田他全国ロードショーされる。
 
  歪んだ人間関係やデマの拡散によって、罪なき人が追い詰められ、思わぬ事件を引き起こす現代社会と地続きのテーマを扱いながらも、映画版では紡(杉咲花)と豪士(綾野剛)の関係や、善次郎(佐藤浩市)と亡くなった妻(石橋静河)との関係から、小説では描かれなかった男たちの知られざる表情が豊かに描かれる。失踪事件の被害者、愛華と最後まで一緒にいた紡の物語を膨らませ、罪悪感を抱えて生きる彼女が最後に放った言葉が大きな感動を呼ぶ。限界集落で起きた事件に翻弄される主人公の周辺人物も丁寧に描写し、閉鎖的な共同体の在り方にも一石を投じる作品だ。脚本も手がけた本作の瀬々敬久監督に、お話を伺った。
 

 

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■喪失感を抱えた人たちの物語で、生き残った紡を象徴的存在に据える。

――――杉咲花さんが演じた紡は、原作ではあまり描かれていませんが、映画では「青田 Y 字路」「万屋善次郎」の短編2つを繋ぐ存在です。紡を描くトーンが、作品に大きな影響を与えていますが、どのように紡のパートを構築していったのですか? 
瀬々監督:Y字路がとても象徴的な意味合いを持つ映画で、紡は右に、愛華は左に行きます。結局紡が生き残るわけですが、彼女だけでなく、大事な人を失った人の話が多いのです。例えば柄本さんが演じる五郎は孫の愛華を失っているし、佐藤さんが演じる善次郎も、愛妻を亡くしている。綾野さんが演じる豪士も、どこか母親から見捨てられたような青年です。喪失感を抱えた人たちの物語ですが、最後にはその喪失感から立ち直る物語にしなければいけないと思いました。失踪事件の時、生き残った紡を象徴的存在に据え、彼女の喪失感を何とかして取り戻してあげるべきだという考えのもと、原作にはなかった紡のパートを膨らませていきました。
 
――――紡を演じた杉咲花さんは初めての瀬々組ですが、オファーの決め手は?
瀬々監督:杉咲さんは一見線が細いのですが、どこか芯の強さが宿っているところが、今回演じた紡に通じているし、彼女に惹かれた理由でもあります。豪士とのシーンが多かったので、綾野さんとはよく話をしていましたね。あとは、紡の幼馴染、広呂役の村上虹郎君とは和気藹々としていました。広呂はちょっと能天気なキャラクターですが、そこに優しさがあって、紡にとっての守護天使のような存在なんです。常に屈託のない笑顔をしているのはこの作品で広呂だけですから。
 
 
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■綾野さんは、映画史上見たことのないような表情をしている瞬間がいくつもあった。

――――綾野剛さんは『64-ロクヨン-』以来ですが、幼少期に母と来日し、どこにも居場所がない物静かな青年、豪士を、今まで見たことのないような表情で演じていますね。
瀬々監督:綾野君も内股の歩き方や、少し猫背の姿勢など、こちらが何も言わなくてもパッとやってくれました。ただ、『64-ロクヨン-』とは違って、今回はY字路や神社、また豪士が住んでいる、見捨てられたような文化住宅など、自然や貧困を暗示するような場所と対峙しなくてはならない。綾野君はそういう場所に対する感受性が豊かで、そこから感じたものを取り入れてお芝居をしている。そんな感じがすごくしましたし、より深い表現になっていたと思います。綾野君がやっている一つ一つの表情は、綾野君の中というだけではなく、今までの映画史上見たことのないような表情をしているなという瞬間がいくつもありました。
 
――――佐藤浩市さんは、ちょっとした誤解が積み重なり、限界集落の中でどんどん追い詰められていく善次郎役を悲哀たっぷりに演じているのが印象的でした。
瀬々監督:浩市さんは長年の経験があるので、演技で見せる技術をもちろん持っている方です。でも技術以上のものを発見しようとされる。見せ方だけではどうしてもクリアできないもの、画面には映らないけれど、そのキャラクターが抱えている思いなどが、映画にはあるのです。浩市さんは、そういう部分を非常に大切にし、綿密に考えてくる一方で、現場ではそれを超えるものを発見しようとする。それが浩市さんのやり方だし、映画をよく知っている人だと思います。一緒に映画を作っているという感じがする役者さんですね。
 
――――柄本明さんも、紡を追い詰める言葉を放つ被害者の祖父役で、強烈な印象を残していますね。
瀬々監督:柄本さんは「芝居なんか嘘に決まってるから」「自然に芝居するなんて、できる訳ないんだから」と、いつもちょっと怒った口調なんですよ(笑)。今回印象的だったのが、あるシーンで何度かテイクを重ねたことがあり、その後柄本さんが「監督の思ったことは分かったんだけど、できなかった。悔しい!」とおっしゃったこと。柄本さんのように勲章をもらうような役者さんでも、素直に悔しさを滲ませる。そんなチャーミングさがありますね。
 

 

■「結界を切って進む」奈良澤神社の祭礼。人と人とをつなぐ共同体意識を再発見する狙いを込めて。

――――天狗の舞いで知られる奈良澤神社の祭礼を以前から撮影したかったそうですが、そこまで惹かれた理由は?
瀬々監督: 10年ほど前に行きたいと思って調べ、実際に訪れたことがあります。松明をかざした時の炎の勢いがものすごくて、その時抱いた印象が強烈だったのです。また映画でははっきり描いていませんが、松明で燃やした後、太刀で村の辻々に張ってあるしめ縄を切り落としていくんです。結界を切って進むという意味らしいのですが、そのことも象徴的に思え、いつか映画に取り入れたいと思っていました。祭りで歌われる数え歌もいいんですよね。地元のお祭りなので、踊り子は現地の小学生から高校生まで、笛は大人の方が多かったですが、映画でも地元のみなさんが協力してくださいました。祭りには、人と人とを繋ぐ共同体意識がありますが、今はそういう意識が希薄になってきている。だから映画に祭りを取り入れることで、その共同体意識を再発見したいという思いもありました。
 
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■限界集落がなくなってしまうことへの悲しさはあっても、その中で生き、より良き社会にしたいと思い続けるしかない。

――――瀬々監督は大分県出身ですが、限界集落の問題を今まで身をもって感じてこられたのでしょうか?また本作でその問題を描き、改めて感じたことは?
瀬々監督:僕は59歳で、両親もそう長く元気ではいられない年齢です。それが僕ら世代の現実で、生まれ故郷の集落はなくなるかもしれません。僕たちが通っていた小学校も、かつては生徒が180人ぐらいいたのに、今は10分の1くらいです。若い人はどんどんいなくなり、老人しか残らない地域は日本中にある訳です。僕たちの故郷も、UターンやIターン、田舎に住もうというキャンペーンなど、若い世代に住んでもらうとか、都会との交流、観光資源の有効活用でしか生き残っていけない。だから善次郎のような町おこしをしないといけない訳です。そういう集落がなくなってしまうことへの悲しさや侘しさはもちろんあるのだけれど、現状はそういう中で生きて行かざるを得ない。だからどこか楽園的世界観、つまりより良き社会にしたいと思い続けるしかないと思っています。
 
――――タイトルの『楽園』につながる考え方ですね。
瀬々監督:犯罪を犯す人たちが出てくる映画ですが、そういう人たちもより良き社会にしたいという思いを持って生きてきたはずです。それがボタンのかけ違いで、罪を犯してしまった。当事者たちだけではなく、その周りの人たちも同じなのです。彼らもより良き社会にしたいと思っているはずなのに、ふとしたことで、他人を追い詰めてしまう。その連鎖が今の社会にある。ですから、皮肉めいていますが、『楽園』と名付けました。
 
 
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■『ヘヴンズ ストーリー』から10年、当事者性から、犯罪者を切り離してしまう不寛容さが前面に出る時代に変わった。

――――『楽園』というタイトルを見て、約10年前の名作、『ヘヴンズ ストーリー』(10)が頭に浮かびました。『ヘヴンズ ストーリー』は瀬々監督にとっても、非常に大きな意味を持つ作品だったと思いますが、あれから10年経ち、この『楽園』は監督のフィルモグラフィーの中で、どんな意味を持つ作品になると思われますか?
瀬々監督:『ヘヴンズ ストーリー』の頃は、事件に関わる感触が、当事者性に突入したと感じました。自分の妻や子どもが犯罪者や被害者になるかもしれないというような、当事者として事件を描くという感覚です。今回の『楽園』は、SNSが人の意識に大きな影響を与える今の時代を象徴するように、犯罪を犯すのは私たちとは違う人なのだ、あんなことをやる人は信じられないと、切り離してしまう不寛容さが前面に出ています。国もナショナリズムの時代ですし、自国の利益ばかりを追求し、敵を作る時代になりました。時代が変わったという感触をすごく感じている中、『楽園』でも疑惑がある人を指弾する村の人たちが描かれています。吉田修一さんの原作(「犯罪小説集」)も、その辺をとても良く掬い取っていると感じましたし、『ヘヴンズ ストーリー』の時代と、それから10年後の『楽園』の時代とは、明らかな変遷があります。人々の間で、犯罪にまつわる考え方も変わった。そういう意味合いで『楽園』は作られたと思っています。
 
もう一つ、『ヘヴンズ ストーリー』は完全な自主映画でしたが、『楽園』は製作幹事のKADOKAWAさんを中心に、吉田修一さんという日本を代表する作家と組んで制作しました。『ヘヴンズ ストーリー』のようなインディーズ精神と合致しながら、メジャー作品として作ることができたのは、また別の感慨がありますね。
(江口由美)
 

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<作品情報>
『楽園』
(2019年 日本 129分)
監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」角川文庫刊
出演:綾野剛、杉咲花/村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明
/佐藤浩市他
10月18日(金)よりTOHOシネマズ梅田他全国ロードショー
公式サイト → https://rakuen-movie.jp/
(C) 2019「楽園」製作委員会
 

『楽園』 - 映画レビュー

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「世の中には抱きしめなければいけない人がたくさんいるということを、僕たちは映画で伝えたい」綾野剛、佐藤浩市、瀬々敬久監督が語る映画『楽園』@TOHOシネマズ梅田
(2019.10.9 TOHOシネマズ梅田)
登壇者:綾野剛、佐藤浩市、瀬々敬久監督 
  
 
  「悪人」「怒り」などの原作者・吉田修一の短編集「犯罪小説集」より「青田 Y 字路」「万屋善次郎」を映画化した瀬々敬久監督(『64-ロクヨン-』シリーズ、『友罪』)最新作『楽園』が、10月18日(金)よりTOHOシネマズ梅田他全国ロードショーされる。
 
 
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<ストーリー>
  12年前にある村のY字路で起こった幼女誘拐事件。失踪直前まで愛華と一緒だった紡(杉咲花)は、罪の意識を抱えたままだったが、祭りの準備中に、孤独な青年、豪士(綾野剛)と出会う。孤独な二人は少しずつ心を通わせるが、ある祭りの日、Y字路で再び少女が行方不明になり、豪士は犯人として疑われるのだった。1年後、Y字路へ続く集落で親の介護のためUターンした善次郎(佐藤浩市)は、養蜂家として町おこしに一役買おうとしていたが、ある出来事をきっかけに、村八分にされてしまう。
 
 
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  歪んだ人間関係やデマの拡散によって、人が追い詰められ、思わぬ事件を引き起こす現代社会と地続きのテーマを扱いながらも、原作では登場人物の一人だった紡の物語を膨らませ、紡と豪士の関係や、善次郎と亡くなった妻(石橋静河)との関係から、小説では描かれなかった男たちの表情が豊かに描かれており、映画版ならではの登場人物の深みが感じられるのだ。
 
 
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  10月9日、TOHOシネマズ梅田で開催された『楽園』ABC名画試写会では、上映前に主演の綾野剛、佐藤浩市と瀬々敬久監督が登壇。「大阪大好き!今日一番やりたかったことができ、気が晴れました」と大阪での舞台挨拶を心待ちにしていた綾野に対し、「今日は朝から稼働していて、壊れかけています。何か持って帰っていただきたいと思います」と佐藤はキャンペーン三昧の1日をユーモラスに表現。大学時代を関西で過ごした瀬々監督は「シネコンと違って、昔ながらの劇場なので、なんかいいなと思いました」と昔ながらの大スクリーンの前でその感想を語った。『64-ロクヨン-』に続いての共演となる佐藤と綾野、そして瀬々監督がお互いについて、また作品について語った舞台挨拶の模様をご紹介したい。
 

 

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―――『64-ロクヨン-』にも出演された佐藤さん、綾野さんの魅力は?

瀬々監督:綾野さんは15年ほど前、彼がメジャーになる前から知っていますが、当時はロン毛で繊細な感じでした。ずっとインディーズ魂を持っている役者だと思っていて、その魂は今も作品の大小に関わらず出演してくれることや、作品にも現れています。佐藤さんは、こう見えて同い年なんです。頼れる上司みたいな役を最近はよくやりますが、実は優しい人なんです。

綾野:浩市さんの背中には修羅があるというか、色々なこと、怒り、愛情があり、その背中で感じていたので、今回ご一緒することになった時も、すごく安心感があり、楽しみにしていました。プライベートでも食事をご一緒させていただきますし、安心感しかないです。
 
佐藤:綾野君はハードな部分とソフトな部分を持ち合わせています。役者として中堅という難しい時期に差し掛かっている中、例えば綱渡りをするにしても目隠しでやったほうが面白いでしょという人。その反面、冷静に人を観察する部分もあり、とても多面的な部分を持っている役者です。
 
綾野:今、すごく観察しています。『64-ロクヨン-』の時、日本アカデミー賞で主演5人の中に浩市さんと2人で参加しましたが、結局主演男優賞は、浩市さんが受賞されました。まだまだ遠いな、この背中はと思いましたし、肩を並べるとは言いませんが、近い位置に並べられるようになるにも時間がかかるかもしれません。それでも何度でも浩市さんとはご一緒したいです。
 
 
―――釜山国際映画祭では、アジア映画の窓部門に出品され、瀬々監督も参加されましたが、その手応えは?
瀬々監督:日韓は政治的には厳しい状況ですが、とても熱い歓迎を受けました。日本映画も15本ぐらい上映されていましたし、映画には国境がないと感じました。映画で手と手を結び合うことができればいいなと思います。
 
 

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―――綾野さんも、佐藤さんも追い込まれ、追い詰められていく役ですが、お二人が追い詰めらた経験は?
綾野:追い込むことはあっても、追い込まれることはないので、演じる時は自分で自分を追い込んでいます。映画は皆で一緒に作っているところで、等価交換ができるのかという部分で業を感じていますが、今回は手応えを感じています。
 
佐藤:僕らの時代は(監督に)追い込まれまくりでした。相米慎二監督はワンシーンワンカットで撮影するのですが、『魚影の群れ』で海辺での僕と夏目雅子さんのシーンでは、午前中いっぱいリハで、午後にやっとテイクをまわし出し、10テイク以上やってから「今日はやめよう」と言い出すんです。「どうしたらいいんだ」という状況を作ってくれたのは、僕にとっては全然マイナスではなかった。瀬々監督が、若い子には良かれと思ってOKを出さないのは、彼らにとってよいことだと思います。
 
 
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―――映画で象徴的に登場するY字路はまさに人生の分かれ道を示していますが、お二人の「人生の分かれ道」は?
綾野:日々ですね。人生は選択の連続で、僕たちは選択をし、選択肢があるから生きていけるのですが、楽園は選択肢がどんどん狭まっていく話です。何かを否定するのは一番簡単なので、僕はどうしたらできるかという選択肢を考えますね。こう見えてポジティブなのんです。そう見えますよね?
 
佐藤:全てがうまくいったかどうかわからないけれど、今、自分がここにいることを考えると、間違っていなかったんかなと思います。選択できる人生は素晴らしいですね。ひたすら止まってはいけないという人生は大変ですから。
 

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―――『楽園』というタイトルは、どこから発想したのですか?
瀬々監督:人々はより良き世界に行きたいと思いながら生きています。そういう欲望がボタンの掛け違いで、ちょっとしたことで事件に結びついてしまうのではないかと思って(逆説的に)つけました。
 
綾野:『楽園』というタイトルになったことで、俳優部はとても救われました。誰しもが平等に楽園を望むことができる。その言葉があったことは僕らにとって大きかったですね。
 
佐藤:台本の仮のタイトルが「犯罪小説集」だったのですが、ある稿から『楽園』というタイトルになり、その瞬間、僕の中でスコーンと抜けた気がしました。善次郎は何に対して、誰のために生きたのか、『楽園』って何なのかという逆説的な意味合いでも考えさせてくれ、この役をやるにあたっての光明が射しました。
 
 
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<最後のご挨拶>
瀬々監督:1989年に監督になり、30年目で、『楽園』は30周年記念映画だと思っています。かつては高度経済成長時代があったのに、こんなに憎しみ合ったり、なんでこんな時代になったのか。そんなことを思いながら作った映画です。
 
佐藤:掛け違えたボタンは掛け直すことができるけれど、それを掛け直すこともできずに、一番望まないところに向かってしまう弱者がいることを見ていただければと思います。そこにこのタイトル「楽園」をオーバーラップして考えていただきたいです。
 
綾野:今日は一緒に手を降ってくれたり、僕たちを歓迎してくださって、ありがとうございます。この映画がみなさんにとって、出会ってよかったと思える作品になったらうれしいです。最終的にきっとこの作品で打ちのめされ、苦しくなる部分もあると思いますが、野田洋次郎さん作詞作曲、上白石萌音さん歌唱のエンディング曲「一縷」という楽曲が、必ず皆さんを包んでくれると信じています。家に帰ってから、自分のとって大切な愛しい人を抱きしめてください。世の中には抱きしめなければいけない人がたくさんいるということを、僕たちは映画で伝えられればと思っていますので、この映画を皆さんに託します。ぜひ受け取っていただけたら幸いです。
(写真:河田真喜子、文:江口由美)
 

 
<作品情報>
『楽園』
(2019年 日本 129分)
監督・脚本:瀬々敬久
原作:吉田修一「犯罪小説集」角川文庫刊
出演:綾野剛、杉咲花/村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明
/佐藤浩市他
10月18日(金)よりTOHOシネマズ梅田他全国ロードショー
公式サイト → https://rakuen-movie.jp/
(C) 2019「楽園」製作委員会
 
 
 

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『二度めの夏、二度と会えない君』舞台挨拶レポート


愛する人の最期に、初めて告げた「好き」という言葉。
でもそれは、決して伝えてはいけない気持ちだった――。
二度めの夏をやり直す、奇跡の青春ストーリー。

 
アニメ作品も大ヒットした赤城大空が手がけた小説が遂に実写映画化!二度と来ない今年の夏を締めくくる青春純愛ストーリー、映画『二度めの夏、二度と会えない君』が9月1日(金)より公開となります。公開を迎えるにあたり映画の舞台挨拶を下記日程にて実施致しました。数多くの映画に引っ張りだこの若手実力派俳優で本作の主演を務めました、村上虹郎さんが登壇された舞台挨拶の模様を下記にて紹介いたします。


【開催概要】
日時:8月3日(木)~    
会場:T・ジョイ京都 スクリーン3
ゲスト(敬称略):村上虹郎


nidonatsu-bu-240-4.jpg会場からのはち切れんばかりの拍手の中、颯爽とした身のこなしでステージに登壇したのは、映画『二度めの夏、二度と会えない君』にて主演を務めた、今大注目の新鋭実力派俳優の村上虹郎だ。


ファンからの熱い声援に迎えられて登壇した本作の主役、村上虹郎。 「朝、早いですよね」と集まってくれた観客を気遣いながらも「実は僕も、夜型なんですけど(笑)。昨日、朝映画も良いよ!ってツイートしたんです。今日は、みなさんと楽しい時間がすごせればと思います。と、笑顔で舞台挨拶をスタートさせた。


Q関西にはよく来られるのですか?
村上:昨日からイベントや取材があって京都にいたんですが、プライベートでも、京田辺の同志社の方に友達が結構いるのでよく来ます。まぁ、うちの両親(父・村上淳、母・UA)が関西出身なので、家では普通に関西弁で喋ってます。両親とは、お芝居の話は一切しないんですが、母親は僕の出演した映画をよく観てくれてまして、とってもホメてくれます。なのに、舞台ものだと、超辛口。かなりダメだししてきます(苦笑)。


Q今まで様々な役柄を演じられて来たと思いますが、今までの作品と比較してみて、智を演じられる上で難しかった点などはありますか?
村上:この映画のキャラクターたちはみんな、どこか不器用なんですが、僕自身あまり器用な方ではないので、主人公の智には親近感を持っています。ただ、役柄とはいえ「好きな人が死ぬ」って、計り知れない感情を抱くはずで、そういう感情を表現するために、ある意味「最高のハッタリ」をかまさなくちゃならなくて。でも、実人生で起こったとしたら、自分がどうなってしまか正直、わからないですよ。


nidonatsu-bu-240-2.jpgQ本作中では、ヒロインの燐に誘われてバンドを組んでいらっしゃいますが、実際にみなさなんとバンドで演奏されてみていかがでしたか?またかなりギターがお上手でいらっしゃいますが撮影にあたりどれ程練習されたのですが?
村上:もともと、アコギは弾いたりしましたけど、バンドをやるのは初めてで。で、こんなに楽しくていいのか!?って。この映画は、めちゃくちゃ音楽が素敵なんです。「たんこぶちん」っていうガールズバンドが担当していて、そのヴォーカルの吉田円佳さんがヒロインの燐役を演じてるんですけど、彼女の存在感に救われました。


Qお気に入りのシーンを挙げるとすれば?
村上:うーん。ここ!と、1つだけ挙げるのは難しいですね。学園祭のライブシーンは無論、素敵なんですが、結構笑えたり、チャーミングなシーンも・・・。クライマックスの、智が燐に思いを伝えるシーンは、実は撮影2日目に撮ったんですが、あのシーンで「エンジンがかかった」感触はいまも、忘れられません。


村上は自称エセな感じの関西弁だと苦笑しつつ、「朝やし、うまくしゃべれんかったけど、今日はありがとう!」と、舞台挨拶を締めくり、温かい拍手の鳴りやまぬ中、T・ジョイ京都を後にした。

本作のヒットと彼の今後の活躍に期待が高まる舞台挨拶となった。


nidonatsu-bu-240-1.jpg【村上 虹郎(むらかみ にじろう)】
1997年3月17日生まれ、東京都出身、父は村上淳、母はUA。
カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品『2つ目の窓』(14)で主演を務め、俳優デビュー。この作品で高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。翌年2015年2月には連続ドラマ『天使のナイフ』でテレビドラマ初出演、また同年9月、スペシャルドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』でテレビドラマ初主演を果たす。寺尾聰主演『日曜劇場 仰げば尊し』(16)に出演し、民放ゴールデンタイム連続ドラマに初出演。最近では、映画『武曲 MUKOKU』(17年6月3日公開)にて綾野剛と共演。羽田融役を見事に演じ切った、期待値急上昇中の新鋭・実力派俳優。


『二度めの夏、二度と会えない君』
出演:村上虹郎、吉田円佳、加藤玲奈、金城茉奈、山田裕貴、本上まなみ、菊池亜希子
原作:赤城大空(「二度めの夏、二度と会えない君」小学館「ガガガ文庫」刊/ガガガ文庫10周年記念作品)
脚本:長谷川康夫   監督:中西健二
配給:キノフィルムズ/木下グループ/2017年/日本/106分
(C)2017 赤城大空・小学館/「二度めの夏、二度と会えない君」パートナーズ
公式サイト⇒ http://nido-natsu.com/

2017年9月1日(金)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、MOVIXあまがさき ほか 全国公開!!


(オフィシャル・レポートより) 

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山田孝之、本郷奏多をはじめ総勢8名が集結!『闇金ウシジマくん Part3』大阪舞台挨拶
(16.9.24 TOHOシネマズ梅田)
登壇者:山田孝之、本郷奏多、白石麻衣、筧美和子、最上もが、崎本大海、やべきょうすけ、山口雅俊監督
 
「1日3割 (ヒサン )」「 10 日で 5割(トゴ )」 という非合法な金利で金を貸し付けるアウトローの金融屋「カウカウファイナンス」 社長のウシジマを山田孝之が演じ、2010年のテレビドラマ「Season1」から映画版までシリーズ化された『闇金ウシジマくん』。金と欲望に翻弄される人々の転落人生を時にはコミカルに、時にはハードに描きながら、社会の闇を映し出すエンターテイメントが、ついに完結!9月22日(木・祝)に『闇金ウシジマくん Part3』、10月22日(土)に『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』と2作連続公開される。
 
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『闇金ウシジマくん Part3』公開最初の週末となった24日(土)にTOHOシネマズ梅田で行われた舞台挨拶では、主演の山田孝之を筆頭に、本郷奏多、白石麻衣、筧美和子、最上もが、崎本大海、やべきょうすけ、山口雅俊監督と総勢8名が登壇。司会が最上もがを呼び忘れるハプニングも笑いに変え、すっかり息の合ったカウカウファイナンスのメンバーと、本作が初参加の初々しい女優陣が加わった豪華ゲストを前に、映画を観たばかりの観客から大きな拍手が送られた。
 
 
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「みなさん、映画を観てくれてありがとうございます。1か月後ファイナルもありますので、そちらも観てください」と山田が連続作であることをアピール。本作が初参加となるアイドルの卵、麻生りな役の白石麻衣(乃木坂46)は「大人気の作品に携わることができ、本当に光栄です」と爽やかに挨拶。一方、カウカウファイナンスのメンバーとして常連メンバーでもある崎本はハスキーボイスで「どうも、綾野剛です!違うか~」と本作で共演している綾野のモノマネで一人ノリツッコミをみせ、山田から「面白くない!」と叱咤される場面も。企画、プロデュースも手がけた山口監督は「2度、3度観ていただくと、面白い発見があります」と挨拶した。
 
 

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この日で舞台挨拶キャンペーンツアーが3日目となる8人。午後一番に行われた大阪での舞台挨拶に続き、チームに分かれて夜までに福岡まで行くという強行スケジュールをこなす予定で、テンションが高い様子は舞台挨拶の端々に現れた。大阪・八尾出身のやべきょうすけは、合間合間で舞台の一番端の立ち位置から身を乗り出して盛り上げる一方、質問に一生懸命答えている本郷に、「うるさい!」と一喝される場面も。その後、やべが話しているときには山田と本郷がなんとマイクを分解して遊ぶというしっぺ返しを喰らわすあたりは、舞台挨拶を心から楽しんでいる様子が伺え、会場も大爆笑。「今までの舞台挨拶で一番ヤバイ」というやべに、山田は「楽しそうなのは(お客さんに)伝わっている」とさらりと答え、リアル「カウカウファイナンス」のような和やかさが表れていた。
 
 

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ネットビジネスの甘い言葉に誘惑されるフリーター、沢村を演じた本郷は、カリスマ実業家天生役の浜野謙太との共演について「浜野さんは天生役を研究し、ルックスから作り込んで演じていてカッコイイ俳優さんと尊敬していたが、役柄上周りに綺麗な女性がたくさんいるので、待ち時間女性に囲まれてとても楽しそうにしていた。そういうところも天生っぽいのかも」と冷静に分析。沢村が恋に落ちる相手役を演じた白石は「ウシジマくんらしくないラストシーンが好き」と言うと、山口監督はエンディングを撮影直前に変更し、台詞も全て変えたというエピソードを披露。本郷も自身の役どころの変遷を踏まえながら、現在のエンディングへの気持ちを語った。
 
 
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もう一つのエピソードの柱となるキャバクラ嬢につぎ込むサラリーマン役を演じた藤森慎吾の相手役(キャバクラ嬢、花蓮)を演じた筧は、「藤森さんはチャラ男のイメージがあったが、すごく真面目て芝居に対しても器用。台詞が変わってもすぐに対応されるし、現場でも楽しくお話できたので、溶け込みやすかった」と絶賛。カウカウファイナンスの心優しい受付嬢として本作からメンバー入りした最上は「まじめにお仕事をしました。すぐにお習字の時間があって」と、部屋に貼られている習字や絵は全て自筆であることを山口監督が紹介し、観客が驚く一幕もあった。

 
 

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司会から最後の質問として、1ヶ月お休みがあればとの問いに
「休みはいらない。やりたいことがあるので、打合せをしたい」(山田)
「休みはいらない。(絶対嘘というツッコミに)ゲームしてると思います」(本郷)
「おうちにいるのが好きだけど、1ヶ月休みがあるなら海外旅行に行きたい」(白石)
「スペインでパエリアを食べたい」(筧)
「多分いなくなって、絶対この世界(芸能界)に戻ってこない。今は2日以上休みがあると何をしていいか分からなくなるので打合せを入れてしまう」(最上)
「自転車で日本一周したい。昨日天神橋商店街のはしご酒が楽しかったので、旅先ではしご酒をしたい」(崎本)
「タイムラインに1ヶ月休みと打ち上げて、連絡が来た人と会っていきたい」(やべ)
と、それぞれのキャラクターの意外な一面が伺える回答に会場も湧いた。
 
 

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フォトセッションの後、檀上に戻らずステージ際に8人が腰をかけ、観客と同じ目線で山田が代表として「今日は観に来てくれてありがとうございます。1か月後、ウシジマの“さいご”を見届けてほしいと思います。(「イヤだ!」との声に)イヤだじゃないよ!“さいご”なんだよ!我慢しなさい!リターンズはないので、これで最後です。(「また来てね!」との声に)大阪に?用事があれば(笑)ありがとうございました」と終わりの挨拶を行った。終始、観客からの声がかかり、そのやりとりを楽しんでいるカウカウファイナンスの面々を見ていると、観客同様「さよなら」を言うのが辛くなりそうだが、その前にまずは本作と『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』を見届けよう。
(江口由美)
 

<作品情報>
『闇金ウシジマくん Part3』
(2016年 日本 2時間11分)
監督:山口雅俊
原作:真鍋昌平「闇金ウシジマくん」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本:福間正治、山口雅俊
出演山田孝之、綾野剛、本郷奏多、白石麻衣、藤森慎吾、筧美和子、最上もが、崎本大海、やべきょうすけ他
配給:東宝映像事業部=S・D・P
2016年9月22日(木・祝)~TOHOシネマズ梅田他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://ymkn-ushijima-movie.com/
©2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会
 

『怒り』 - 映画レビュー

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ヘリコプターで江口洋介、本木雅弘が華麗に登場!『天空の蜂』神戸ヘリコプターイベント&記者会見レポート
(2015年8月23日 場所:ヒラタ学園・神戸エアセンター)
ゲスト:江口洋介、本木雅弘、堤幸彦監督
 

「スーパーアクション映画、日本一諦めない男を演じた」(江口)

「『ゴジラ』のように、小さいお子さんにも怪獣映画と思って観てもらいたい」(本木)

「たくさんの語るべき要素を二時間強の“娯楽作品”にまとめることが僕の仕事」(堤監督)

 
ベストセラー作家、東野圭吾最大の勝負作にして、映画化不可能と言われてきた史上最悪の原発テロに迫るサスペンス大作『天空の蜂』。95年に出版されてから20年経った今、江口洋介、本木雅弘を主演に迎え、堤幸彦監督が完全映画化し、9月12日(土)から全国公開される。
 
 
<ストーリー>

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防衛庁からの依頼により開発された巨大ヘリコプター“ビッグB”の納品日、開発した技術者・湯原(江口洋介)らが式典の開始を待つ間に、湯原の息子・高彦が乗っていたビッグBが何者かの仕業で自動操縦され、飛び立ってしまう。行き先は福井県の原子力発電所「新陽」。“天空の蜂”と名乗る犯人の要求は、日本の全原発を破棄すること。「新陽」の真上、800メートルの上空で大量の爆弾を積んだままホバリングしているビッグBの燃料がなくなるまで8時間がリミットと告げるのだったが・・・。
 

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『天空の蜂』劇場公開に先駆け、ヒラタ学園・神戸エアセンターで行われたヘリコプター&レッドカーペットイベントでは、映画さながらの迫力でヘリコプターが空中を旋回したあと轟音と共に着陸。

ダブル主演の江口洋介と本木雅弘が、ヘリコプターから颯爽と登場した。二人で格納庫へと敷かれたレッドカーペットを進みながら、特別招待された観客たちの熱い声援に笑顔で応えた。

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引き続き、ヒラタ学園・神戸エアセンター格納庫で行われた記者会見では、イベントで登場した江口洋介、本木雅弘に加え堤幸彦監督も登壇。
 
 
 
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まずは江口洋介が「ヘリコプターに乗って撮影を思い出しました。400メートルぐらいの上空で、監督は『もっと上がってくれ』と。本来ヘリにはドアがあるものなんですね。撮影ではヘリ上から手を出して大型ヘリを止めるシーンもあり、かなり緊張しました。スーパーアクション映画になっているので是非とも劇場でご覧ください」と過酷な撮影の様子も交えて挨拶すると、本木雅弘は、誰も知らないと思うがと前置きしながら「神戸にヘリで降り立ったのは、3人グループのデビュー3年目イベントで神戸ポートピアランドに降りて以来31年ぶり。そのように(『天空の蜂』も)奇跡が起こり得ます。映画では、困難が目の前に現れたときに自分は何を守り抜けるのかを問うています。小さなお子さまからご年配まで楽しめます」と、31年ぶりのヘリでの来神と映画で起こる奇跡を重ねながら、幅広い年代が楽しめる娯楽作品であることをアピール。
 
堤幸彦監督は、「この映画は東野圭吾先生が20年前にお書きになった大変な問題作。2年ぐらいこの作品に向き合い、なんとか仕上げ、届けることができました。2時間強、絶対飽きさせないエンターテイメント作品です。ぜひ映画館でご覧ください」と感無量の面持ちで挨拶した。
 
ここで、航空整備士育成を行っている学校法人平田学園大阪専門学校の学生の皆さんから三人への花束贈呈が行われ、既に映画を鑑賞した三人から質問が寄せられた。

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「(ヘリコプターシーンについて)高いところは大丈夫かと思っていましたが、ドアのないヘリはこんなに怖いものかと思いました。マネをしないで」(江口)
 
「(息子を助けるシーンについて)何度かスカイダイビングをして撮りました。助ける方は実写です」(堤監督)
 
「(どんな人に観てほしいか)みなさんのような若い方ですが、もっと小さいお子さんにも観てほしいです。かつて『ゴジラ』という映画があり、人間の欲望が生み出した産物だったという理由がありましたが、今回の巨大へりや原発も人間の生み出した、ある意味怪物です。その二つの対決とそれを見守る観衆という怪獣映画として感覚的に見てもらい、成長されたとき映画の背後に隠れていた大きなテーマに気付いて、理解してもらえれば何よりだと、脚本の楠野さんもおっしゃっていました」(本木)と、対話形式で質問に答え、未来の空の安全を担う学生の皆さんへエールを送った。
 
その後に行われた質疑応答では、高校生記者からの質問も飛び交う熱気を帯びたものになり、堤監督からは映画化において重点を置いた点が、また江口洋介や本木雅弘からはそれぞれの役の捉え方や撮影秘話が語られた。その模様を詳しくご紹介したい。
 
 

 
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―――濃密な内容で、キャスト、スタッフの思いが詰まった作品だが、撮影中大変だったことは?
江口:ほとんどスリリングなシーンの連続でした。本木さんと二人でカーアクションをするシーンではロードを本木さんの運転で爆走するのですが、一つのハンドルを取り合って、何テイクも、何テイクも重ね、山を上から下までS字で降りていき、アキレス腱から骨盤からインナーマッスルが貼るぐらいでした。
本木:車内は、今の暑さの三倍ぐらいで、呼吸困難でしたね。
堤監督:声を撮らなくてはいけないから窓も締め切っていました。私の演出的指示は、とにかく何かあったら「あっ」とか「うっ」と言ってくれと。
江口:あのシーンは長かったですね。560テイクぐらい撮りましたか?
堤監督:それはないですが、30テイクぐらいあったかもしれませんね。
本木:専門用語が飛び交う世界で、それをこなすのが大変でした。その中、今枝役の佐藤二朗さんは非常に滑舌が良く、監督は佐藤さんが演技する度に「大オッケー!」とおっしゃっていました。一番大変だったのは、昨年の初夏の頃、東京ではゲリラ豪雨が降り続けていましたが、1995年の灼熱が照りつける8月8日という設定だったので、雨の中でも照明部の方がその日の太陽を作り続けていたことです。撮影も時間との闘いですから、一定の太陽に仕立てていくのは本当に大変で、クレーンの上の照明部の皆さんはトイレの用も足せずに頑張っていらっしゃいました。
 
 

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―――20年前に発刊され、映像は不可能と言われた『天空の蜂』映画化は、かなり覚悟のいる仕事だったのでは?
堤監督:私一人の力量では到底立ち向かえない原作です。非常に緻密に解析されており、人間ドラマとして深い部分もあります。ただ私も20年ぐらいかけて作り上げたチームがあります。そのチームで、原子力発電所はどのようなものか。ヘリコプターがどうやって飛ぶのか。それが分からないと、映画の最後に大変大胆なくだりがありますが、そこには行きつきません。本当にゼロから学び、膨大な資料と向き合い、ロケ場所を探しながら、台本に反映し、長い撮影期間をかけました。また、撮り終わってから何カ月もCGの作業を行いました。中空に浮かんでいる金属の物体にリアリティーを出すことがこんなに大変だとは思いませんでした。
 
 
―――東日本大震災から4年が経ち、今も原発の問題がある中で、特に現在の高校生に伝えたいことは?
堤監督:映画の中で背景として原子力発電所はいい面も悪い面もあり、そこから目を背けてはいけないことを申し上げたいつもりです。みなさんも学習した知識と、足と目と耳と口と鼻と、友達、親、先生と使えるものはすべて使って、自分が納得いくまで調べ、自分なりの結論をだすことが色々なことにおいて必要です。自分が疑問に思ったことは、逃げずに向き合うことが大事です。
 
 
―――子どもを命がけで守る場面があるが、その姿勢に共感する部分はあるか?
tenkuuhachi-6.jpg江口:映画が始まって7分ぐらいで子どもがへりに乗り合わせ人質になってしまい、日本全国民も人質という大事件が起きます。役を演じる中で、自分の子どもが今、空中にいると思うと、立っていられるのか、こんなに冷静にせりふをしゃべれるものなのかと、色々なことを考えました。阪神大震災といい、東日本大震災といい自分の日常にはない怖さがあるのだと、家族ができると余計に敏感に反応し、何かできないかという気持ちが強まります。今回湯原を演じましたが、何か自分が成し遂げたいというものから逃げてはいけない。立ち向かわなければいけない。そこには根性が要るという、根性の映画で日本一諦めない男を演じました。その姿を何も言わなくても、子どもは見ていると思います。
 
 
―――江口さんとの初共演はどうだったか?
tenkuu-s-eguchi-2.jpg本木:江口さんには、同じ80年代に青春をすごし、90年代を中心に活動してきたという親近感や、共に結婚して家族があるという役に近い状況があります。今回の湯原と三島はある意味、陰と陽で性質が分かれていますが、基本的には仕事に没頭する反面、家庭をないがしろにし、親子間のコミュニケーションをうまくとれなかったという後悔を抱えている男です。その辺は、私たちの不定期な仕事と共通するところがあり、お互い共感している雰囲気が伝わりました。基本的に江口さんは普段も情熱をたくさん称えている方で、私はどちらかと言えばウジウジといった感じですので、そのコントラストが映画の役割にも有効だったのではないか。我ながらいい組み合わせだったと思います。
江口:この組み合わせ以上のものはないでしょう。一緒にやっていて本当に刺激されます。三島の言っていること、そのセリフに奥行きがあり、それを本木さんは見事に言ってくれるので、本当にやりやすかったです。
 

―――本木さんが演じた三島は本作のサスペンス部分を盛り上げているが、三島をどのように解釈して演じたのか?
tenkuu-s-motoki-2.jpg本木:脚本と共に東野さんの原作を読んだとき、「意志の見えない仮面を付けた沈黙の群衆」というフレーズが出てきますが、私もまさにその一人でした。世の中では、予想外のタイミングで大変な事件が起きますが、それに対し自分は距離を置いてやり過ごしてきたタイプでした。本作には、そういった自分への戒めをこめて参加した部分があります。三島は自分が抱えた親子の関係の中で、息子とうまくコミュニケーションが取れなかったために、息子を悲しい境遇にさせてしまった後悔がありますが、その根元はどこにあるかといえば、「沈黙の群衆」に行きついたのです。最終的に三島なりの賭けに出る訳ですが、そこには息子への懺悔、自分への戒め、未来への教訓や願いを込めていたと思います。

 
―――本作を作るにあたり、堤監督はどこに一番重点を置いたのか?
堤監督:東野さんのお書きになった内容は、非常に科学的かつ緻密である洞察力と、原発に対する警鐘を発しています。我々が3.11を通じてリアルに感じている現実問題や、巨大な輸送機を作らざるをえない防衛産業の狙いとは何か、事件がおきた後の警察機構のあり方の問題など、今起きている日本の現実を象徴するようなことがこの映画の素材としてたくさんあります。また江口さん、本木さんの二人をトップランナーとして、たくさんの役者さんが全身全霊で演じていただいたこと、現実にはない巨大な飛行物体を作るVFX、ロンドンのリチャード・ブリン氏によりハリウッド並の音楽をつけていただいた音に対する膨大な作業と、語るべき要素もたくさんあります。個人的には親子のことが演技演出的に訴えたい、強い要素の一つです。それらの皆さんに訴えたい、考えていただきたい色々な要素を2時間強にまとめ、「娯楽作品」としてお届けすることが一番私の仕事だと感じ、今回20年連れ添ったチームと共に作り上げました。「娯楽作品」というのが、一番大事なところです。
(江口由美)
 


<作品情報>
『天空の蜂』
(2015年 日本 2時間18分)
tenkuuhachi-530.png原作:東野圭吾「天空の蜂」講談社文庫
監督:堤幸彦  脚本:楠野一郎  音楽:リチャード・プリン
出演:江口洋介 本木雅弘 仲間由紀恵 綾野剛 國村隼 柄本明 光石研 佐藤二朗 やべきょうすけ 手塚とおる 松島花 石橋けい 竹中直人 落合モトキ 向井理 永瀬匡 石橋蓮司 他
2015年9月12日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、ほか全国ロードショー
配給:松竹 
公式サイト⇒ http://tenkunohachi.jp/
(c)2015「天空の蜂」製作委員会
 
『天空の蜂』作品レビューはコチラ

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主演、多部未華子をべた褒め!『ピース オブ ケイク』公開記念 田口トモロヲ監督トークショーレポート@ TSUTAYA EBISUBASHI (2015.8.26)
 
【出演】田口トモロヲ監督
【聞き手】平野秀朗(映画評論家)
 

~ラブシーンも攻めの姿勢で。リアリティーに徹した20代女子のイマドキ“下北ラブストーリー”~

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『色即ぜねれいしょん』から6年ぶりとなる田口トモロヲ監督最新作は、20代女子のリアルな恋愛模様を描く、ジョージ朝倉原作の『ピース オブ ケイク』。恋愛も仕事も流されるまま生きてきた志乃を演じるのは、映画やテレビドラマで大活躍の多部未華子。志乃が恋に落ちるバイト先の店長、京志郎を演じるのは、主演作が目白押しの綾野剛が扮する他、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸ら個性豊かな人気俳優陣が、意外な一面を存分に披露し、細部まで見逃せない。漫画原作ながら、リアルすぎる恋愛模様に思わずハマってしまう、トモロヲマジック全開のラブストーリーだ。
 
この『ピース オブ ケイク』が9月5日(土)より全国公開されるのを記念し、タイアップ企画も行われているTSUTAYA EBISUBASHIにて、田口トモロヲ監督を迎えてのトークショーが開催された。
 
 
映画評論家の平野秀朗氏、が田口トモロヲ監督を紹介したところ、開口一番「どうも、綾野剛です」と挨拶し、一瞬にして会場は笑いのるつぼに。過去作品と少し毛色が変わったのではと聞かれ「プロデューサーからお話をいただき、まずは原作を読むところから開始した。そこにでてくるカルチャーが自分の影響を受けたものと一緒だったので、そこを窓口に描くことができると思う反面、20代の恋愛話が50代のおっさんに描けるのか。俺に描けるのか。少し無茶ぶりではないかという心配があった」と制作経緯を説明。平野氏から「めちゃめちゃいい感じ。おっさんがはまる映画」と言われ、初めて言われたと感動の様子だった。
 

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作品の肝となるキャスティングについて田口監督は、「原作が等身大の25歳の女性の話だったので、そこのリアリティーをもった芝居をできるのは多部さんしかいないと、満場一致だった。(監督という立場で)一緒に仕事をし、すばらしいプロフェッショナルだった。現場スタッフが疲れきっていても、撮影の最後は多部さんのアップを撮って終わろう!となる。スタッフ殺しの多部さんはさすが」と多部未華子を褒めちぎると、綾野剛については「いつもシャープでエッジの聞いた役が多いが、京志郎は少し能天気で野太い木の幹のような、本能的に優しさを兼ね備えている。そういう感じをやったことはないのではと思い、ぜひとお願いした」と田口流キャスティングを披露した。
 
監督自身が俳優ということもあり、その演出方法も気になるところだが、「基本的に役者やスタッフと脚本という共通テキストを通して、どう思ったかということからはじめている。綾野君は体が動くので、肉体表現をしてくれるが、京志郎は野太くて、佇んでいるだけで優しさが滲み出て、相手の言葉を一つ一つ受け止める。その反面抜けたところがあるという話をし、動きを封じてもらうように、共同作業で作っていった」と綾野の新たな一面を引き出す京志郎の役作りについて語った。
 

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平野氏が、二人がつきあっているのではないかと思えるぐらい非常にナチュラルだったと、その中でも志乃と京志郎のラブシーンについて尋ねると、田口監督は「R指定はNGという枠があったが、二人が結ばれ、キスをし、抱き合った次には翌朝という淡泊な表現にはしたくなかった。ラブシーンは恋愛映画に必須。そこは攻めたいと思い、アクションシーンと考えて、前もって全て動きを作ってから俳優に提示し、了解を得て演じていただいた」と男性スタッフで試行錯誤しながらラブシーン案撮りをしたエピソードも披露。「二人が演じると、かなり官能的、芸術的になり、そこに感情も入れてくれるので、かなり攻めた表現になったと思う」とラブシーンの出来栄えに自信を見せた。 
 
 
映画全体で、自然な感じを出すために心がけたことを聞かれると「芝居のサイズ感には注意した。大げさにならず、かといって芝居が沈まないように。漫画原作だが、『そんな訳はないだろう』と思われたくないので、さじ加減が重要だった。最初はアッパーな感じのラブコメになるかと思ってリハーサルをしたが、もっとリアリティーのある現実に向き合うものにした方が、脚本いきると判断し、舵を切った」と試行錯誤の上、微妙なさじ加減があって実現したものであることを明かした。
 
 
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最後に、田口監督から「脚本作りの時に『リアルな東京の恋愛を描けたらいいね』ということで本作がスタートした。東京のリアルな風景をバックに、堂々巡りを繰り返しながら、自分たちにとっての真実を求めていく恋人たちのオルタナティブなラブストーリーになっていると思う。サブキャラクターも皆さんが素直に共感できるように肉体化ができたと思うので、その辺を是非楽しみにご覧いただきたい」と観客へメッセージが寄せられた。「どうも、綾野剛です」をギャグのように挟み込み、大盛り上がりのトークイベント。主人公たちの恋愛の悲喜こもごもがグングン沁みてくるのは、リアルに徹した田口監督の演出術にあるのだと実感した。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ピース オブ ケイク』
監督:田口トモロヲ 
原作:ジョージ朝倉『ピース オブ ケイク』祥伝社 フィールコミックス
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫、菅田将暉、柄本佑、峯田和伸
(C) 2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会 
公式サイト⇒ http://pieceofcake-movie.jp/
2015年9月5日(土)~梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほかにてロードショー
 
 
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